■「魔界転生」(2003年・日本)
監督=平山秀幸
主演=窪塚洋介 佐藤浩市 麻生久美子 杉本哲太 中村嘉葎雄
山田風太郎原作のSF時代劇再映画化。1981年の深作欣二監督版が大好きで繰り返し観た。天草四郎に沢田研二、柳生十兵衛に千葉真一。特に沢田研二の妖しい魅力全開で、真田広之とのキスシーンまである。辻村ジュサブローが担当した衣装デザイン。緒方拳の宮本武蔵。佳那晃子の妖艶な細川ガラシャ。体中に経文を記した柳生十兵衛。クライマックスの炎上する江戸城での死闘・・・くーっ!思い出してもワクワクしてくる。リメイクたる本作はそれなりに話題になったが、深作版のイメージを損ねたくなかったので僕は観ていなかった。やっとその気になって鑑賞。・・・うーん。観なきゃよかった?。けなすために映画を観るのは映画ファンの風上にもおけない行為だから、なるべく酷評したくない。だけど深作版のインパクトがあまりに強烈だったので、申し訳ないがどうしたって比べてしまう。
リメイク版のつくりが丁寧なのは何と言っても冒頭、島原の乱の場面だ。徳川幕府が乱を鎮圧するために大軍を送り込む。キリシタンであるだけで女子供も皆殺しにする幕府軍の残虐な仕打ちをまずはじっくりと描いていく。この怨念が天草四郎の復讐心となるのかと思った。人間ドラマで定評がある平山監督らしさなのかな・・・と思ったら一転、「神など望まん」とつぶやいた天草四郎は武士を妖術で操って殺す。そして首をはねられた四郎の死体はゾンビよろしく十字架を持つ手が動き始める・・・。深作版はさらし首が並ぶ地獄絵図の中で、沢田研二が延々と幕府への恨みを語る舞台劇のような趣。窪塚洋介の天草四郎はひたすら感情を表に出さず淡々とした雰囲気で、ひたすら不気味な存在として描かれている。佐藤浩市の十兵衛は決して悪くないし、古田新太の宝蔵院も煩悩まみれの深作版よりかっこいい。深作版では魔界側との堺で葛藤するのが若き真田広之だったが、リメイク版では黒谷友香がこの役割。現世への未練が十兵衛への恋心というところに持って行くのは物足りないが巧いアレンジ。
でもねー、リメイク版で残念なのは突き詰めると妖しさだと思う。無表情な天草四郎だけではなく、魔界側のキャラクターの弱さもその一員。四郎の右腕たるお品(麻生久美子)の活躍が今ひとつなところといい、あっけない宮本武蔵には唖然としてしまう。深作版は魔界の輩を斬る為に丹波哲郎扮する刀鍛冶が妖刀を作り上げるエピソードもあったよな。使われるCGも技術はあるのにどうして安っぽく見えてしまうのだろう。溶接みたいな火花が降ってくるクライマックスの決闘もこれはこれでいいのだが、燃え上がる江戸城にはさすがに敵わない。・・・とまぁ、オリジナルを観ている世代にはあまりにも不利な時期に製作されたとも思うが、深作版までエログロにできない現実もあるんだろうな。いずれにしても不幸な映画と思えてならない。