■「ヌイグルマーZ」(2013年・日本)
監督=井口昇
主演=中川翔子 武田梨奈 市道真央 猫ひろし
年が明けてから、いろんなままならぬ状況に鬱憤が溜まっていた。今映画館で観られる映画で、もっとも気分転換(現実逃避?)できる映画って何だろ?と考えた僕は、よりによってニッポンおバカ映画の巨匠井口昇監督、中川翔子主演「ヌイグルマーZ」をセレクトしてしまった。原作の大槻ケンヂは同い年なので密かに応援しているし、もちろんしょこたんの実力や嗜好を昔から認めている僕だ。このセレクトに間違いはない。ただ「片腕マシンガール」や「電人ザボーガー」など、ブッ飛んだ作風の井口監督作品は初めて観る。そこが唯一の不安要素だった。
なんだ、これは。一般映画とはどこかテイストの違うチープな感じ、それでもいい大人たちが知恵と愛情と情熱だけで、真剣に映画作りという遊びを楽しんでる感じがひしひしと伝わってくる。猫ひろしの変な悪役、学芸会以下の脇役の女子たち、数は多いが顔にペイントだけの即席ゾンビ、しょこたんお召しのどピンクロリータファッション…その作風を最初はやや冷めてみていた僕だが、だんだんとその世界に引きずり込まれてきた。終いにはお子様に見せられないおバカなギャグ(おっぱい光線、赤ちゃんテロリストetc)に苦笑しながらも、それを気持ちよいと感じ始めた。あれ程やりすぎだと感じた庵野秀明監督の実写版「キューティーハニー」が、これと比べたらまともな映画に思えてくる。
主人公の夢子は、何をやってもうまくいかない空想好きな女性。両親が亡くなったことから、母娘で暮らす姉の家に転がり込んだ。夢子はかつて女子ながらヒーローに憧れていたが、ロリータファッションに自分の色を見つけ出したという過去がある。一方、綿状生命体のエイリアンが母なる星の危機から逃れて、クマのぬいぐるみの中に隠れていた。夢子らが住む街を突然襲ったゾンビの群れ。姉はその襲撃で命を落とし、遺された娘を守るため、夢子はぬいぐるみ戦士ヌイグルマーとして戦うことになる・・・。
世間と違う好みや嗜好を持つことは悪いことではない。しかしそれ故に友達ができず、周囲に溶け込めなかった主人公が目的を見いだして活躍するところがこの映画の魅力。それは原作者大槻ケンヂ、井口昇監督、それに中川翔子自身の姿でもある。得意なことで誰かの役に立つことができるならそれは素敵なことじゃないか。今までテレビ番組でネタとしか扱われなかったしょこたんのヌンチャクさばきだが、改めてその見事さに惚れ惚れ。もともと空手少女だった武田梨奈のキレのあるアクションにも好きだから貫いている心意気を感じる。そして何よりもエンドクレジットで原作者大槻ケンヂが歌う主題歌「シネマタイズ」。しょせんは虚構である映画やその製作者たちの姿を、現実を生きる自分たちと対比させた見事な歌詞に感激。誰しもいろんな"黒歴史"あってこそ、今を生きている。それが何だっていいじゃない。それが今の僕らを支えているのだから。
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