Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

薔薇の名前

2020-11-01 | 映画(は行)


■「薔薇の名前/The Name of The Rose」(1986年・フランス=イタリア=西ドイツ)

監督=ジャン・ジャック・アノー
主演=ショーン・コネリー クリスチャン・スレーター F・マーリー・エイブラハム

子供の頃から繰り返しみる夢が二つあった。その一つは、高い塔になっている図書館みたいな建物が出てくる夢だ。下の階には雑誌や絵本や一般的な本が並べられている。上の階に行くほど過去の知恵や歴史が記された書物がある、と僕であろう主人公は聞かされる。ひとつひとつ階を進んでいく度に新たな驚きと発見があった。しかし、さらに進んでいくためには仕掛けられた罠や迷路や暗闇に潜んだ魔物を突破していかねばならない。そして最上階にあるという、この世の真実に近づいていくという物語だ。今の目線ならRPGのゲームにいくらでも転がってる話だし、「ソードアート・オンライン」のアインクラッド編みたいと思う方もあるだろう。

1988年。僕はその図書館塔にそっくりな舞台が登場する映画に出会う。それは、ショーン・コネリーが14世紀の修道士を演じたミステリー映画「薔薇の名前」だ。勝手に運命の映画だと思っている。

ウンベルト・エーコの長編小説(その分厚さにビビって読んだことがない)の映画化。北イタリアにあるベネディクト会の修道院で起こる連続殺人事件に、フランシスコ会の修道士ウィリアムとその弟子アドソが挑む物語。世界史好きだったので、授業で聞いたことのある「10分の1税」だの「異端審問」「アリストテレス」などキーワードが次々と出てきて、知的好奇心が刺激された。全体に漂う怪奇ムードや、不気味な面構えの登場人物たち。もちろんミステリーとしても、ウィリアムとアドソが、ホームズとワトソンみたいに事件を解き明かす様子が面白くて夢中になって、その後も繰り返し観ているお気に入りの映画。

事件に巻きこまれる貧しい娘が、強い印象を残してくれる。うちの親父殿(ひいき目でショーン・コネリー似)は、この娘を見て「"野生の女"だな」と満足そうな顔をした。…ったくw

(後醍醐天皇似の)ミシェル・ロンスデール(※フランスの俳優さんなので敢えてマイケルと表記しません)、「アマデウス」でサリエリを演じたF・マーリー・エイブラハムなど古風で個性的な役者をズラリと揃えたキャスティング。その中で弟子アドソを演じたのはデビュー間もないクリスチャン・スレーター。

2020年10月にショーン・コネリーが90歳で死去。ジェームズ・ボンドをはじめ、「アンタッチャブル」の警官マローン、「インディ・ジョーンズ最後の聖戦」のヘンリー・ジョーンズ博士などコネリーが演じてきた人物たちに、僕は男の生き方と美学を学んできたと思う。「薔薇の名前」のウィリアム修道士からも、知性と勇気と自分を信じて貫く強さの大切さを学んだ。ご冥福をお祈りします。



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