Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

Greatest Albums(その41) Adventures/The Square

2014-01-01 | 僕のGreatest Albums
 今回はザ・スクエアの「アドベンチャーズ」。スクエアと言えば伊東たけしが演奏していたリリコン。後にウインドシンセと形を変えて市民権を得るけども、あの艶やかな音を真似しようとコピーバンドやってた人々はいろいろ苦労したことだろう。キーボード担当だった僕ももちろんその一人。先輩はDX-7で似た音を作ろうと苦心していて、ステージではショルダーキーボード(MIDIコントローラー)で演奏していた。僕はというと、実はモノフォニックのシンセにエフェクターかけて使っていた。機種はヤマハのCS-01。当時1万円程度で購入できたものだけど、これを肩からさげて弾くのがその後の僕のスタイルとなった。これは、ブレスコントローラーというオプションがあって、息を吹く強さで音量やアタックをコントロールできた。みんなはリリコンをどう再現していたのだろう?。

 僕はフュージョンというジャンルはちょいと苦手だった。それはインストロメンタルだからではなく、技巧を駆使した演奏をしているのだから気軽に聴くことはできないから。演奏者に申し訳ないのだ。高校時代の僕はそう思っていた。その演奏の技巧をきちんと観賞できないといけないような気がしていたのだ。クラシックのソリストのテクニックがすごいことを理解しなければ・・・というのと同じ感覚。だから、当時僕はカシオペアが大の苦手であった。すごいし、かっこいいのもわかるけど、僕はそれを理解できるハイソな鑑賞者ではない・・・みたいな。だから周りの友達が聴いていたカシオペアも高中正義も苦手だったなぁ。

 そんな僕が突然フュージョンというジャンルに足を踏み込んだのはザ・スクエアから。曲はもちろん、サントリーのCFで使われた「All About You」。そしてそれを収録したアルバム「Adventures」。スクエアは技巧派フュージョンというよりも、ポップなインスト曲としての印象が強いので、とっても僕には入りやすかった。大学で音楽系サークルに所属してからは、友達といろいろコピーした。

 他のアルバムには、後に代表曲となる「truth」を始めとしていい曲はたくさんある。スケール感のあるイントロとポップなメロディーが印象的な「Omens Of Love」も大好きだった。実はこの曲、小泉今日子のアルバムにヴォーカル入りヴァージョンが収録されている。僕は選曲会議に出したけど「アイドルなんてね」と却下されたっけ。



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ダイハード4.0

2014-01-01 | 映画(た行)

■「ダイ・ハード4.0/Live Free Or Die Hard」(2007年・アメリカ)

監督=レン・ワイズマン
主演=ブルース・ウィリス ジャスティン・ロング マギー・Q ティモシー・オリファント

 思えば第1作は大傑作だった。高所恐怖症気味の僕は、映画館の椅子にへばりついて観ていたものさ。「2」は往年の航空機パニック映画を思わせてなかなかの出来だったし、「3」はマザーグースを用いた脚本の巧さに唸った。ジョン・マクティアナンとレニー・ハーリン、監督もよかったもんね。・・・そして今作。面白かったし、払った料金分はきっちり楽しめたと思うのだ。でもね・・・なーんか煮え切らぬものを感じてしまう。それはこのシリーズをリアルタイムで見続けているし、ハリウッド大作を嫌う癖に不思議とこのシリーズが好きなためだろう。

 とんでもない事件に巻き込まれてしまうジョン・マクレーン刑事をとにかく”運が悪いヤツ”としていた「1」と「2」。彼は運も悪いかもしれないが、嫁サンが窮地に立っているという、戦う必然性があった。「3」は犯人からの名指しだから逃げも隠れもできない。今回も事件に巻き込まれてしまった運のなさはあるけれど、ジョン・マクレーンである必要性を感じない。FBIのサイバー犯罪捜査官がエリート意識で、ニューヨーク市警の薄汚いベテラン刑事を見下すようなこともない。もし主人公がベン・アフレックで、同じ脚本を「ジャック・ライアンもの」のシリーズとして撮られていても違和感がなかったかもしれない。それに嫁サン思いの人間味あるマクレーン刑事を、僕が期待していたこともあるか・・。八面六臂の大活躍をする主人公も、冗談ばっかり言ってる人間味あるただのおっちゃん。そこが魅力だった。

