Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

サブウェイ・パニック

2014-02-09 | 映画(さ行)

■「サブウェイ・パニック/The Taking Of Pelham 1 2 3」(1974年・アメリカ)

監督=ジョセフ・サージャント
主演=ウォルター・マッソー ロバート・ショウ マーティン・バルサム ヘクター・エリゾンド

 小学校高学年から中学にかけて、父親が映画番組を見るのを隣でなーんとなく見ていた。「フレンチコネクション」みたいな1970年代の渋いサスペンス映画は、父の好みで繰り返し見ていた。あの頃テレビの映画番組では、チャールズ・ブロンソンやらバート・レイノルズ、スティーブ・マックイーン、「黒いシャフト」「クレオパトラ危機突破」など黒人向けアクション映画まで見る機会はいくらでもあった。「サブウェイ・パニック」もそんな中で初めて見た。鼻ひげにメガネ、同じコートに帽子を着た4人組が地下鉄を乗っ取って人質をとり、身代金を要求するサスペンス映画だ。そこだけは強烈に覚えていた。だが、地下鉄車内の犯人たちと公安局警部補ガーバーのやりとりが暗い画面の中で延々と続く印象だけが残り、決して面白い映画だとはあの頃思えなかった。子供だったしね。その頃の親父の年齢を上回った今、改めて見直してみた。

 クエンティン・タランティーノ監督作「レザボア・ドッグス」で、登場人物のギャングたちはお互いを色の名前で呼び合っていた。その元ネタとされるのがこの映画である。「サブウェイ・パニック」の4人組は、それぞれミスター・ブルー、グリーン、グレイ、ブラウン。個性を消すための犯行手口なのだが、中坊だった僕には「ロシアより愛をこめて」のかっこいいロバート・ショウはどの人?と不満だったと思われる。今観るとそれぞれの個性は際立っている。特に冷酷で何をやらかすかわからないメンバー、元々お人好しだから余計なことを言うメンバーが含まれている。それ故に警察側と犯人グループの単なる追いかけっこではない、二重三重のハラハラ、ドキドキがある。地下鉄側でも、ガーバー警部補と他の職員たちのやりとりは決して意見は一致していないし、身代金が届くまでの緊張感。面白い。

 緊張感の隙間、随所に散りばめられたユーモアがいい味付けになっている。地下鉄で眠り続けてる乗客、列車が止まるように念ずる女性、東京からやってきた怪しげなニッポン人。でも何よりもウォルター・マッソーが出演しているという雰囲気だけで、ちょっとした台詞が粋な響きになる。硬軟使い分けることができる役者だな、と改めて思う。「お大事に」のひと言と最高のラストシーン。あの眼がたまらない。この場面だけはさすがの中坊も覚えていたが、ドラマティックに思えなかったんだろうな。今観ると台詞に頼らない演技、演出のよさがわかるね。そして追い詰められたロバート・ショウの最期。変な特殊技術なんかに頼らない巧さがある。



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