Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

超訳百人一首 うた恋い

2021-12-06 | テレビ・アニメ






言葉を大切にする作品が好きだ。「うた恋」は百人一首のお話。古(いにしえ)の言葉を今どき現代人の共感を呼ぶように作るというのは、なかなか難しい。障子や御簾を挟んで、三十一文字で想いを伝え合うなんて、メールやSNS慣れした世代からすると焦ったくてしかたないかもしれない。

でも限られた言葉数で、込められた想いを読み取るって実にスリリング。しかも家や身分という不自由さの中で、恋する気持ちを密かに伝えるのだから、バレたら社会的な制裁を喰らうことだってありうる。道ならぬ色恋沙汰がバッシングされる昨今。確かに良くないことではあるけれど、節操がない人ばかりじゃなくて、真剣な想いがある人もいる。和歌で詠み込まれた気持ちに触れるのは、きっと学びになる。昔から思ってたけど、恋の和歌を授業で教える先生って、どう伝えるかって気をつかってたんだろうな。

「超訳百人一首 うた恋。」のアニメ版は、そうした百人一首の世界をわかりやすく届けてくれる。藤原定家を語り部に、名だたる人物の歌の裏にあるドラマが面白い。

平安時代の女性の生き方を描いた紫式部の回。今の時代にも通ずる生きにくさ。身分違いの恋に身を焦がす藤原道雅の回。二人を隔てるいろんな事情は、現代なら解決できるものでもない。定家と式子内親王のエピソードが特に好き。三十一文字の自由と、秘めなければならない苦しみが胸にグッとくる。

OP曲がロック、ED曲がラップというのに、放送当時の僕は違和感を感じていた。けれど、言葉を大事にする仕事であるのはジャンルが違えども同じ。







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花芯

2021-12-05 | 映画(か行)





◼️「花芯」(2016年・日本)

監督=安藤尋
主演=村川絵梨 林遣都 毬谷友子 安藤政信

(映画評とは言えないかも)

男女の関係でひとつふたつステップが進むと、感情だけでなく身体の問題が必ずついてまわる。それはどんなに言葉を尽くしたところでも、避けては通れないものだ。この映画でも、はぐらかすような相手の発言を、「言葉を探そうとしている」とヒロインは責める。綺麗ごとにもできないし、美化することもできない。そこにあるのは、一緒にいることの嬉しさと心地よさ。感覚、欲望の問題。

「花芯」は、男と女の間にある、惹かれあった時の"どうしようもない"感じが、きちんと言葉で表現されている映画だ。村川絵梨の熱演ばかりがクローズアップされがちだけど、けっこう台詞が心に残る。この"どうしようもない"感覚を映像で示す作品ならこの世には山ほどある。残念ながらそのほとんどは目の前で展開される行為にしか、僕らは目が届かないのが現実。なぜならそこにある気持ちは、言葉で表現しようがないからだ。そこに理屈なんてない。

「花芯」も同様に映像表現が優れているけれど、他の映画以上に言葉が残る。
「君という女は体中のホックが外れている感じだ。」
例えが絶妙。推敲を重ねながら選び抜かれた言葉に違いない。原作はその内容から瀬戸内寂聴が文壇を一時期追われたという小説。未読だが、子宮小説と呼ばれた原作には他にどんな言葉が並べられているんだろう。

昔の話。知り合いの校長先生に
「映画を観る人は恋愛ができる人です。takさんもその1人。」
と言われたことがある。先生、ちっともお褒めに預かるような遍歴もございません。僕ら映画ファンは、スクリーンを通じて人様の恋愛をしこたま観ている。確かに映画で恋愛について学ぶことはたくさんあるだろうけれど、それはともすれば両極端なもの。恋愛の成功と失敗。秘めることの意義と口にすることの意義の狭間のジレンマ。思いをぶつけることの尊さと相手を失う悲しみ。失いたくない苦しみ。言えずのアイ・ラブ・ユー。そして欲望で語られる領域を超えた先にあるもの。映画で恋愛上手になんて決してなれない。もしかして、観すぎているのかなw。

でも、恋愛をぬきにしても、いろんな場面でその人の気持ちを想像できるのは、映画で学べて日々に役立つことの一つだと思うのです。察する力がつくのではないかと。

「花芯」で描かれる時代の変わり目の男と女。登場人物に共感できるかどうかは別にして、映画としてはけっこう好きかも。ひたすら無言で行為を見せつけられた、同じ安藤尋監督の「海を感じる時」よりも格段にいい。村川絵梨の芯のあるヒロイン像、頼りない若造役がいつまでも上手な林遣都、怪しげな毬谷友子、クールな着こなしの安藤政信。役者も上手い。





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フランス軍中尉の女

2021-12-04 | 映画(は行)

◾️「フランス軍中尉の女/The French Lieutenant's Woman」(1981年・イギリス)

