「ラスト7分11秒まで真犯人は絶対わからない」という触れ込みです。
はい・・・、確かに、だまされないぞ~、と思いながら見てはいましたが、やっぱり騙されてしまいました。
主人公、ハル・ベリー演じるロウィーナは、新聞記者。
腕利きで、自分の才覚だけで、これまで生きてきたと思っている。
ある日、幼なじみのグレースが変死。
彼女は、広告会社社長のハリソン・ヒル(ブルース・ウィリス)とネットで知り合って関係を持ったものの、その後相手にされず、恨み、逆に脅迫するつもりでいたようだ。
そのことを知っていたロウィーナは、ハリソンが怪しいとにらみ、捜査をはじめる。
この映画で中心となるのはコンピューター。
自分を偽り、人とネット上で会話をするなどお手の物。
相手が実は誰かもわからず、会話をするって、実はとても危険なことに思えてきます。
「パーフェクト・ストレンジャー」とは、完全な別人の意。
ネット上の匿名性を利用し、普段とはまったくの別人・・・というよりはその人の本性がむき出しとなる。
ブログもあまり変わりないかもしれません。
気をつけないとね・・・。
片や、ハリソンと偽りの会話を続けながら、逐一その会話を同僚のマイルズにコメントをつけて横流し、なんてこともやってのけるロウィーナ。
スリルのあるシーンです。
これをやるには結構熟練が必要ですよね。
相手を間違えたら一巻の終わりだし。
まあ、私には絶対に無理。
さて、しかし、ハリソンも怪しいけれど、マイルズも、はじめから相当怪しい。
マイルズはロウィーナに気があるのは見え見えなのに、ロウィーナは相手にもしていない。
このオタクっぽい人、大丈夫なのかなあ・・・と、これは、わざとそう思わせるように作ってある。
それから、グレースが以前に付き合っていて、実は現在のロウィーナの恋人、というヤツも怪しい。
いやいや、最も怪しいといえばハリソンの奥さんではないのか?
嫉妬というわかりやすい動機がある。
誰も彼もが疑惑に満ちている・・・、
という状況で、これなら、誰が真犯人としても、特別意外というわけでもないんじゃない?という風に思えてくるのですね。
ところがところが、です。
裁判でハリソンが有罪と決まった後に、真実が現れる。
え~、それは「禁じ手」では?とも思えるのですが、確かに意外。
だからといって、あまりにも唐突というのでもなく、ちゃんと伏線はあったのだ!
強きもの。それは女・・・。
2007年/アメリカ/110分
監督:ジェームズ・フォーリー
出演:ハル・ベリー、ブルース・ウィリス、ジョバンニ・リビシ、ゲイリー・ドゥーダン
「からくりからくさ」 梨木香歩 新潮文庫
う~む、私には、この本をうまく解説する力量がないと、感じ入っております。
梨木さんの描く世界を、どのように表現すればいいのか、
もう、「解説なんか当てにしないで、とにかく読んでみて」と、言う他ないような。
語り口はやさしいのですが、実に深い、と思います。
この本を読む前に、「ぐるりのこと」を読んでいてよかったと思いました。
いつも彼女が折に触れ考えていることが、そこここにちりばめられているのがよく分かります。
心を持つ不思議な人形・・・「りかさん」。
ほら、なんだか、そんなことを書いただけで陳腐な感じがしてしまうのだけれど、物語の中では、しっかりと位置づくのです。
このストーリーのメインとなる登場人物は、
このりかさんと、
染色(自然を生かした草木染め)をしている蓉子。
紬(つむぎ)を織る紀久。
インテリア用の織物を作る与希子。
そして、鍼灸の勉強をしているアメリカ人マーガレット。
この何らかの手仕事をする若い女性4人が、蓉子の亡き祖母の残した古い家に同居。
その同居中の出来事をつづっています。
ただの仲良し4人組というのではなくて、それぞれの独立した個性が際立っています。
この世界は、織物のようなもの。
一人一人がそれぞれの縦糸。
糸はずっと一本で他と交わることはない。けれど、離れてみると一体となって、さまざまな模様をつくりだしている。さしずめ、横糸は時間だろうか・・・。
そして、唐草模様。
連続するその模様も、この世のありようを描いている。
繰り返し、繰り返し・・・けれど、変化していく。
この続いていくことが大事で、その変化の継ぎ目も、変化前と変化後を意識させないように、というのが難しいところ。
ある日突然に変わるのではなく、微妙な節目を迎えながら、移り変わっていく。
人の世、世の移り変わり・・・以上が私なりに読み取ったことです。
唐草模様というのは実は蛇が原型というのですが・・・。
ちょっと不気味ですが、洋の東西を問わず、古来から蛇を神格化することはよくあるようですね。
トルコなどのキリムという毛織物の模様にもこの、蛇とも唐草模様ともつかない図案が使われているという・・・。
絹糸を作り出す蛾、
織物ともいえる巣を作る蜘蛛。
美しいとか、気味が悪いとかは勝手な人間の感想で、気が遠くなるくらい長い間、自然は淡々と営みを続けているだけなんですね。
この本を読んだ翌日の朝、我が家の玄関横の木に大きな蜘蛛が立派な巣を張っていました。
でもこの本を読んで、しかも「シャーロットのおくりもの」を見た後では、とても壊せませんでした・・・。
たしかに、美しい糸の模様でした・・・。
満足度★★★★
「真夜中の神話」 真保裕一 文春文庫
薬学の研究者晃子は、インドネシアに向かう途中飛行機事故にあう。
山奥の小さな村で奇跡的に助かった晃子は、ある少女の神秘的な歌声を聞き、脅威的な回復を見せる。
・・・と、こんな風にストーリーが始まります。
はじめのうち、どうも篠田節子を読んでいる気がして仕方なかった。
女性が主人公ということと、アジアが舞台、それと宗教というか土着信仰のようなものが絡んでいるあたり、でしょうか。
こういうジャンルは、彼女の独壇場なもので。
もともと、アニマルセラピー、特にイルカに関して研究を進めつつあった彼女が、推理したことによると、その少女の声は超音波を発しているのではないか・・・と。
それがどうも、人の体に作用し、奇跡的な癒し効果、回復力などをもたらすのではないかと。
もしかすると、世界の神々もこのような声の持ち主で、そのため、さまざまな奇跡を行うものとしてあがめられていったのではないか・・・というところまで想像が及ぶ。
そこまで行くとこれはもう、たとえばキリストへの冒涜。
神はそのままで神、奇跡を行う者であるのに、単に超音波を発生する人物だったなどとの解釈は許されない。
熱心な信者であればあるほど、そのように思うでしょう。
しかもその少女の声は、その超音波によりコウモリを呼び寄せたりするので、吸血鬼と誤解され、近くの村からは忌み嫌われた存在であったりする。
しかしまた、その奇跡の声を科学的に解明できれば、莫大な利益を生むことでもある。
と、さまざまな利害関係を含んだ思惑・人物が入り乱れ、なかなか壮大な追跡劇が始まります。
最期のほうは、さすが真保裕一のスペクタクルアクション。
また、吸血鬼伝説にまつわる薀蓄があったりするのも、興味深いです。
ただ、なんだか、舞台のインドネシア・アニマルセラピー・吸血鬼・・・、私たちの生活からはかなり遠いです。
それで、どうも、いまいち乗り切れなかったかな?という感も否めない。
猟奇殺人として、殺された二人が、どうしてそのような殺され方をしなければならなかったかというところに、あまり説得力がないようにも思いました。
ドラマとしてはOK。
ミステリとしてはやや難。
といったところでしょうか。
満足度 ★★★
(DVD)
1995年作品。
ヒュー・グラントにケイト・ウィンスレット・・・ということで、興味を持ちました。
舞台は19世紀初頭、イギリス。
あまり裕福でない母親と3人の娘たちの一家があって、娘たちが幸せな結婚を手に入れるまでのストーリー。
あれ?これって私がかなり気に入ってしまった「プライドと偏見」にとてもよく似ている。