 この映画が製作されるまでの12年間に、アメリカは同時多発テロを、そしてイラク戦争を経験した。国家を守るために、と多くの人々が戦地に赴き、戦い傷ついた。劇中マクレーン刑事は英雄について語る。本当の英雄はカッコいいもんじゃない。他人に誇れる暮らしもしていない。真の英雄は自分のできることを懸命に貫いた名もなき人々だ。最終的に国を救うこととなるアクション映画としてのスケール感が、マクレーン刑事の人間的魅力をどこか損ねているように思えてならない。でもこの映画のド派手な楽しさは、きっと世知辛い日常を忘れさせてくれる。それは確かだ。「M:i:lll」にも出演していたマギーQも、実にカッコいい悪役を演じてくれる。CCRの「Fortunate Son」をガンガン流すのもアナログ人間であるマクレーン刑事を印象づけるナイスな選曲。



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突然炎のごとく

2014-01-01 | 映画(た行)

■「突然炎のごとく/Jules Et Jim」(1961年・フランス)

監督=フランソワ・トリュフォー
主演=ジャンヌ・モロー オスカー・ウェルナー アンリ・セール

 トリュフォーの代表作として名高い映画だが、実は今回初めて観た。一人の男性を愛せない奔放なカトリーヌに魅せられた二人の文学青年。女って男には不可解な生き物だ。でもそれ故に女に惹かれずにはいられない。60年代の映画だから、色恋のドロドロした部分を詳細に描くことはもちろんないし、それにトリュフォーはそういう部分をサラッと描いちゃう人。セックスにまつわる場面はすべてナレーションで表現している。これをハリウッドがリメイクするともっと直接的な映画になるんだろうな。「暗くなるまでこの恋を」→「ポワゾン」の例もあるし。でもこの映画に限ってはそういうリメイクもアリなのかな、とも思う。

 文学青年二人が主人公でお互いがウンチクを語り合ったりするだけに、全体を通してすごく”文系男子向け映画”の雰囲気がする。彼ら3人に娘という同居生活は、村の人からは白い目で見られれているという描写も出てくる。世間的に見れば理解しがたい、奔放な女をめぐるドロドロ恋愛劇を、トリュフォーはひたすら詩的な雰囲気で包み込み、普遍的な”愛の映画”の外見にしようと試みているのだ。確かにお互いがそれぞれの愛し方を貫こうとした、そんな映画にも見える。文系男子であれば、おそらくその雰囲気だけでオッケーとしちゃう方もあることだろう。僕も観る前はフランス映画のお家芸的三角関係ドラマを期待していた。

 でもこの映画の狙いはそこではない。女性は感情で動く動物、男性は欲で動く動物と言われるが、この映画の主題はまさにそこなのだ。奔放に男性の間を飛び回るカトリーヌは、美しい蝶のよう。その蝶に魅せられ人生をかき乱される男達にとって、彼女はまさに運命の女。ジャンヌ・モローが劇中歌う ♪つむじ風 はカトリーヌの人物像をうまく表現している。ボーボワールを引用して女性を悪く言うジュールに腹を立て、川に飛び込むカトリーヌ。もはや自分を愛の対象としなくなったジムを道連れにするラスト。・・・彼女の行動を本当に理解できるだろうか?。おそらく男である以上無理だと思う。女は男にとってやはり不可解な生き物。その”わからなさ”は、邦題が上手に表現してくれていると思うのだが。二つの遺灰を安置して教会を後にするジュールの姿。妙にコミカルな音楽がかぶさるラストシーンが僕は気に入らない。「そしてジュールは彼女から解放されましたとさ」とでも言っているようだったから。これからが彼は大変なのだ。娘と共に生きるジュールは、この先ずっとカトリーヌの分身をそこに見ることになるのだから。

 ★

この文章を書いたのは2004年。最近はこの頃と違って、ヨーロッパ映画にどっぷりと浸る機会や時間がなくって、この手の映画欠乏症気味だ。トリュフォー監督作はあれこれ観たけど「突然炎のごとく」はかなり好きな作品。先日「ミッドナイト・イン・パリ」を観て、”文系男子向け?”などと綴ったが、先にこの映画の感想で同じような表現を使ってたのを忘れてた。




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すてきな片思い

2014-01-01 | 映画(さ行)



■「すてきな片想い/Sixteen Candles」(1984年・アメリカ)

