■「配達されない三通の手紙」(1979年・日本)
監督=野村芳太郎
主演=佐分利信 乙羽信子 小川真由美 栗原小巻 松坂慶子 片岡孝夫
エラリー・クィーンの原作を翻案した松竹製ミステリー映画。公開当時僕は中学生だったけど、松坂慶子のバックヌードも含めて何かと話題になっていたのを覚えている。やっとこの年齢で観る機会が。松本清張もののイメージが強い野村芳太郎監督作だし、配役は豪華。これは期待できる・・・と思っていたのだが、正直なところ土曜ワイド劇場が時間枠延長したような印象。「砂の器」のような情感を求めてもちょっと違う。しかし、2時間ドラマが垂れ流し状態の今だからそう思えるのであって、当時にしてみればここまで時間をかけて人間に迫るミステリーは劇場映画だからできたことかもしれない。
山口県萩市にある地方銀行の経営者一家の邸宅に、留学生がやってくるところから物語は始まる。結婚を控えていたが突然婚約者が失踪して沈んでいる次女(栗原小巻)、検察官の恋人がいる三女(神崎愛)。ところが3年ぶりに婚約者(片岡孝夫)が現れる。周囲の反対を押し切って結婚する二人。その直後、彼の妹と名乗る女性(松坂慶子)がやって来てしばらく一緒に暮らすことになる。すると彼の荷物である本の間から、未来の日付で「妻が倒れた」「妻が死んだ」と記した手紙が見つかる。しかもその本は毒物について記された本。手紙に記された日催された誕生日を祝うパーティの席上、死を迎えたのは・・・。
最初の30分までが観ていて実にしんどい。話は進展せず、勘当された長女(小川真由美)や三女の婚約者(渡瀬恒彦)ら登場人物を丁寧に紹介するエピソードが続く。松坂慶子が登場してからは、妹というわりには兄とされる片岡孝夫を妬むような言葉や罵ったりと険悪なムードに。さらに手紙が発見されてますます家の中の雰囲気が悪くなっているのに平静をよそおう日々・・・。観客はこれでもかと焦らされる。結末はここでは述べないが、思ったより意外性はない。愛ゆえの殺人と末路・・・なのだろうが、清張もののように感情に訴えかけてくるものは今ひとつ・・・。横溝正史ではすごかった市川崑監督も浅見光彦ものでは今ひとつだったように、野村方太郎監督は松本清張ものほどの冴えがない。上映時間の長さもあるのだろうか。松坂慶子は厚化粧だけど下品に見えないから不思議。
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