◼️「竜とそばかすの姫」(2021年・日本)
監督=細田守
声の出演=中村佳穂 成田凌 染谷将太 玉城ティナ
他の作品でも書いたけれど、細田守監督はファンタジーの世界観を全面に出しつつも現実を忘れない人だ。本作と同じくインターネットの世界とリアルを描いた「サマーウォーズ」が大好き。バーチャル空間でのつながり、おばあちゃんが電話かけまくって「あんたならできる」と励ますつながり、一家がそれぞれの得意で事件に挑むつながり。サイバーゾーンとリアルのネットワークの関係が絶妙だった。
さて「竜とそばかすの姫」もサイバーゾーンとリアルの話。しかし「サマーウォーズ」から10年余りが経ち、インターネットと僕らの関わりも変わってきている。壮大な仮想空間「U」でアバターたちが飛び回る様子は似ているし、映画冒頭から示されるその世界への没入感はワクワクさせてくれる。しかし青春の冒険エンターテイメントだった「サマーウォーズ」と違って、「竜とそばかすの姫」にはちょっとハードな現実が散りばめられている。スクールカースト、言えない気持ち、つながりたい気持ち、逃げ場としてのネット社会、心ない声、独りよがりな正義を振りかざす人々、孤独、虐待、エトセトラ。「おおかみこども」で感じた中途半端なリアル感とは違って、ヒロインすずをとりまく現実のしんどさは僕らも日々感じていることだし、見聞きしていることでもある。それだけに「サマーウォーズ」の爽快感を求めたら、裏切られてしまうだろう。
そう言う面での物足りなさは、ハードで現実的な部分がキーワードとして並べられているにすぎず、ヒロインの成長物語だけを手放しで賛美できないことだろう。クライマックスの展開も、これで解決できるの?本当に大変なのはここからなのでは?すずを助けているつもりの毒舌なやり手の友達も、結局はいちばんすずを型にはめていた訳で、彼女の改心とかないの?Uにアクセスするギアの仕組みや、竜がサイバー空間に屋敷を持てた理由とか、ツッコミどころが多々あって、ちょっとモヤモヤしてしまう。それでもすずの心境の変化と周辺の登場人物に絞って見れば、青春物語としてキュンキュンくる面白さはある。
音楽の良さもこの映画の魅力。観終わって、また聴きたくなる歌声だ。「自分の為に歌っているみたい」というひと言も、ネットで内省的な楽曲が受けている今どきの状況を感じさせる。でもストーリー上ですずが音楽製作する様子がもうちょっと出てこないと、いろいろあって歌えないけど音楽への情熱があることが伝わらない気もする。音楽製作アプリを触ってた少女時代を無言で示すことと、思いついたメロディを記録しなきゃってアプリを操作しようとする短い場面だけではちょっと不親切かも。
全体的には造形の面白さや美しさはあるだけに、ちょっと残念。これまでの細田作品からすると詰め込みすぎな印象が残った。
さて「竜とそばかすの姫」もサイバーゾーンとリアルの話。しかし「サマーウォーズ」から10年余りが経ち、インターネットと僕らの関わりも変わってきている。壮大な仮想空間「U」でアバターたちが飛び回る様子は似ているし、映画冒頭から示されるその世界への没入感はワクワクさせてくれる。しかし青春の冒険エンターテイメントだった「サマーウォーズ」と違って、「竜とそばかすの姫」にはちょっとハードな現実が散りばめられている。スクールカースト、言えない気持ち、つながりたい気持ち、逃げ場としてのネット社会、心ない声、独りよがりな正義を振りかざす人々、孤独、虐待、エトセトラ。「おおかみこども」で感じた中途半端なリアル感とは違って、ヒロインすずをとりまく現実のしんどさは僕らも日々感じていることだし、見聞きしていることでもある。それだけに「サマーウォーズ」の爽快感を求めたら、裏切られてしまうだろう。
そう言う面での物足りなさは、ハードで現実的な部分がキーワードとして並べられているにすぎず、ヒロインの成長物語だけを手放しで賛美できないことだろう。クライマックスの展開も、これで解決できるの?本当に大変なのはここからなのでは?すずを助けているつもりの毒舌なやり手の友達も、結局はいちばんすずを型にはめていた訳で、彼女の改心とかないの?Uにアクセスするギアの仕組みや、竜がサイバー空間に屋敷を持てた理由とか、ツッコミどころが多々あって、ちょっとモヤモヤしてしまう。それでもすずの心境の変化と周辺の登場人物に絞って見れば、青春物語としてキュンキュンくる面白さはある。
音楽の良さもこの映画の魅力。観終わって、また聴きたくなる歌声だ。「自分の為に歌っているみたい」というひと言も、ネットで内省的な楽曲が受けている今どきの状況を感じさせる。でもストーリー上ですずが音楽製作する様子がもうちょっと出てこないと、いろいろあって歌えないけど音楽への情熱があることが伝わらない気もする。音楽製作アプリを触ってた少女時代を無言で示すことと、思いついたメロディを記録しなきゃってアプリを操作しようとする短い場面だけではちょっと不親切かも。
全体的には造形の面白さや美しさはあるだけに、ちょっと残念。これまでの細田作品からすると詰め込みすぎな印象が残った。