■「君の名前で僕を呼んで/Call Me By Your Name」(2017年・イタリア=フランス=ブラジル=アメリカ)
●2017年アカデミー賞 脚色賞
●2017年LA批評家協会賞 作品賞・男優賞・監督賞
監督=ルカ・グァダニーノ
主演=ティモシー・シャラメ アーミー・ハマー マイケル・スタールバーグ アミラ・カサール
「モーリス」のジェームズ・アイボリーが脚本、秀作「ミラノ、愛に生きる」のルカ・グァダニーノが監督。
アイボリー翁が史上最年長でオスカー受賞したし、LGBT映画にハズレなし!が持論の友達のお勧めもあり鑑賞。
主人公エリオは17歳。
イタリアの避暑地で過ごす1983年の夏、大学教授の父を手伝う為に大学院生オリバーがやってきた。
最初はオリバーの物言いが気に障っていたエリオだったが、
一緒に過ごすうちに、彼に対する憧れが次第に恋心へと変わっていき、二人はやがて密かな恋に落ちていく。
映像の美しさ、散りばめられた音楽との調和が見事。
男子二人のラブシーンは撮り方が巧みでいやらしさは全く感じない。
いや、むしろ人と人が肌と心を合わせる瞬間のときめきや、心地よさが伝わってくる気がした。
その分、後半の展開が実に切なくて。
そうか、晩年を迎えたジェームズ・アイボリーが撮りたかったのはこういう愛の姿なのだ。
一部のシーンがちょっと生々しいのだが、そこまで表現できたのも、
LGBTへの理解が「モーリス」を撮った80年代とは違う今だからこそ。
そして、映画はさらにグァダニーノ監督が撮ったことで、
家族を描かせたら天下一品のイタリア映画の伝統が織り込まれる。
二人のその後が描かれるクライマックス、
この映画は単なる男子二人の恋愛映画ではなく、家族愛が貫かれた映画だと思い知らされる。
残酷なまでに長回しのラストシーンが残す余韻。こんなエンドクレジットの使い方はなかなかない。
これは、アイボリーらしさと、イタリア映画伝統の家族愛が沁みる見事なコラボレーション。
「フラッシュダンス」で使われていたジョー・エスポジトのLady, Lady, Ladyや、
サイケデリックファーズのLove My Wayなど80年代の楽曲が懐かしい。
坂本龍一のピアノ曲など、音楽の使われ方もナイス。
『君の名前で僕を呼んで』日本語字幕予告編