◼️「RBG 最強の85才/RBG」(2018年・アメリカ)
監督=ベッツィ・ウェスト、ジュリー・コーエン
出演=ルース・ベイダー・ギンズバーグ ビル・クリントン バラク・オバマ
性差別撤廃やマイノリティの権利拡大に尽くし、アメリカ最高裁判事として長年活躍してきた女性ルース・ベイダー・ギンズバーグのドキュメンタリー。彼女の若き日々を描いた映画「ビリーブ 未来への大逆転」を観て、その信念を貫く姿に感動しただけに、このドキュメンタリーは観たかった作品。生息地の映画館では、親切にも「ビリーブ」と二本立て上映もあったのだが行けず。そこにEテレのドキュメンタリー番組が、2週連続前後編で放送。ありがとうNHK。
法曹界に女性はいらないという風潮のあった時代。いくら優秀でも弁護士事務所に雇ってもらえなかったルース。大学で講義をする仕事はあっても、裁判にかかわることはできずにいた。女性が二級市民のような扱いを受けていた厳しい時代。女性の地位向上につながる訴訟に携わることで、世の中を変えていくことはできないかと常々考えていた。やがて、女性軍人に支払われない手当、男性のひとり親に支払われない給付の裁判を経て、彼女の裁判や意見が社会に影響を与えていく様子が語られる。ここまでは映画でも出てきた話だ。
その先このドキュメンタリーで語られるのは、クリントン政権の下で史上二人目の女性最高裁判事となるまでの道のり、そしてルース本人の人柄について。これは、単なるサクセスストーリーではなくて、アメリカの現代史に深く関わる内容でもある。最高裁判事となった後、リベラル派の立場で述べてきた彼女の意見は、やがて若い世代にも共感を呼び、ポップアイコン化する程の支持を集める。これも功績と人柄あってのこと。こうした存在、日本では考えつかない。
「議論で相手に勝とうと思ったら怒鳴ってはいけない。相手が歩み寄ろうとしなくなるからだ。」
「差別なんかないと思ってる判事たちに、幼稚園の先生のように話して聞かせた。」
メモしときたい言葉もたくさん。学ぶことがたくさんある。
お互いを認め合った夫婦の姿も感動的だ。男女差別が厳しかった時代にルースを支えた夫。映画「ビリーブ」ではアーミー・ハマーが好演していたが、ご本人の飛び抜けたユーモアある話術も、内気な妻を売り込んだ行動力も素晴らしい。
2020年にルース逝去。それもあっての今回のテレビ放送なんだろう。彼女のスピリットは語り継がれ、受け継がれる。