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お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

エンダーのゲーム

2014-01-26 | 映画(あ行)

■「エンダーのゲーム/Ender's Game」(2013年・アメリカ)

監督=ギャヴィン・フッド
主演=エイサ・バターフィールド ヘイリー・スタインフェルド ハリソン・フォード ベン・キングズレー

 オースン・スコット・カードの原作は1985年に書かれたSF小説。映画化の企画は何度か出たが、映像化する技術の問題から見送られてきたと聞く。そしてCGを用いればたいていのものは撮れる現代に、満を持してディズニーが映画化に踏み切ったということだ。しかしディズニーはエドガー・ライス・バロウズ原作のSF小説を映画化した「ジョン・カーター」で損失を出したばかり。「スターウォーズ」公開前にSF映画の実績をつくろうと必死なのでは・・・というようにも見える。でも僕ら世代の映画ファンならディズニーはかつて「トロン」という先駆的なSF映画を世に送り出した実績がある。「ブラックホール」という珍品こそあったけど、最近なら「ウォーリー」という本格SFテイストの作品があったではないか。実績はある。決して臆することはない。さて、SF文学賞であるヒューゴー賞を受賞した原作が現代SFX技術でどう映像化されるのか。

 人類はアリ似の昆虫型エイリアンの襲来を受け、ひとりのパイロットによる英雄的活躍でその侵攻を退けた。再度の襲撃に備えるべく軍は優秀な能力の少年をスカウトしていた。主人公エンダーは人口抑制で子供の数が制限された中、許可を受けて生まれた"サードチルドレン"。エンダーは相手の気持ちを理解するおとなしい少年だが、ときに攻撃的な一面をみせる。彼の訓練の成績やゲームの腕前を妬む子供達からのいじめに対しても、二度と同じ事をされないように徹底的に痛めつける。やがて彼は評価され、軍の訓練施設に入ることになる。チームプレイが要求される場所だが、敢えて上官は彼を孤立させようとして反応を見ていた。ストレス発散のために与えられたゲームの中で、エンダーは昆虫型エイリアンと不思議な光景を目にする。次々に難関をクリアして、指揮官としての才能を開花させていくエンダー。ついにバトルスクールの最終段階に進んだ彼は、ヴァーチャルでの宇宙戦を指揮する訓練を仲間とともに開始する。再度の襲来を防ぐため軍が選んだのは、相手の母星への先制攻撃。エンダーはその作戦を指揮して作戦を成功させられるのか。

 「僕は戦いたくないんだ」と言うサードチルドレンが主人公であるこの映画。あのアニメに影響を与えたのはこのSF文学だったのか、と気付かされる。訓練施設内のチームバトルの場面が面白い。無重力空間にどれだけ適応してミッションをクリアするかが試されるのだが、エンダーのチームが大胆な作戦で勝ち進む様は、上官のハリソン・フォードと同じように観ているこっちまでわくわくしてくる。物語全体に伏線が張り巡らされていて無駄なエピソードがないのもいい。世間ではお話がダイジェストのようだと言われているけれど、訓練施設の場面をとっとと終わらせないとものすごい上映時間になってしまうだろう。前線基地へ行ってからのクライマックスは、作戦に関わる様々な人々の思いが交錯してますます複雑になる。伝説の英雄が全身刺青のマオリ族という設定もいいね。

 この映画が今製作されたのは、この2010年代とエンダーたち少年の生きる環境が近づいてきたからだ。ビデオゲームに興じる少年達。彼らのデジタルへの適応力とその腕前はファミコン世代の僕らとは比べものにならない。そして陰湿ないじめや競争社会へのストレス、すぐにキレてしまう傾向・・・。まさに今の子供たちだし、未来はもっとその傾向は強くなるだろう。そして背筋に寒気が走ったのは、その少年少女のゲームへの適応力と子供特有の残虐な心を戦争に使用しているという、大人たちの、いや未来社会の恐ろしさ。80年代にこの原作小説が書かれたことに観ていて驚いてしまう。エンダーを演ずるエイサ・バターフィールド君は知的な雰囲気がいい。「縞模様のパジャマの少年」の無垢なイメージを保ちつつ成長してるのは嬉しいね。「ヒューゴの不思議な発明」を観ていないのでちょっと興味が出てきた。共演の二人の少女も彼を支える素敵な役柄。「トゥルー・グリット」のお転婆娘ヘイリー・スタインフェルドはかっこいいし、優しいお姉ちゃん役は「私の中のあなた」の次女アビゲイル・ブレスリン。


コメント (2)
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