TVアニメ「映像研には手を出すな!」全12話完走。
湯浅政明監督の表現力と、原作が持つ狭いのにとてつもなくディープな世界観が絶妙にマッチした傑作。ヲタクを勇気づける作品との感想は多いけれど、何事であってもディープにのめり込む人の姿はカッコいいことを教えてくれる。そういう意味では、湯浅監督の「ピンポン THE ANIMATION」にも通ずる痛快な作品。
日常の風景をアニメの設定画のように描いて妄想に耽っていた浅草みどりは、自分が思い描く最強の世界をアニメにしたいと思い立つ。彼女の唯一の理解者でお金になることが大好きなビジネス発想の金森さやかと、アニメ研の上映会で出会ったカリスマ読者モデル水崎ツバメという三人は、映像研を立ち上げて独自のアニメーション製作に乗り出す物語。
湯浅政明という表現者を得たことで、この原作は翼を手にした。浅草のイマジネーションが炸裂する空想場面では、ラフなスケッチ風の作画にすることで、スケッチブックの上にあっただけの世界が無限の広がりを得ていく。ニッポンアニメのクオリティは、この物語で描かれるようなクリエイターの情熱がある。これまで見た作品にも、これから出会うであろう作品の向こう側にもそんな人たちがいるんだ。
初回の冒頭、明らかに「未来少年コナン」である別タイトルのアニメを見ながら、アニメが好きになる瞬間が描かれた。僕らもこのシーンで完全に心を掴まれた。生徒会の予算審議委員会での作品上映がある第4話では、作品が多くの人の心を掴む瞬間がど迫力で描かれる。この2回だけでご飯何杯でもいけちゃいそう。
一方で三者三様の成長物語であることも、作品をヲタ色だけにとどめない重要な要素。特に水崎がアニメはダメという親の反対を乗り越えて理解される第8話、金森が商魂を身につけたルーツが語られる第9話には涙誘われる。エロさ皆無の銭湯のエピソードや、幼い水崎が夢中になった水の動きのエピソードでは、湯浅監督独特の水の表現も素晴らしい。
声優初挑戦の伊藤沙莉、ハスキーな声が大好き。昨年、番組の公開収録で見られたのはラッキーでした♪