Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

マイ・ブロークン・マリコ

2022-10-08 | 映画(ま行)


◼️「マイ・ブロークン・マリコ」(2022年・日本)

監督=タナダユキ
主演=永野芽郁 奈緒 窪田正孝

トモヨとマリコの関係を何と呼んだらいいのだろう。親友?でも「シイちゃんに彼氏ができたら死ぬ」とかなかなかめんどくさい女子のマリコ。依存?「あたしには正直あんたしかいなかった」とトモヨ。共依存?。恋とも違う女子の連帯関係は、男にはうまく表現できない。だって男って、相手と同じところに属しているか、何かを共有してる間柄でもない限り関係が長続きしにくい生き物。しかもなかなか腹を割れない。男の方がめんどくさいのかもな。ともあれトモヨとマリコを単なる幼なじみとくくるのでは足りないシスターフッド。幼い頃からお互いの苦しみを知っている関係。

それなのにマリコが突然の飛び降り自殺。しかもトモヨには何も遺さずに。マリコに虐待を繰り返していた親から遺骨を奪ったトモヨは、二人で行こうと言っていた海へと向かう。

ガサツだけどタフなトモヨのキャラクターが実にいい。マリコからの手紙が入った缶、履き古してカビ臭いDr.Martin、マリコとツーショットの写真。さらに窪田正孝演ずる釣り人が「名乗る程の者じゃございません」と言いながら振り向くと思いっきり名前書いてるクーラーボックスとか、キャラクターを表現する小道具の使い方が素敵だ。明るい笑顔のイメージがある奈緒演ずるマリコが、壊れていく様子が見ていて痛い。お前が悪いと虐待されて、それを真剣に怒ってくれる友達。喫茶店でその友達に感覚がおかしいと言われて、表情を変えずに「ブッ壊れてるんだよ」という場面の説得力。

原作コミックは未読なので比べることはできないけれど、とにかく台詞の一つ一つがじわじわ胸にくる。特に心に残るのは窪田正孝が駅のホームで言うひと言。
「死んだ人に会いたいと思うなら、自分が生きなきゃいけないんじゃないですかね」
これは心にしみた。誰かがいなくなって、泣きじゃくって生きるだの死ぬだの大騒ぎしたけど、それでも日常はやってくる。群衆に紛れていくシーンも素敵だ。タナダユキ監督の「ふがいない僕は…」もそうだったけど、ボソッとつぶやくひと言にいろんな気持ちが感じられて、映画が終わって噛み締めてしまう。「シイノトモヨ、恥ずかしながら帰って参りました」との帰還兵のような台詞が心に響いた。そして無言のラストシーン。永野芽郁の息づかいとトモヨの気持ち。エンドクレジットで流れる「生きのばし」の歌詞が心に響いた。

これで85分。なんて素晴らしい。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする