Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ハメット

2024-12-10 | 映画(は行)


◼️「ハメット/Hammett」(1982年・アメリカ)

監督=ヴィム・ヴェンダース
主演=フレデリック・フォレスト マリル・ヘナー ピーター・ボイル

「マルタの鷹」で知られるミステリー作家ダシール・ハメットを主人公にした小説を、フランシス・フォード・コッポラの製作総指揮の下、ヴィム・ヴェンダースが監督を務めたアメリカ資本の作品。コッポラはプロデューサーとして才能ある監督と組んだ仕事がちらほらある。黒澤明の「影武者」、アグニェシカ・ホランドの「秘密の花園」、初期のジョージ・ルーカス作品もコッポラが製作者として名を連ねている。

ヴェンダースをハリウッドに招いて撮った「ハメット」は、正直言うと居心地が悪い映画だ。探偵事務所を辞めて執筆に力を注ぎ込み始めたハメットが、友人の頼みで中国人女性を探すことになる。そこから事件に巻き込まれるハードボイルドな作風の作品。探偵小説は、事件の経緯から解決までを鮮やかに観客に示したいのが常道。僕はこの映画を観て、コッポラはストーリーテリングに力を注ぎたいと思っているが、一方ヴェンダースは登場人物それぞれのキャラクターを掘り下げたいのでは、と思った。どっちつかずな印象を受けるのだ。

作家自身が自分が書く小説のような事件に巻き込まれるお話。都会の闇の迷宮に巻き込まれるような、いい雰囲気がある。だけど引き込まれる魅力かと言うとちょっと違う。いろんな感想を読んでも、スタッフやキャストの豪華さに触れるものはあっても、映画自体を讃えるものは少ない。きっと何か物足りなさがあるのだ。ヴェンダース色を期待しても、コッポラ色を期待しても、どちらも薄味に感じる。

一説にはコッポラが一部撮っているとも言われるし、口を出しすぎてヴェンダースと対立したとも聞く。普段の作風とはちと違うジャジーなジョン・バリーの音楽は好みだったけど、本編はちょっと印象薄。






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ネットワーク

2024-12-08 | 映画(な行)


◼️「ネットワーク/Network」(1976年・アメリカ)

監督=シドニー・ルメット
主演=ウィリアム・ホールデン フェイ・ダナウェイ ピーター・フィンチ ロバート・デュバル

シドニー・ルメット監督と脚本のパディ・チャイエフスキーが、テレビ業界のドス黒い裏側を描いた作品。観ようによってはブラックコメディなんだろうが、救いのなさに全く笑えない。むしろ怖い。多くの感想で述べられているように、現在の世相に通じる予見的な怖さがある。メディアに溺れる人々と業界を皮肉った内容だが、ここで描かれていることは紛れもなく今なのだ。

解雇を言い渡されてヤケクソになったニュースキャスター、ハワード・ビールが「番組内で自殺する」と宣言したことから始まる大騒動。彼を預言者に祭り上げ、視聴率稼ぎに利用するテレビ局の人々の醜さ。大衆にウケるネタが欲しいだけ。

そして社会に対する怒りをぶちまけるハワードは大人気に。「私は怒っている!と政府に声をあげよう」との呼びかけに、次々と視聴者が窓を開けてハワードの言葉を叫ぶ場面はゾッとした。テレビで流れていることこそ真実だと信じてしまう人々。それはネットで流れてきた情報を鵜呑みにして拡散する現代人の姿だ。僕らだって情報を吟味する冷静さを失えば似たようなものかもしれない。テレビは視聴率を、ネット社会は反響の数を競う。映画で描かれたよりも、もっと数字がものを言う時代だ。テレビ局に苦情が殺到するのも、今で言う炎上で注目を集めているようなものだ。

人間タガが外れると何も見えなくなる。数字に狂信的になっている人々は、視聴率の割合が利益に換算され、ベッドでも数字を上げる策を口にし続ける。ハワードの友人でもある報道局のマックスは、新鋭プロデューサーのグロリアに言い寄られて関係を持ってしまう。いざ妻と向き合う場面でも歯切れの悪いことしか言えない。そんな彼がグロリアの元を去るクライマックス。自分にはまだ人の心があると告げる台詞が印象深い。

フェイ・ダナウェイが自信満々の表情で上司ロバート・デュバルにアイディアを説く姿は、確かにカッコいい。でもそれがだんだん狂気の渦となって周囲を巻き込んでいくのに怖くなる。「中年男と恋をする、と占い師に言われたの♡」とウィリアム・ホールデンに迫る場面。そんなこと言われたら中高年男は揺さぶられるよな。

ともあれ、シドニー・ルメットらしい社会派テイストと業界を皮肉った作風が絡んで面白い映画だった。ジャンル分けしづらい作品だが、それは他の作品では味わえない独自の魅力がある証でもある。