監督=ジョン・ヒューズ
主演=モリー・リングウォルド アンソニー・マイケル・ホール マイケル・シェフリング

 ジョン・ヒューズの監督デビュー作。今改めて観て思うのは、80年代の空気を懐かしく感じても、話自体を古いとは感じない、ということ。それは主人公たちが抱える思いは、いつの時代にもその年代なら共感できるものであるからだ。私は16歳になったのに全然大人じゃないだの、家族が自分の誕生日に気づいてくれないだの、男の子たちは性についてばかり関心が高かったり。僕は誠に不勉強なことにジョン・ヒューズの”学園もの”をあまり観ていない。「プリティ・イン・ピンク」くらいだろう。でも”学園ものはこの映画から始まった”という世間の評価は納得。モリー・リングウォルド、改めて観るとかわいいよねぇ。弟役は「クレイマー・クレイマー」の名子役、ジャスティン・ヘンリー!。まぁなんとも小憎らしいガキに成長しちゃってさぁ!。ジョン・キューザックもアンソニー・マイケル・ホールの友達役で出演してます。

 それにしてもアメリカの高校生活ってすごく楽しくお気楽に見える。体育館でのパーティ(チークタイムはスパンダー・バレエの ♪True だもんね)だの、親のいぬ間のどんちゃん騒ぎだの。ティーンエンジャーの頃に観ると、ますますそう思うだろうな。もちろん、そういう面からしか描かれていないから当然なんんだけど。「性意識調査」なる紙切れにエッチしたい相手の名前書くと願いが通ずる、とかすごいよね(笑)。絶対真似できないっすよ。

 ★

その年代に観ておくべき映画って必ずある。大人目線になるから共感できなくなっちゃうからだ。80年代の青春映画を代表するジョン・ヒューズ監督の作品で言えば、「フェリスはある朝突然に」は、最近観て特にそう思った。だがそれ以外のヒューズ関連作品は、今観ても色あせないと心底思える。そして、あの時代だからこそ撮れた映画だとも思うのだ。



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戦火の馬

2014-01-01 | 映画(さ行)

■「戦火の馬/War Horse」(2011年・アメリカ)

監督=スティーブン・スピルバーグ
主演=ジェレミー・アーヴァイン エミリー・ワトソン デヴィッド・シュリース ピーター・ミュラン

 スピルバーグ監督の新作は、軍用馬として徴用された一頭の馬をめぐる人間ドラマ。児童文学の映画化だそうで、正直なところ観る前は、”ただでさえ見せ方が上手いスピルバーグが動物ものを撮るなんてズルい。どうせ泣かせに決まってる。”思っていた。ところが・・・飽きさせることのない2時間半、まるで良質なクラシック映画を観ているような感覚になった。素直に感動できるし、「やっぱりね」って予定調和的な部分も素直に受け入れられる。映画が根底から忘れてはいけないのはヒューマニズムだと常々思っているが、それを思い起こさせてくれる。一頭の馬が関わった人々の人間模様、どのエピソードも温かい。

 イギリスの田舎で生まれた子馬は、貧農の家に買いとられ”ジョーイ”と名付けられる。農耕にはおよそ向いていない馬種だったが息子のアルバートと共に開墾を成し遂げ、家族を立ち直らせることになる。第一次世界大戦が勃発。ジョーイは軍馬として戦地へ連れて行かれる。アルバートの気持ちを汲んだ英国将校の愛馬となったジョーイだが、将校は戦死。馬の扱いになれたドイツの若い兵隊の手を経て、今度はフランスの片田舎に住む老人と孫娘に飼われることになる。しかしそこにもドイツ軍は迫り、さらなる苛酷な運命がジョーイを待っていた。一方アルバートも戦地でジョーイに再会できることを望みつつ最前線にやってくる・・・。

 ぎくしゃくしていた人間関係が馬との出会いによって解きほぐされていく様子が、それぞれのエピソードに描かれる。アルバートの家では、農耕馬に向かないジョーイを父親が買ってきたことからトラブルが起こる。しかしそれを契機に少年だったアルバートは困難に立ち向かう根性を身につけるし、父親がかつて戦場で功績のあった人だと知る。それを誇ろうとしない父親の気持ちも合わせて知ることになる。フランスの老人も孫娘に戦中に生きる厳しさを語ることになるし、隠していた鞍を出してやったり、それまで頑なだった心が和らいでいく。ドイツの少年兵は弟を守りたいという気持ちを思い起こす。戦場のど真ん中で傷ついたジョーイを英独両軍の兵士が協力して助ける場面は、ユーモラスだが実に感動的だ。人が心を開くきっかけには様々なものがある。ジョーイがアルバートの家で学んだことが、戦地で次々に生かされるところも素敵だ。

