Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ポストマン・ブルース

2014-02-17 | 映画(は行)

■「ポストマン・ブルース」(1997年・日本)

監督=サブ
主演=堤真一 堀部圭亮 遠山景織子 大杉漣

 最初やくざがつめた指が転がったり、重苦しい雰囲気の中で主人公が現金書留の封を切って金を使ったりと笑うに笑えない雰囲気で、これって何を狙っているの?と少しうざったく思っていたのだが、大杉漣扮する殺し屋ジョーが登場してから事態は一変。俄然映画は面白くなってきた。殺し屋選手権の場面(リオンさん、”ウィ”には大笑い)や”殺しは音楽。リズムが大事”といった台詞にグイグイ引き込まれてしまった。

 この映画の登場人物は脇役まで含めて一途な人たちばかりだ。主人公は自分がとんでもない状況に追い込まれていると知る間のないまま、クライマックスに突入するのだが、それに疑問さえ抱かずに銃撃された後も小夜子のいる病院に向かおうとする。彼を麻薬の運び屋と勘違いする刑事たちも職務に忠実なだけなんだろうし、ヤクザの友人も、殺し屋ジョーも魚屋のおっさんもみんなそうだ。特に殺し屋ジョーは男の哀愁が感じられて実に印象的なキャラクターだ。子供の頃殺し屋ごっこで一番ヘタだったとか、その水鉄砲を持って涙にくれるとか、人物の造形がよくできている。このキャラを主役に据えて一本撮って欲しいな(それって「レオン」のノリだ・笑)。

 現代人は自分のことで精一杯。それが故に周囲が見えなくなる。小夜子の手紙もそんな社会の中で消えていくはずのものだった。ところがちょっとした出来事で一途な人々の線が交わり始め、とんでもない事態になりはしたが、そこには確かに心の交流があった。人間ってやっぱり面白い。

 この映画はよくできたエンターテイメントだ。巻き込まれ型サスペンスでもあるけれど、主人公が全くそれを認知していないというのが面白い。それに警察のアタフタする様は、「遊びの時間は終わらない」を思い出させる楽しさ。小夜子と主人公を軸にしたラブストーリーも少ない台詞の中でよく描かれている。小夜子はガンに冒されており、もうこの先長くはない。二人のデート場面で、殺し屋に扮した主人公が「お前の中の殺し屋を殺してやる」と言って玩具のピストルを撃つ。小夜子は「殺して!」と叫んで天を仰ぐ。その「殺して!」は生きていても仕方ない自分に対してでもある。主人公はそんな彼女を抱きしめ「明日迎えに行く」と言う・・・。いい場面だ。いや~、泣かされたよ。ホント。

(2002年筆)




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