Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

Summer of 85

2022-06-14 | 映画(さ行)

◼️「Summer of 85/Été 85」(2021年・フランス=ベルギー)

監督=フランソワ・オゾン
主演=フェリックス・ルフェーヴル バンジャマン・ヴォワザン ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ メルヴィル・プポー

16歳のアレックスは友人のヨットでセイリング中に転覆し、危ういところを18歳のダヴィドに助けられる。ダヴィドはアレックスを家に招いて母と一緒に世話を焼いてくれた。母親はアレックスに迫るように言う。
「この子に必要なのは本当の友達なのよ」
親しくなった二人は共に一日を過ごすようになり恋におちる。ダヴィドはアレックスに「どちらかが先に死んだら墓で踊る」との約束をする。2人の男子が過ごした短い夏を、フランソワ・オゾン監督が描いた青春映画。

この映画は、おそらくオゾン監督の自分語りだ。監督自身が10代後半を過ごした時代を背景にして、ローラ・ブラニガンのSelf Controlのフランス語カバー?やバナナラマのCruel Summerが挿入歌として流れる。そしてオープニングとエンディングには、監督自身が楽曲の使用を強く希望したキュアーのInbetween Days。この曲でなかったら、きっとしんみりしたBL映画になっていたところ。それが新たな出会いと立ち直りを示唆するラストに重なって、爽やかな印象を与えてくれる。

物語はヨットのセイリングで始まり、セイリングで終わる。クラブ(85年当時ならディスコ?)で踊り狂うアレックスにダヴィドが背後から近づいてヘッドフォンをかけ、ロッド・スチュワートのSailingを聴かせる(この場面に「ラ・ブーム」やん!と即座にツッコミ入れてしまったあなたは、きっとオゾン監督と同世代w)。そしてクライマックスに出てくる踊る場面で、再びロッドのSailing。これはダヴィドとの思い出の曲。彼とヨットの上でもっと寄り添いたかったというアレックスの気持ちも入ってるのだろうか。

何が彼の身に起こったのかが次第に明らかになるストーリーの進行は、ミステリアスで面白い。しかもそれが文学的才能のあるアレックスに告白小説の形式で語らせるのが面白い。文章に向き合うことで、彼と会うことができる。自分と向き合うことができる。それを観客は見守りながらも、続きが気になって仕方ない。同じオゾン監督の「危険なプロット」も少年が書く文章が、重要な要素となる作品。文学や言葉を大切にしている監督のこだわりか。オゾン作品の常連であるメルヴィル・プポー、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキが好演。


コメント
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