・・・と思ったら、やはりこれは同じジェーン・オースティンの小説を映画化したものでした。
やや、内気でしっかりものの長女。
気が強くて自由奔放の次女。
そんな設定もそっくり。
そしてやはり、女性は自分で職業を持つということがないので、誰かの遺産を受け継ぐか、結婚するかしか、生きるすべがない。
結婚が最大の関心事になってしまうのは仕方のないことです。
長女エリノア(エマ・トンプソン)は、ちょっと内気だけれどもやさしく誠実なエドワード(ヒュー・グラント)と親しくなり、お互いを意識するようになる。
けれど、きちんとした約束もしないまま、貧乏娘と結婚なんかさせないと息巻くエドワードの姉により、引き離されてしまう。
一方、次女(ケイト・ウィンスレット)は、彼女に思いを寄せているブランドン大佐(アラン・リックマン)には目もくれず、見た目の派手なウィロビーに夢中。
しかし、このウィロビーというのは実はとんでもない軽薄男で、やはりはっきりした結婚の約束も交わさないまま、逃げ出し、金持ちの娘と結婚してしまう。
ステキな姉妹なのに、どちらもうまくいかない恋愛。
ふさぎこんでしまう一家。
この一家の叔父さん夫婦というのがなかなかおせっかいで明るくて、コミカルな雰囲気を醸しています。
ただ能天気というのでもなく、人を見る目ももっていそう。
さて、この恋の行方は・・・?ということで、すばらしいどんでん返しのハッピーエンドで、乙女心を満足させてくれる作品であります。
ヒュー・グラントの役ははまり役。
「じれったい、さっさと思っていることをいいなさいよ~」とつい思わせる、あの感じ。
実際には最初のほうと最期のほうしか出てこないんですよ。
お得な役。
ブランドン大佐は、過去の女性関係にトラウマを持つけれど、それも乗り越えたしっかりした大人の男性、という役どころですが、この、アラン・リックマンには見覚えが・・・
と思ったら、なんとあの、「ハリー・ポッター」のいや~な教師スネイプではありませんか!!
それを思うとちょっと、こっそり笑いたくなっちゃいますけどね。
さてやはりどうしても「プライドと偏見」と比較してしまうのですが、より、ロマンチックに女心に響くのは「プライドと偏見」のほうかなあ。
田舎風の生活の様子とか、時代色たっぷりのダンスのシーンとかもよかったですし。
ロマンス小説好きの人なら、まず、こちらを見てから「プライドと偏見」に行くべし。
です。
1995年/アメリカ/136分
監督:アン・リー
出演:エマ・トンプソン、ケイト・ウィンスレット、ヒュー・グラント、アラン・リックマン
(DVD)
セレンディピティは「幸せな偶然」という意味ですが、この映画の登場人物ジョナサンとサラが出会ったニューヨークのカフェの名前でもあります。
偶然同じ手袋を買おうとして知り合った二人は一緒に食事をし、スケートをして楽しい時間をすごします。
そして別れの間際、二人のこの先は運命に任せましょう、ということで、たまたま持っていた5ドル札と本にそれぞれの名前と電話番号を記し、手放す。
もし運よく再びこれが相手の手元に戻ることがあれば、連絡を取りましょう・・・と。
さて、数年が過ぎて、二人はそれぞれ恋人ができ、まもなく結婚ということになっています。
けれども、いよいよ式が近づくにつれて、数年前の出会いが思い出され、彼・彼女が本当の「運命の人」だったのではないかと、気になってならない。
ジョナサンは友人の助けをかりて、その手袋のレシートに記されたカードの番号から彼女の身元をたどれないかと調べ始めます。
かなり現実的。
一方サラは、住んでいるサンフランシスコからわざわざニューヨークまでやってきて、運命の啓示が指し示すまま、運命に身をゆだね、彼を探し出すことにします。
このあたりが男女の違いというか、なんだかわかる気がしますね。
まあ、「お話」ですので、どのような結果になるかは想像がつくというものですが、わざとらしいすれ違い劇もはさみつつ、思いっきりロマンティックに話は展開。