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小市民シリーズ 第1期

2024-12-07 | テレビ・アニメ



うちの長女が「氷菓」のアニメと原作にどハマり(父親の影響💧)した後、米澤穂信をもっと読みたい!と手を出したのが「春期限定いちごタルト事件」。アニメ「小市民」シリーズはそのアニメ化である。これにこの父娘が飛びつかないはずがない。第1シーズン全10話完走。

学園内で名探偵ぶりを発揮したことで過去に苦い経験をした主人公、小鳩常吾朗と小山内ゆき。二人は物事に深く関わらない小市民になろうと心がけるのだが、次々と大小様々な事件に巻き込まれていく。ミステリー、青春、恋愛とは違う変則カップル、スイーツ好き、コメディ。様々な要素を混ぜ合わせて、不思議な雰囲気で包んで焼き上げたのが本作。

毎回異なるテイストのエピソードが示されるのだが、数回を除いてとにかく見終わって気持ちを悶々とさせる。新聞部の回とシャルロットの回を除いて、歯切れが悪い。と言うよりも、視聴者がスカッとする感情から敢えて遠回りをしているようだ。

🤨「原作読んだんだよな?」
🧑🏻「読んだ。なんか怖かったのは覚えてる」

OP曲「スイートメモリー」の爽やかなイメージとは全く違う、意味深で突き放されたような終わり方が続く。突然心象風景に飛んだり、実写の風景とアニメが重なる演出は面白い。そんな全体的な雰囲気が好きだ。
「えー?」
「それで?」
「なんなん」
「んで、どうしろと?」
と見終わって父と娘は語り始めるもんだから、ED曲なんかどうでもよくなるw

これを見ながら気づいたこと。もしかして僕はベレー帽女子に弱いのではないだろか🤔
有馬かな「推しの子」♡
加藤恵「冴えない彼女の育て方」♡♡
2人にキュンキュンきて、本作の小山内ゆきの白ベレーw。

あの赤い瞳を最初はキュートだと思っていたけれど、回が進むにつれて怖くなってきた。第10話新たなお相手をスイーツに誘うゆき、新たなお相手に付き合おうか?と言われる小鳩くん。

😒おい男子、やめとけ。彼女怖ぇぞ。
🧑🏻おい女子、やめとけ。めんどくせぇぞ。

そんな父娘は座して第2シーズンを待つ。




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プロテクター

2024-12-05 | 映画(は行)


◼️「プロテクター/The Protector」(1985年・アメリカ=香港)

監督=ジェームズ・グリッケンハウス
主演=ジャッキー・チェン ダニー・アイエロ ソーン・エリス ロイ・チャオ

80年代にジャッキー・チェンが最初のアメリカ進出を挑んだ頃の主演作。僕は初公開の85年に映画館で観ている。生息地の映画館では「007/美しき獲物たち」と二本立て。ジャッキーと並べられたら、ロジャー・ムーアのアクションが見劣りしてしまうじゃねぇか。2024年12月BS12の放送で再鑑賞。

監督は、当時残虐描写満載の「エクスタミネーター」で知られていたジェームズ・グリッケンハウス。ジャッキーとはアクション場面をめぐって意見が対立し、ジャッキーが追加撮影した場面を使ったジャッキー版(アジアで上映)とグリッケンハウス版があるとか。

ジャッキーはニューヨーク市警の刑事。映画冒頭で相棒を殺される場面は銃撃と流血のスローモーション。あー、「エクスタミネーター」もこんな感じだったよな😥。そこからジャッキーは大暴れするが上司の叱責を喰らうことに。新しいコンビでファッションショーの警備を命じられたが、突然現れた武装集団に主催者の女性が連れ去られてしまう。彼女はある組織の娘で、麻薬取引をめぐって香港の組織との対立が背景にあると掴んだ警察は、ジャッキーとダニー・アイエロのコンビを香港に送り込む。

ここから先は銃撃少なめで香港映画らしい拳中心のアクションが続く。とにかく銃弾で片をつけない。ジャッキーが船から船へと飛び移りながら追いかける場面は、銃をぶっ放せば済みそうなところだが、アクロバティックでご当地の特徴も活かしたいい場面。「インディ・ジョーンズ」にも出演してしているロイ・チャオの悪役ぶり、脇役ながらムーン・リーが出てくるのもよかった。後半は完全に香港映画のムードで、冒頭の派手でハードな雰囲気とは空気が違う。

二大勢力が対立するギクシャクした様子が感じられなかったり、人質奪還があっけなかったりと物足りなさがあるのは残念なところ。

ダニー・アイエロって、異国人や人種が異なる人に優しい役柄のイメージがある。「レオン」や「ドゥ・ザ・ライト・シング」とか。「プロテクター」の印象が残ってたからますますそう思えるんだろか。




