Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ノマドランド

2021-05-26 | 映画(な行)

◼️「ノマドランド/Nomadland」(2020年・アメリカ)

監督=クロエ・ジャオ
主演=フランシス・マクドーマンド デヴィッド・ストラザーン リンダ・メイ

なんだろ、映画館を出る時のなんとも言えない気持ち。ノマド生活を送る人々の心の交流に温かな気持ちになりつつも、自分自身も寂しくて不安な気持ちになった。

リーマンショック後、住んでいた企業城下町がなくなり、地図上から街の名前さえも消えてしまった。夫の死後、キャンピングカー生活を始めた主人公。季節労働者として小麦の収穫地やAmazonの倉庫で働き、移動しながらの生活を送る人々の人間模様が描かれる。

「なぜホームレスになったの?」
「ホームレスになったんじゃないの。ハウスレスになったの」
この言葉は印象的。ホームには住んでいる場所、安心できる場所の意味があり、ハウスは外界から隔てる建造物を指す言葉。彼女が暮らす車は、映画後半でも語られるように暮らしの場所。手を加えて暮らしやすくしてきた愛着のある場所なのだ。

移動生活を送る中で、出会いと別れ、また再会がある。一方でノマドの生活に理解を示さない人もいる。親族と会う場面でもどこか距離を置かれる。

一人でいることが楽なのに、誰かとのつながりを求めてしまう。

この切なさは言葉にすると陳腐になってしまうし、ノマド生活者にしてみれば何がわかると言われてしまうのかもしれない。

このコロナ禍で観たせいか、映画から感じる切なさはとても心に響く。ステイホームが呼びかけられ、人と人が隔てられている今。人間関係の煩わしさや面倒は減って楽になった面もある。しかしそれでも日常的なコミュニケーションが激減したことは、孤独感や誰にも相談できない悩み、会えない辛さを生んでいる。

一人でいることが楽なのに、誰かとのつながりを求めてしまう。それは僕らも同じ。

『ノマドランド』予告編



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