■「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」(2009年・日本)
総監督=庵野秀明 監督=摩砂雪 鶴巻和哉
声の出演=緒方恵美 林原めぐみ 宮村優子 坂本真綾
新訳「エヴァ」たる新劇場版第2作「破」。見終わって思ったのは、「エヴァ」ってこんなにわかりやすかったっけ?ということ。アスカ(テレビシリーズと名前を変える理由は何?)が登場し、新キャラも登場する。この劇場版はシンジ、レイ、アスカの微妙な三角関係がかなり強調されているのが印象的だ。自信満々だったアスカが一人では何もできないと心が揺らぐエピソード、レイが碇司令とシンジの仲をとりもとうとするエピソード、そしてシンジが逃げ腰から再び立ち向かおうとする成長物語が加わって、主人公3人の心の変化が主要なテーマになっている。女子二人が料理に目覚める場面のラブコメ感。かなり一般に受け入れられる改変だ。
これまで難解とされた「エヴァ」を2時間のエンターテイメントに仕立て直した。それは成功かと思う。しかしそれ故に、オリジナルのもつミステリアスな物語の展開と終末感にあふれた世界観が、やや薄味になっているのは仕方ないのかもしれない。「エヴァ」はこんなに笑ってみられる話ではないはずだ。
と思っていたら映画後半不穏な空気が漂ってくる。アスカが人と関わるのが心地よいとミサトと会話するちょっとキュンとする場面(プラグスーツ見えすぎじゃない?ってきゃわいい)直後だけに、その落差に驚く。月面で微笑むカヲル君も不気味。そして、「翼をください」が流れる怒涛のクライマックス。シンジの思いが、初号機を別次元へと覚醒させていく。シンジが自分自身にまとっていたフィールドから突き抜けた瞬間が描かれる映画としてのカタルシス。まさに「破」。しかしそれは同時にとんでもない事態を引き起こす。えっ、終わるの!?と思ったら、えっ!えーっ!?
テレビシリーズをグレードアップしたリブートだと信じた「序」からの期待は、見事に裏切られる。これも文字通りの「破」。それにしても、これだけダークな展開と混沌とした謎だけが待ってるのに、エンターテイメントとしてしっかり面白い。これまでこのシリーズをどこか冷めた目で見ていたけれど、クライマックスで手に汗握ったのは、テレビシリーズも含めてこれが初めてかもしれない。これがいちばん好きかも。
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 予告編