
■「キャロル/Carol」(2015年・イギリス=アメリカ=フランス)
●2015年カンヌ映画祭 女優賞
●2015年全米批評家協会賞 監督賞・撮影賞
●2015年NY批評家協会賞 作品賞・監督賞・脚本賞・撮影賞
監督=トッド・ヘインズ
主演=ケイト・ブランシェット ルーニー・マーラ サラ・ポールソン ジェイク・レイシー
お金持ちの奥様キャロルに惹かれたデパート店員テレーズ。
常に周囲に流され続けて引っ込み思案だったテレーズを、
その出会いが変えた。
これまで多くを語らなかった趣味の写真、
一方的に求婚してくる男友達への本音を口にし、自分の思いに正直になっていく。
一方、キャロルは離婚調停中で親権をめぐる争いが泥沼化していた。
夫側が不仲の原因としたのが、キャロルの過去。
それは当時の保守的なアメリカ社会ではタブーとされてきたこと・・・。
「エデンより彼方へ」でも
同様のテーマを取り上げたことのあるトッド・ヘインズ監督。
でもLGBTをテーマにした最近の映画たちと、
この「キャロル」をひとくくりにしてしまっていいのだろか。
「キャロル」は、人生を大きく変える人との出会いこそが主眼。
キャロルはテレーズが自分の殻を破るきっかけを作る頼れる憧れの女性。
でもキャロルのことを知るうちに彼女の置かれた立場や弱さに、
テレーズは自分が何とかできないかと考え始める。
突飛な役柄が多かったルーニー・マーラが等身大の女性を演じ、
ストーリーが進むにつれて変わっていく様子が印象的だ。
何よりも撮影が美しい。
窓の雨粒越しの夜の街、
運転するキャロルを見つめる目線。
これは視線で語る映画。
ヒロインが見ているものが、銀幕のこちら側の視点と重なるドキドキ感。
同じパトリシア・ハイスミス原作と言えば「太陽がいっぱい」。
思えばあの映画も、主人公が変わるきっかけとなる同性がいて、
二人が愛した女性をじーっと見つめるようなカメラワークが心に残ったな。
映画『キャロル』予告編