■「ナチュラル・ボーン・キラーズ/Natural Born Killers」(1994年・アメリカ)
監督=オリバー・ストーン
主演=ウディ・ハレルソン ジュリエット・ルイス トミー・リー・ジョーンズ
正直言って、タランティーノ自身が撮るべき題材だと思った。「トークレディオ」でメディアを扱ったオリバー・ストーンは、暴力とスキャンダルを売り物にしようとするメディアの悪(ここではロバート・ダウニーJr扮するレポーターに象徴されている)を徹底して描き、殺人カップルが英雄化されてゆく様を撮りたかったのだと思われる。
日本でもオウム報道をめぐってTVメディア自体がワイドショー化し、世論を感情が支配するまでに至った事が記憶に新しいので、興味深い部分ではあった。しかし、原案のタランティーノの思惑は、人間本来が持つバイオレンスにあり、それを斬新な映像表現で描くことにある。前半、ジュリエット・ルイスとウディ・ハレルソンが出会うくだりをコメディ番組の形で描く演出で、きわどさを笑いとばしているのはタランティーノのアンディアに違いあるまい。僕が思うに、タランティーノが撮ることで後半のメディアの悪は”バッカじゃないの”てな風に笑いとばされ、見ている側には暗示的に訴えることになっていただろう。
ストーン演出により、ロバート・ダウニーJrの過剰な熱演となったが、タランティーノならばおそらく彼のコメディセンスが発揮されるものとなったのではないか。ストーンが狙ったのは”現実が映画を越えている現代”を目一杯フィルム込めることだった。そのことで後味の悪い殺人映画と化したのである。
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