Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ドント・ルック・アップ

2021-12-24 | 映画(た行)


◼️「ドント・ルック・アップ/Don't Look Up」(2021年・アメリカ)

監督=アダム・マッケイ
主演=レオナルド・ディカプリオ ジェニファー・ローレンス ジョナ・ヒル メリル・ストリープ ロブ・モーガン

これは劇場で観られないのがもったいない。スクリーンで観られるなら観ておくべき。巨大彗星が地球に迫るという、70年代ならパニック映画になる題材を、現代アメリカを強烈に皮肉るコメディに仕上げていて面白い。大手メジャー映画会社の製作する一般劇映画では、政治をぶった斬り、風刺というスパイスたっぷりの映画は難しいだろう。ネトフリ作品だからこそ撮ることができた作品かもしれない。そう思ったら過剰な演出も毒を含んだ演技も、妙にノリノリに見える。

政治とマスコミに翻弄される主人公二人、ミンディ教授と大学院生ケイトを中心に、周囲がどんどん常軌を逸していく様子が面白い。だが、一方でとんでもない人間の欲望の怖さに笑いながらもヒヤリとするのだ。メリル・ストリープ大統領とジョナ・ヒル補佐官が、楽しそうに嫌な役をやっている。トランプ前大統領を意識しているキャラづくりで、地球規模の危機だというのに、中間選挙と支持率しか頭にない俗物ぶり。視聴者にウケる笑いのネタが欲しいだけのマスコミの酷さ。ケイト・ブランシェット演ずる司会者も、これまた人気者となったミンディ教授を手玉に取る手腕に驚く。現実に失望したケイトが出会うスケボー青年。彼を演じるシャラメ君が、他の映画と違って気取ってもナイーブでもなく、妙に等身大な役柄でこれまた好印象。

危機的な事態に向き合う他国や国連との関係はあまり描かれないので、現実味は薄い。しかし、人間のエゴこそ醜くくて滑稽だということを、この映画は笑い飛ばしながら教えてくれる。迫り来る彗星をめぐって、国家が二分される大激論に発展する様子は、勝つ為なら誹謗中傷も情報操作も辞さない大統領選挙のダーティな一面そのもの。救世主のようにアイディアをもって現れるIT企業主が、まるで国家を牛耳っているかのように描かれる。これは145分の現代風刺画。




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