女性はきっと気に入るでしょう。
でも神秘的な何かにすがろうとするサラを笑うことはできません。
なんだかんだ言っても、現実的でないものをよりどころにすることはよくあることで、私など、テレビの星占いはつい気になってみてしまうし、お正月に神社で引くおみくじも実は結構気にしている。
男女の出会いというのも実際、いろんな偶然の重なりでその人と出会うわけで、すべての出会いが神秘とも言える。
きっと運命の赤い糸で結ばれた相手がいるに違いない。
そう思いたくなるのも無理のないことです。
最期に、ジョナサンは勇気ある決断をします。
とうとうサラとのことは夢に終わったけれど、なんだかんだといってサラを探したのは、結局今の彼女とは結婚したくないからなのではないか。
そう気づいて潔く結婚をキャンセル。
現実と向き合う、しっかりした決断でした。
そしてその決断こそが運を呼ぶのです。
さて、楽しかったのは、セレンディピティの店員さん。
ジョナサンにカードの情報を教える見返りに、紫のネクタイやらスーツまで売りつける。
なんだかんだでやっと見つけた情報も役にたたなかったけれど、アイデアは提供。
意地悪なんだか親切なんだか、とってもユニーク。
もしかしたらすべてはこの人の画策?
こんなオジサンのクセにもしかして恋のキューピッド??
そんな想像までしてしまうのでした。
まだちょっと早いですが、クリスマスに見たい映画です。
2001年/アメリカ/91分
監督:ピーター・チェルソム
出演:ジョン・キューザック、ケイト・ベッキンセール、ジェレミー・ピーヴン、モリー・シャノン
「箸の上げ下ろし」 酒井順子 新潮文庫
食にまつわるエッセイ集です。
「食べる」ということは、万人に共通する楽しみなので、このような本は誰でもするすると読めて楽しい。
この本はNHKの「今日の料理」誌に連載されたものをまとめたもので、食べ物をとおして・・・ということでも、これだけいろいろな角度からいろいろな物事について述べると、おのずから作者の性格や日ごろの考え方が出るものだなあ・・・と、思いました。
ああ、ある、ある、・・・と思ったのは、冷蔵庫に貼るマグネットのこと。
ハワイには、そのマグネット専門のお店まであるそうで、つまり、これは自分で買うようなものではないけれど、人からもらったりして、いつの間にかある、というようなもの。
そう高くはないし、かさばらないし、もらったほうもすごくうれしいというほどではないにしても、もらって迷惑ということはない。
なるほど、お土産には最適。
そしてなぜか、どこの家でも、冷蔵庫にはマグネットで何かしら貼り付けてあるものらしい・・・。
もちろん我が家にもあります。バスの時刻表なんかが張り付いている。
子供のいる家庭なら給食のメニュー表とかね。
ちょっとした料理のレシピとか。
忘れたくない日程のメモとか・・・。
そういえば映画をみていて、アメリカの家庭の冷蔵庫にもちゃんと何かが貼られていて、何処も同じか・・・と、思ったことがあります。
それから、過去にたった一度だけ使った香辛料のビンが、戸棚にたまっていくなんていうのも・・・。
ありますねえ。
いつのだかわかんない。
もう湿気てしまって、底の方に固まっているみたいな。
けど、なかなか処分する気にもならないと・・・。
彼女は、男が作るカレーには絶対にケチをつけてはいけない、といいます。
カレーが得意だという男性はかなりのこだわりを持った人なので、そのプライドを傷つけてはいけない、ということで、食べる時にも大変気を使ってほめまくるので、疲れてしまうのだとか・・・。
なるほど、と思いますが、でもそういえば私自身はそもそも男性の作るカレーなんて食べたことないような・・・・?
「男子厨房に入るべからず」なんて育てられた夫だしなあ・・・。
多少「変」でもほめまくるので、誰か作ってくれないかしらん?
満足度★★★