 児童文学である原作は馬の視点で描かれ、馬の台詞すらあるそうだ。確かに今のハリウッドなら同じ題材で馬をしゃべらせる映画を製作することもできたろう。だが、それをやるとまったく違うものになってしまう。ものを言わぬ馬がとる行動のひとつひとつが僕らを感動させてくれる。スピルバーグは原作のように馬にしゃべらせない代わりに、馬の視線を感じさせる編集や撮影を巧みにやっている。風車小屋で馬の瞳に少女が映る場面は見事としか言いようがない。結局、観る前に思った通りにスピルバーグの上手さに酔わされた映画だった。だがそれは技術やエンターテイメントとして成り立っているだけじゃない。人間として忘れてはならない希望や敬意という普遍的なテーマをきちんと謳いあげている。伝統的なハリウッド映画の良心が、今も息づいていることを感じさせてくれる2時間半。これを古くさいと感ずる人もいるかもしれないけど、こんな時代だから忘れてはいけない語るべき物語だと思うのだ。



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ラブソングができるまで

2014-01-01 | 映画(ら行)

監督=マーク・ローレンス
主演=ヒュー・グラント ドリュー・バリモア ブラッド・ギャレット

 新作映画の情報を雑誌で見ていて、これは観なければ!と思った映画。いや、ほんとに。ヒュー・グラントが80年代のポップスタアに扮する、作詞作曲のコンビでロマコメ・・・設定としてはまさに僕の望むもの。有名人と一般人の恋物語というと「ノッティングヒルの恋人」を思い浮かべるが、今回のヒュー・グラントは有名人側で逆の立場。ドリュー・バリモアも、80年代ものを歌う男性と恋におちる女の子役・・・とくれば「ウェディング・シンガー」。二人は初共演なのだが、二人の映画を見続けてきたファンには、期待する二人がきちんと観られる映画として満足度は高いことだろう。

 80年代洋楽ファンには懐かしい名前が次々出てくる。「今日のゲストはフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド。だから”リラックス”して。」てな具合に。主人公が在籍したアイドルバンドのPVが流れる冒頭に笑いを抑えられない僕。デュランデュランとワム!を足したようなバンド・・・。ローランドのD-50とヤマハDX-7のデジタルシンセ2段重ねかぁ・・・86年のヒット曲ということだが、D-50の発売は87年じゃないのか?・・・と一人ツッコミを入れてみたり。ディティールが楽しめるのが嬉しいね。

 作詞作曲のコンビが恋人になる・・・。音楽によって結ばれた絆はとても深いものになると、僕は常々思っているだけに、このテーマには共感できる。そういえば、高校時代に好きな女の子に書いてもらった詞に、自分で曲をつけたもんだ。作詞/●●チャン作曲/takって名前が並ぶだけで嬉しかったっけ(恥)。二人がデモテープの歌を吹き込むところが好き。それにステージの脇で抱き合うクライマックスも。二人がスポットライトの中で抱き合わないでよかった、と僕は思った。幸せって、こんなふうに目立たないところで花開くものなんだもの。そう、楽譜の上に名前が並ぶように。



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ラスト、コーション

2014-01-01 | 映画(ら行)


■「ラスト、コーション/Lust, Caution(色・戒)」(2007年・中国=アメリカ)

監督=アン・リー
主演=トニー・レオン タン・ウェイ ワン・リーホン ジョアン・チェン

 「ラスト・・・」とというタイトルと、激しいベッドシーンがあることから、ベルトリッチの”あの映画”を連想する人が多いのか、やたらとそっちばかりの話題が先行している本作。されど、この映画は決してそんな色モノではない。重厚な人間ドラマと緻密に作り込まれた映像と脚本は、むしろあれだけの性愛場面を含むのにむしろ気品さえ感じる。僕はこの映画にまったく飽きることはなかったし、ラストまでハラハラしながら、緊張しっぱなしだった。

