■「トゥルー・グリット/True Grit」(2010年・アメリカ)
監督=ジョエル・コーエン イーサン・コーエン
主演=ジェフ・ブリッジス マット・デイモン ヘイリー・スタインフェルド ジョシュ・ブローリン
●2010年全米批評家協会賞 撮影賞
●2010年英国アカデミー賞 撮影賞
スピルバーグ製作、コーエン兄弟が監督という強力布陣のウエスタン。同じチャールズ・ポーティスの原作は、1969年にジョン・ウェイン主演「勇気ある追跡」で映画化されている。「勇気ある追跡」は親父の隣で観た記憶がある。飲んだくれ保安官ルースター・コグバーンを演じたジョン・ウェインがひたすらかっこよかった(功労賞的にオスカー受賞)のと、テキサスレンジャー役グレン・キャンベルが歌う主題歌をよく覚えている。詳細は覚えていないが、続編「オレゴン魂」(1976)も面白かった印象がある。
父親を雇い人に殺された少女マティ。犯人への憎しみと正義感に燃える彼女は、インディアン居留地まで逃げた犯人を追う為に保安官ルースター・コグバーンを雇って旅をすることになる。同じ犯人を追うテキサスレンジャー、ラビーフがそれに加わってコグバーンと時に対立しながら犯人を追う物語。西部劇の魅力であるアクションシーンはもちろんあるけれども、この映画はコグバーンとマティの心の絆を描く人間ドラマだ。そこに大きな魅力がある。ジェフ・ブリッジスの不器用な優しさが心にしみる。
マティは法に守られた世界で虚勢をはってきた少女。しかし、彼女は町を出たら法などというものは綺麗ごとにすぎないことを思い知ることになる。コグバーンはそこを長年乗り切ってきた男だ。最初に登場する場面では、やたらと銃をぶっ放して被疑者を殺すもんだから裁判にかけられている。しかし、それも無法地帯で一人生き抜く為には必要なこと。裁判での質問にも「お前らにゃわからん」と言わんばかりの態度。そのコグバーンもマティとの旅で、誰かのために懸命になることを柄にもなくすることになる。ロードムービーは成長物語でもある。
ただ気になるのは、マティは最初に雇う候補として3人の名を挙げられるが、その際に決してコグバーンは誉められた訳ではないことだ。裁判所の場面でも飲んだくれの荒くれ老ガンマンとして描かれているので、旅への同行を依頼するときに
「あなたは真の勇者(タイトルのTrue Grit)だと。」
というのがやや唐突な響きがある。ジョン・ウェイン版はそうでなく、荒くれ者だけど人々には慕われ、讃えられていたような印象が・・・。
それにしてもこれだけのキャストやスタッフなのに、どうしてこの映画はメジャー扱いされていないのだろう。コーエン兄弟の作品というだけで上映館の少ないミニシアター系映画と括られているような気がしてならない。古きよきアメリカ映画の伝統を感じさせる題材だけに、もっと多くの人に観てもらえたらよいのに。
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