■「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」(2020年・日本)
監督=外崎春雄
声の出演=花江夏樹 鬼頭明里 下野紘 松岡禎丞
これまで少年ジャンプのコミックとは、一部を除いてどうも相性が悪かった気がする。屈強な男子が拳を交え、ヒーローとして成長するコミックは楽しいけれど、正直なところ好みではなかった(「ジョジョ」除く)。そんな僕が「鬼滅の刃」に挑んでみた。コロナ禍で大作映画は次々と延期、上映中止となる中で、映画館の救世主となる社会現象を起こしているだけに、どんなものか観ておくか、と世間の流れに乗ってみる。原作未読。最低限の予備知識だけを詰め込んだ。
「Fate」シリーズの製作でも知られるufotableの緻密な仕事に驚かされる。実写かと見違えてしまいそうな風に揺れる木々、草花の動き。炭治郎の着る市松模様がシワや動きで歪む様子もきちんと描き込まれている。人物の前後の配置は、遠近法だけでなく手前の人物をぼかして奥行きを感じさせる。このシーンにどれだけの手間がかかっているのか想像すると、アニメーターの仕事に頭が下がるし、すごい贅沢な時間を過ごさせてもらっているのだと思う。「Heaven's Feel」のセイバーオルタとライダーのバトルも、アニメだからできるカメラワークに圧倒されたが、ラストの煉獄杏寿郎と猗窩座(あかざ)の対決もスピードと力ばかりを表現するのではなく、攻防がカットを細かくつないで丁寧に描かれている。どんなダメージを受けたのかがわかりやすい工夫だ。その分痛々しくはあるのだけれど。
少年たちの(多少説明過多な)台詞にキャラクターの特徴がうまく表現されていて、にわか仕込みの僕でもこの映画が伝えたいことはそれなりに受け止められたと思う。アニメ本編を通して見てると、少年たちの成長物語としての面白さや、元人間だった鬼側の理屈を語れるところなんだろうけど、そこは詳しい方にお任せするとして。夢と覚醒の場面は、映画ファンには「インセプション」や「オール・ユー・ニード・イズ・キル」を思い出させますな。
PG-12のレーティングが付けられているのに、ちっちゃい子を連れた親子が目立つ。親の同伴を求めてるのだから、見せちゃいけないとは言わない。だけど、未就学児はさすがにどうかと思う。家族の惨殺シーンや夢から脱出するために炭治郎が自刃(じじん)するシーンなんて、幼い子には怖いだろ。僕が行った回でも、前の方の席にいた子供が親に「まだ終わらんの?」と何度も尋ねている声が聞こえてきた。その厳しいシーンを乗り越えた先にあるメッセージや、その過程の努力を読み取ることができるくらいになってから観たならば、この作品は少年少女をとても勇気づける力を持っているはず。
同じように人が死ぬアニメでも、毎週殺人を目にする「名探偵コナン」よりダークファンタジーの「犬夜叉」を子供に見せたい、が持論だった僕だけれど、その頃よりもはるかにハードになったダークファンタジーが今や主流になっている。仕方ないのかな。ちょっとユルい気もするのだが。まあ、ロマコメ嗜好の80's 少年サンデー派だったんで、戯言と思ってくださいませ。ジャンプでどハマりしたのって、池沢さとし、まつもと泉と江口寿史なんだものww
劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 本予告 2020年10月16日(金)公開