監督=カレル・ライス
主演=メリル・ストリープ ジェレミー・アイアンズ リンジー・バクスター ピーター・ヴォーン

初めて異性と一緒に観た映画って何ですか?僕はこの「フランス軍中尉の女」なのです。なんてオマセな!。「クレイマー、クレイマー」を観た中坊がメリル・ストリープの映画もっと観たいなあ…と思ってたときに地元映画館にこれが。学校で週末映画観るという話題になって、「アタシも一緒に行っていい?」と切り出されてOKしちゃったのだ。
「tak君って、難しい映画観るのね。でも面白かったわ。」

確かに難しいものに挑んでしまった。ビクトリア朝時代の恋物語の映画撮影現場が舞台で、撮っている映画のストーリーと撮影現場のストーリーが同時進行する二重構造。主演二人が物語の主人公とそれを演じる俳優を二役こなす。劇中の映画は、村に流れ着いたフランス軍中尉の愛人だったと世間から疎まれる女性と、彼女を愛し始める考古学者の恋物語。そして、その主演女優と男優は不倫関係にある…。いやいや、映画鑑賞経験の浅い中坊が観るには難解だし、ましてや男女の機微なんて理解しようもない年齢。よくぞ二人とも最後までこの映画に喰らいついたと思う。今となっては。

僕ら世代はメリル・ストリープをデビューから追いかけられた世代。「クレイマー、クレイマー」や「ディア・ハンター」で初めて観て、「ソフィーの選択」「恋におちて」「愛と哀しみの果て」…とよい時期を観て、その後、深みのある役柄に挑み続ける彼女をスクリーンで観ている世代。だから「マンマ・ミーア」のハジけっぷりに感激してしまう。それぞれの作品に、その時期の自分が重なる。そういう目でフィルモグラフィを改めて眺めると、なんか映画以外のことも懐かしく感じられたり。

さて。その女の子とはその後、大混雑の映画館で「E.T.」を観たし、ウイリアム・カットのファンだったので「ビッグ・ウェンズデー」のリバイバルも一緒に行った。今はどうしているのやら。

今回は映画の感想とは程遠い内容であしからずww




フランス軍中尉の女 [DVD]
メリル・ストリープ,マイク…ジェレミー・アイアンズ,リンジ―・バクスター
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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マーメイド・イン・パリ

2021-12-01 | 映画(ま行)





◼️「マーメイド・イン・パリ/Une sirene a Paris」(2020年・フランス)

監督=マチアス・マルジウ
主演=ニコラ・デュヴォシェル マリリン・リマ ロッシ・デ・パルマ ロマーヌ・ボーランジェ

僕ら世代は、人魚と恋に落ちる男性のお話というと間違いなく、トム・ハンクスとダリル・ハンナのイメージが脳内のどこからか呼び出される。「スプラッシュ」大好きだったな。

さて本題。
純粋にファンタジーだった「スプラッシュ」と比べると、「マーメイド・イン・パリ」には陰がある。そもそもギリシャ神話のセイレーンに由来する人魚は、人を惑わし、船員たちを海に引きずり込み、人を喰らう存在。本作のヒロイン人魚ルラもまさにそれで、自分の歌声を聴いた人間の男たちは恋をして心臓が破裂して死ぬと言う。映画冒頭からセーヌ川河畔に近づいた男たちが次々と姿を消していく。新聞沙汰になって、社会不安をも引き起こす。甲殻類をバリバリ食い荒らすダリル・ハンナとは違うのだ。

「マーメイド・イン・パリ」が面白いのは、ラブストーリーなのだが、主人公ガスパールは人魚との恋になかなか走らない。彼は過去の恋愛で打ちひしがれているから、ハートはとっくにブレイクしちゃってる(80年代の片岡義男みたいなフレーズだな💧)。だから人魚の歌声を聴いても効果がないのだ。それに驚くルラだが、次第にガスパールの優しさに心を許していくし、ルラとの出会いでガスパールも恋する心を取り戻していく。しかしルラは二日間しか海を離れては生きられない。

そして人魚ルラ歌を聴いたばっかりに死んでしまった医師には、女医の恋人ミレナがいた。死の理由に近づいた彼女がジワジワとルラとガスパールに近づいていくのも、この映画にハラハラするポイント。二人の恋の行方と追跡劇が並行する構成が面白い。

個人的にちょっとこの映画に気持ちが乗らないのが、タイムリミットが迫っているにも関わらず、ルラをなかなか海に戻さないガスパールのじれったさ。ミュージカルめいた歌なんぞ聴かせてる場合じゃないやろ。しかし、アニメーションのオープニングから本編に導く演出や、ガスパールが引き継いだ店の記録である飛び出す絵本、幻想的な水族館シーンなどファンタジックな仕掛けが魅力的で全体的には好印象。二人で録音ブースに入って、二人の歌を吹き込む場面が好き。

大好きなフランス女優の一人、ロマーヌ・ボーランジェが女医ミレナを演じる。若い頃と違ってちょっと貫禄もついているけれど、相変わらずお美しい。




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