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ヤマトよ永遠にREBEL3199第二章赤日の出撃

2024-12-03 | 映画(や行)


◼️「ヤマトよ永遠にREBEL3199第二章赤日の出撃」(2024年・日本)

監督=ヤマトナオミチ
声の出演=小野大輔 桑島法子 大塚芳忠 古川慎

「ヤマトよ永遠に」リメイク第二章。第一章が歯切れの悪い終わり方だったので、今度こそ新生ヤマトが出撃する勇姿が観られる!と期待して劇場へ。デザリアム艦との戦闘シーンは、期待を超えたスピードと迫力で満足した。劇場で観られたことに感謝。

一方、第二章の要はデザリアムが地球に来訪する表向きの理由と真の狙いを明らかにすること。それだけに説明が多い章になっている。ヤマト艦内で話されている内容と、アルフォン少尉が雪に語る内容、さらにデザリアムのスカルダートが地球人に語りかける内容。それぞれの言い分があるので、今後の展開を考えると重要な章だとも言える。「新たなる旅立ち」後編のラストに出てきたアンドロメダ艦の残害の謎も説明される。かなり盛りだくさんなので、説明が多いことを鑑賞の負担に感じてしまう方もあろうかと思う。

オールドファンにとって胸アツなのは、サーシャの登場。しかもボイスキャストがオリジナルの潘恵子から娘潘めぐみに引き継がれること。本作でのサーシャはまだ幼いが、第三章でいよいよ成長した姿で現れる。どんな「おじさまっ♪」が聴けるのだろうw

雪と離ればなれになってしまった古代進が心ここに在らずで、山南司令にヤマトを降りるように言い渡される始末。土門君からも厳しい言葉を浴びせられ、島の声かけにも力ない返事しか返せない。それだけに幽閉状態にされた雪が気丈にアルフォンに立ち向かっている姿が際立っている。うー、この先のドロドロ展開がオリジナル通りならつらいよなぁ。古代!しっかりしろーっ!😖

オリジナルにはない新設定があれこれ詰め込まれているので、4月公開の第三章が楽しみ。地球に残った面々がどう抵抗していくのか。ヤマトに立ちはだかる新たな苦難は。予告編に出てきたあの赤い艦は…🤩

アナライザーのグッズが出ないかとずーっと思っていたので、今回キーホルダーが登場して嬉しい!箱開けたら白でした。どうせなら赤がよかったなぁー😗





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アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師

2024-12-01 | 映画(あ行)


◼️「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」(2024年・日本)

監督=上田慎一郎
主演=内野聖陽 岡田将生 小澤征悦 川栄李奈

上田慎一郎監督は見せ方が上手。本作を観て改めてそう思った。台詞に頼らない映像で、置かれた状況や心情をちゃんと伝えてくれる。特に短い場面の心理描写が見事なのだ。「カメ止め」の後半もそうだったし、カンヌ映画祭×Tiktokのショートムービーコンペで受賞した「レンタル部下」の切ない感じも好きだったな。

「アングリー・スクワッド」は韓国ドラマを現代ニッポンに翻案した作品と聞く。チームで大掛かりな詐欺をするいわゆるコンゲーム。巨額の脱税をしている外面のいい金持ちに、地面師詐欺で挑む話だ。しかし単に泥棒や私腹をこやすために人を騙す話ではない。そこにはいろんな意味での復讐の感情が絡んでくる。しかもそれに真面目な税務署員が加わるってところがいい。

行動の裏にある真意を知ると同じ映像の見え方が変わってくる。感情が乗った映像がある映画ほど雄弁なものはない。主人公熊沢が詐欺一味に加わるまでの日々。上司に逆らえず、長いものに巻かれ、富ある者に屈辱を味合わされる。正しいことをしようとするのに立ちはだかる分厚い壁。それを覆えす話だから、とにかく気持ちがいい。鬱展開や重たいテーマの日本映画が多いだけに、こういうのを待っていた気がする。

内野聖陽の困った顔と自信たっぷりの岡田将生。川栄李奈、真矢みきなどなど個性が際立った役者陣も素晴らしい。

そして上田監督の見せ方の上手さ。えっ?そうくる?とテンポよく観客の期待を小さく裏切りながら、その先に用意された大どんでん返しに僕らはさらに転がされる。ショートムービー「みらいの婚活」も僕らが見ている風景を次々に根底からひっくり返して驚かせ、真の意味を知ってしんみりさせてくれたけど、そうした実験の発展型が本作だ。現実味がないとか堅いこと言わずに、この素敵な120分に向き合って欲しい。ラストの内野聖陽が悪役小澤征悦に言うひと言は、「アンタッチャブル」のラストでエリオット・ネスがカポネに言う「授業終わり!」に匹敵するカッコよさw(言い過ぎ?😆)



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