Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

プロミシング・ヤング・ウーマン

2022-03-08 | 映画(は行)


◼️「プロミシング・ヤング・ウーマン/Promising Young Woman」(2020年・アメリカ)

監督=エメラルド・フェンネル
主演=キャリー・マリガン アダム・ブロディ レイ・ニコルソン サム・リチャードソン

医学生時代の友人を理不尽な事件をきっかけに失ったキャシー。医大を中退後、昼間はコーヒーショップの店員をしている彼女。しかし、夜は泥酔した彼女をお持ち帰りしようとする男どもを、次々に懲らしめてその数を手帳に記録していた。彼女のこの行動の裏には、学生時代の事件とその関係者への深い恨みがあった。

一見犯罪映画、スリラー映画、時に恋愛映画のムードを見せておきながら、気づくと社会性のあるテーマを深く考えさせられている。なんて巧みな演出だろう。クライマックスの驚愕の展開。それがどんな結末につながるのかと思ったら、予想を超え、しかも痛快なラストシーン。いけ好かない女がラストにやたらカッコよくなる「アイ、トーニャ」や、スリラーみたいな追い詰め方で引き込んで、最後は女性の自立を考えさせる「スワロウ」にも通ずる。「プロミシング・ヤング・ウーマン」は、性暴力の問題を扱いながらも、エンターテイメントとして申し分ない。奇跡的なバランスは見事としか表現する言葉が見つからない。

性暴力を扱っていながら、それをビジュアルとして見せないのもこの映画の特筆すべき点だと思う。レイプをめぐる70年代の裁判映画「リップスティック」や、ジョディ・フォスターがオスカーを獲得した「告発の行方」も一方的な性暴力を扱っている。女性が襲われる場面は痛々しいし、それを演じる側の精神的なストレスは、スクリーンのこっち側で想像するのをはるかに超えるものに違いない。しかし「プロミシング・ヤング・ウーマン」では、そうした野蛮な行為は、観客には音声で示される。それはどれだけ痛ましいもので、人を傷つけるものだったかを観る者に考えさせるのに大きな役割を果たしているし、ヒロインの言動を見ればその行為の愚かさは十分に伝わっている。





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