 日本占領下の中国で、日本軍に協力するイー(トニー・レオン)を探るために近づくマイ夫人に扮するヒロイン(タン・ウェイ)。そして彼女をそこに送り込んだ男との見えない三角関係・・・。重い話であるし、ラストも救いがある訳ではない。でも、そこにこめられた登場人物一人一人の思いを考えると実に切なくなってしまう。国のため、自分たち民族のためにと時代の流れに身を投じる若者たち、その為に処女も失ってしまうヒロイン。彼らは傷つくけれども、それも戦争という流れに押し流される哀しみ。一方、日本軍に協力するとされるイーも、誰も信用できない孤独と拷問と死に接するだけの日々。きっと人間性をかろうじて保っているのだろう。そこに現れたマイ夫人に心を傾けるのも無理はない。荒々しく、激しいセックス(時にアクロバティックにさえ思えたが)にふけるのも、彼にとっては非現実的な日常を忘れ、人と人のふれあいを取り戻せる時間。ベッドシーンは、ヒロインにとっては「イーに疑われているのではないか」と常に不安になる心理戦でもあり、イーにとっては悲しき生への執着でもある。こんな激しくて悲しい性愛場面、僕はこれまでみたことがない。

 それでも心を通わせていく二人。日本料理店で当時の中国の流行歌を歌って踊るタン・ウェイは本当に美しい。二人が同じ民族として、男と女としての感情がひとつになる。・・・そしてラストの展開。小さく告げた「逃げて」の一言。誰もいなくなった部屋に一人座り込み、時計の音が鳴り響くラストシーンは喪失感に満ちている。胸がしめつけられるようだ。

 劇中映画好きなヒロインが行った映画館に、ヒッチコックの「断崖」のポスターが見える。主人公3人のシチュエーション・・・そうか、「ラスト、コーション」はヒッチコックの「汚名」をケイリー・グラントぬきで撮った映画なんだ。「汚名」は僕の大好きな映画。小道具をサスペンスの材料に上手に使っている傑作だ。でも初めて観た頃(20歳くらいだったかな)、疑問だったことがある。それはイングリット・バーグマンが仇であるクロード・レインズと、内情を探る為とはいえ、結婚までしてしまうところ。彼女にそこまでの辛い使命を与えたくせにクール(にしかみえない)ケイリー・グラントの態度。そしてレインズとベッドも共にしているはずのバーグマン。そこには葛藤があったはずだし、そこまで身体を犠牲にするなんて・・・と描かれもしない部分に僕はモヤモヤしたものだ。「ラスト、コーション」にはその答えがあったのだ。



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戦い続ける男達へ

2014-01-01 | 音楽
NHK金曜時代劇で本日最終回だった「柳生十兵衛七番勝負」。息詰まるラストでしたねぇ!。スプリットスクリーンを使ったラストの対決場面!久々にTVの時代劇に引き込まれました。先週は千葉真一が宮本武蔵を演ずるエピソードだったのですが、これを見逃したのは本当に悔やまれる。再放送の予定もないとか。くーーーっ!十兵衛といえば千葉真一だけに、新旧の対決見たかった!NHK殿!是非再放送をお願いします。受信料ちゃんと払ってるから!。
↓公式ページはこちら
柳生十兵衛七番勝負

このドラマのエンディングは、ジョー山中作の ♪戦い続ける男達へ 。松田優作の歌が何とも言えずいい味を出している。80年にリリースされた松田優作のアルバム「Touch」のラストを飾る曲だ。


僕は、このドラマで聴くまで優作のヴァージョンは知らなかったのだけど、ジョー山中が歌ったものは聴いたことがある。若松孝二監督の映画「キスより簡単」のエンディングだ。早瀬優香子(この人の歌、好きでした)演ずる奔放な女の子の恋模様を描いた映画で、主役はその女の子。実は父親?と思われる男性役で原田芳雄が出てくるのだけれど、映画の後半はすっかり主役になっているのだ。これがひたすらかっこいい!ここにジョー山中の歌がかぶさってくるところが素晴らしいのね。それまで早瀬優香子の裸に見とれていた自分が、映画の最後には原田芳雄の渋さに涙している。不思議な映画だった。あぁ久々にまた観たいな。時代劇から若松孝二監督作に話題が飛ぶなんて・・・節操のない私です。
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