◼️「あの愛をふたたび/Un Homme Qui Me Plait」(1970年・フランス)
監督=クロード・ルルーシュ
主演=ジャン・ポール・ベルモンド アニー・ジラルド マルセル・ボズフィ リチャード・ベイスハート ファラ・フォーセット
映画音楽は好きなのに、本編を観たことがない映画が多々ある。今回観た「あの愛をふたたび」もその一つだった。中高生の頃、NHK-FMの映画音楽番組にどハマりしたことや、父親がいわゆるイージーリスニングと呼ばれたジャンルを好んで聴いていた影響もあるのだろう。まだ観ぬヨーロッパ映画の主題曲はそれで覚えた。そんなこんなで、中高生の僕は「ある愛の詩」と「男と女」しか観たことないのに、フランシス・レイの音楽がやたらと大好きだったのだ。
フランシス・レイ楽曲で、哀愁ただようメロディが気になっていた一曲が「あの愛をふたたび」。吹奏楽部の後輩がトランペットで吹いているのを聴いて、いい曲だけどどんな映画なんだろとずーっと思ってきた。2021年に主役のジャン・ポール・ベルモンドが亡くなったこともありDVD化。今回が初鑑賞。
映画女優と音楽家が撮影の現場で出会う。お互い配偶者がいる身なのだが、次第に惹かれるようになり、一緒に過ごす時間が愛おしく感じられるようになる。撮影がひと段落してしばらく休暇となり、二人はアメリカ各地を旅行する。その道行きと心の動きを、ルルーシュ監督はカメラマン出身らしいスタイリッシュな映像で映し出す。
出会う順番が違っていたら…と二人は言う。不倫カップルらしい身勝手な考えだと世間は言うに違いない。だけど男と女が惹かれ合った時のどうしようもない感じって、当人たちにしか分からないし、そんな思いが過ぎることはあるだろう。そんな二人の気持ちを観る側が許容できるかどうかで、この映画の評価は分かれるのかも。でも、同じ婚姻外の恋を描いた映画の登場人物たちよりは、よっぽど潔いとも思える。アニー・ジラルドはちゃんと夫に気持ちを打ち明けているんだもの。飛行機事故を利用して結婚とは別な人生を選ぼうとする「旅愁」よりずっと正直じゃないか。
ベルモンド演ずる音楽家が、劇中製作される映画のクライマックスのために書き下ろした曲は、空港の動く歩道で交わすキスシーンを盛り上げる曲。その曲が再び流れるのがラストシーン。しかし、そこに映画のような結末は訪れない。台詞もなく、ただアニー・ジラルドの表情を映すだけ。しかしその微妙な表情からヒロインのいろんな感情が伝わってくる。大人の映画。今の年齢で観てよかった。
「チャリエン」(TV)のファラ・フォーセットのデビュー作。まだあの髪型じゃないから、言われないと気づかないかも。劇中、映画監督役で登場する男性。後に「ラ・ブーム」を撮るクロード・ピノトー監督じゃないかと思うんだけど。違うかなー。