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キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

少林虎鶴拳

2014-02-03 | キル・ビルのルーツを探せ!
少林虎鶴拳 [DVD]
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その35)★白眉の老師パイ・メイ

■「少林虎鶴拳/洪煕官(Executioners From Shaolin)」(1978年・香港)

監督=ラウ・カーリョン
主演=チェン・カンタイ ロー・リエ リュー・チャーフィー リリー・リー

 「キル・ビルvol.2」で強烈な印象を残すのが、ユマ・サーマンがカンフーを教わる師匠パイ・メイの存在だろう。鮮やかな身のこなし、華麗なアクション、白刃の上にスラリと降り立つその姿。そしてピントが一瞬乱れる荒っぽいカメラワークまで香港映画そのままだ。演じているのは、「vol.1」でクレイジー88の一員で登場した ゴードン・リュー(リュー・チャーフィ)。当初、タランティーノ監督は、パイ・メイ役をアクション監督を務めるユアン・ウーピンに演じさせるつもりでいた。その後、監督自らがパイ・メイ演じると言い出す・・・。しかし衣装をつけた監督はどう見てもサンタクロース・・・結局ゴードン・リューが演ずることで決着することになった 。が、声はタランティーノ監督が吹き替えている!何たる執着!

 この白眉の老師のモデルは、「少林虎鶴拳」に登場する悪役”白眉道人”。 南派少林故事に伝えられる白蓮教の高僧が原型だと言われる。間接的な続編にもよく似た役柄で登場し、後のカンフー映画の悪役像にも影響を与えたと も言われる重要なキャラクターなのだ。ショウブラザース作品をすべて観たと豪語するタランティーノ監督にはよほどのお気に入りだったのだろうな。

 清朝末期、少林寺の焼き討ちから物語は始まる。主人公洪煕官(チェン・カンタイ)を始めとする少林寺の弟子達は焼き討ちから逃れたのだが、 師匠は白眉道人に殺されてしまう。追っ手に仲間も殺された洪煕官は復讐を誓う。この主人公は少林寺英雄の一人で、虎形拳の使い手。主人公を逃がす為に犠牲になる弟子の一人を演じているのはゴードン・リュー。紅船と呼ばれる旅回りの劇団に身を隠した彼ら は、復讐の機会を伺うのだった。その間に洪煕官は鶴形拳の達人である女性を妻(後に詠春拳の祖となる方詠春)とする。この二人の初夜の場面が面白い。股の力がとても強い妻に対して腕ずくで足を開かせようとする主人公。あきらめて寝室の外で寝たり・・・とコミカルな場面が続く。方詠春を演ずるのはジャッキー・チェンの「ヤング・マスター」にも出演していたリリー・リー。なかなか気丈で美しい。 妻は仇を討つために、自分の鶴形拳を学ぶべきと諭すが、主人公は他派のカンフーは学べないと頑なに虎形拳を極めようとする。二人の間には息子が生まれる。母親の鶴形拳を仕込まれる彼は、「女のカンフーを習ってるヤツ」と友達にバカにされたりしている。男の子に「幽幻道士」のテンテン(懐)のような髪型させてるのが原因だろ!と画面にツッコミいれたくなるのをグッと堪える。

 父親洪煕官は仇パイ・メイにいよいよ挑む。「キング・ボクサー」の主人公だったロー・リエ演ずる白眉道人は白眉白髪の老人とはとても思えぬ血色のよさ(笑)。年老いても衰えぬその腕前で、洪煕官は逃げ帰る。銅人形を相手にした修行の末、再び白眉道人に挑むが逆に殺されてしまう。原題ではタイトルロールである主人公が姿を消した後は、息子洪文定の出番。このあたりからコミックカンフー的な軽い描写が目立ち始める。彼は父親の虎拳と母の鶴拳をミックスした技で仇討ちを果たすのだった。少林寺の師匠の仇討ちが、世代も変わって親の仇討ちになる大河ドラマ的な物語だ。残酷描写は控えめだが、白眉道人の急所を移す技は他の作品では見られない独特の面白さ。特に股間で相手の蹴りを受けとめてそのまま後ろに引きずる技は、「ありえん!」と笑いながらも本編で三度も見せつけられると素直に感動してしまう。少林寺の英雄物語としても面白い本作。この映画の間接的続編が「続・少林虎鶴拳 邪教逆襲(洪文定三破白蓮教)」。こちらは、再びロー・リエが白眉道人を演じ、洪文定と戦うお話なのだ。

Executioners From Shaolin (Hong Xi Guan) Trailer



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