映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

グーグーだって猫である

2008年09月13日 | 映画(か行)

知る人ぞ知る、大島弓子原作コミックの映画化です。
といいましても、これはほとんどエッセイ風のコミックなので、
一体どのように映画化するのだろうかと思っていたのですが、
なるほど、きちんとストーリーができていました。
単に、かわいい猫が出てくるだけではないので、男性の方も安心してご覧ください。

主人公はそのものずばり、大島弓子がモデルの漫画家、麻子(小泉今日子)。
アシスタントの筆頭がナオミ(上野樹里)。
麻子は、長年飼っていた愛猫サバの死で、気力をなくしていたのですが、
しばらくしてまた子猫を飼い始めます。
それが、グーグー。
ある日、いなくなってしまったグーグーをさがしていて、一人の青年と遭遇。
それが青自(加瀬亮)。
内気で繊細な麻子とやや飄々としたこの青年は、
ナオミの取り計らいによって、少しずつ接近していくのですが、
そんな時に麻子の卵巣がんが発覚して手術となる。

全体を通して、ものすごい事件が起こるというわけではありません。
一人ひとりが、それぞれの道を考えながら、一生懸命生きている。
生きるのはいやなこともつらいこともあるけど、
人々や猫の温もりに包まれながら、何とかやって行けば、
ちょっとはいいこともありそうだなあ・・・と、そんな気にさせられます。

この映画ではナオミの存在が光っていますが、上野樹里が好演しています。
無愛想だけど、良く人を見ている小林亜星もいいなあ。
なんと、梅津かずお氏まで登場。
まことちゃんもね。
大島弓子コミックも一部登場し、
大島ファンが見ても納得し、楽しめる作品だと思います。

しかし、私は最後の麻子とサバの対面シーンが余計だと思う・・・。
もともと、大島コミックの中で、サバは人間の姿で登場していたんですけどね。
あの、「綿の国星」のチビ猫と同じスタイル。
でも、このシーンのサバは、かわい過ぎ。
そこで延々と二人の対話となるのですが、
そのやり取りが、なんだかお尻がこそばゆくなりそうに、浮いた感じがする・・・。
「え~と、」なんてつぶやきながら、ポリポリ頭をかいてしまいたくなる。
つまり、気ハズカシイ・・・感じ?
本当なら涙を誘うシーンなのでしょうか??? 
私は入り込めませんでした。
もう少し、何とかならなかったんでしょうかね、ここ・・・。

物語の舞台は吉祥寺。なんだか興味を引かれる街ですね。お散歩してみたいです。

2008年/日本/116分
監督・脚本:犬堂一心
出演:小泉今日子、上野樹里、加瀬亮、大島美幸
「グーグーだって猫である」公式サイト


「上海タイフーン」 福田靖

2008年09月11日 | 本(その他)
上海タイフーン
福田 靖
講談社

このアイテムの詳細を見る

今の上海が舞台の物語を見つけました。
たまたま、書店の店頭で目についたのですが。

この著者は脚本家なんですね。
で、このストーリーは、まもなくNHK土曜ドラマで放送開始するそうです。
その原作本。
著者の手がけた脚本は「CHANGE」、「ガリレオ」、「HERO」、「海猿」・・・
うわ、ヒットメーカーでした!!

恋にも仕事にも挫折した女性が、新天地上海へ行って、
心機一転夢をかなえようとする、サクセスストーリー。
しかし、世の中甘くありません。
気楽なつもりで上海へ行ってもそう簡単に仕事はないし、
中国といっても物価はさほど安くもない。
ことに、言葉がきちんと話せないのは致命傷。
現実に、甘い期待を抱いて上海へ渡り、
挫折して逃げ帰る日本人はかなり多いとのこと。

まあ、しかし、これは物語なので、主人公美鈴は幾度かの挫折を乗り越えて、
努力とアイデアで、上海での自分のいる場所を築いていく。
現地の人、同じ日本人、ハーフの子など、様々な人に助けられながら。
まるでSFの未来都市というような高層ビル群や、
古くから残る建物が同居する、不思議で混沌とした街。
今の上海を知るためには、良い本でした。

しかし、これを小説としてみると、やや難あり、です。
著者はやはり小説家ではなく、脚本家なんですね。
文章がそのままスバリというか、行間がないというか・・・、
わかりやすいですが、あまりにもストレート。
結局、ただストーリーを追うだけになっている。
小説家の文章とはちがうなあ・・・と、強く感じてしまいました。
映画やテレビのドラマでは、この行間を俳優さんの演技が埋めるのでしょう・・・。

また、中国人青年実業家、曹が、当初から美鈴を気に入った様子を見せるのですが、
一体彼女のどこがそんなに気に入ったのだか、どうも納得できない。
はじめの方の美鈴は、結構いやな女ですよ・・・。

というわけで、多分これは本で読むよりもドラマを見たほうが楽しめると思います。
上海の映像もたっぷり見られそうですしね。

満足度★★★


キサラギ

2008年09月10日 | 映画(か行)
キサラギ スタンダード・エディション

キングレコード

このアイテムの詳細を見る

この作品をお勧めする方が多いので、早く見たかったのですが、
TUTAYA DISCUSではなかなか回ってこなくて、ようやく見ることができました。

アイドル如月ミキが焼身自殺をした一年後。
彼女のファンサイトの常連5人が始めて一同に会し、一周忌の追悼集会をすることに。
ここに集まったのがと~っても個性的な面々。
みな、ハンドルネームのままで呼び合うことにします。

★家元(小栗旬)
:彼がサイトを立ち上げたので、リーダー的立場にあり、この中では最もまともそう(?)に見える。
雑誌の切り抜きなど、ほぼ100パーセント持っているのが自慢。
出したファンレターも200通。

★オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)
:適当に付けたハンドルネームの失敗例。
しかし、彼は雰囲気が怖い!
「如月ミキは自殺したのではなくて、殺されたんだ」、と言い出すのも彼。

★スネーク(小出恵介)
:調子が良くて、強いものに迎合するタイプ。
以前ロックバンドをやっていたというが・・・。

★安男(塚地武雅)
:一人だけ、カジュアルなスタイルで来てしまったり、
おなかを壊してトイレにかよったり、
一人だけみんなの話題について行けず、浮きまくり。
・・・しかし実は彼は・・・。

★イチゴ娘(香川照之)
女の子のふりしてサイトに書き込みをしていた人。
しかし、実は挙動不審なオジサン。
誰も知らないはずのミキのことを知っているこの人は、実は・・・。

映画はすべて、このみなの集まった一つの部屋の中だけで進行します。
いわゆる、ワンシチュエーション・サスペンス。
5人でミキの死の真相を推理し合っていくのですが、
次々暴かれるこの5人の正体。
めまぐるしく変わっていく、推理の状況。
全く退屈しない展開が繰り広げられます。
これはとにかく脚本の勝利ですね。
そして、この5人の個性あふれる俳優の勝利。

そして、たどり着く真相は、はじめの「焼身自殺」とは似ても似つかない、驚きの様相。
しかしそのヒントは、それまですべての会話の中に潜んでいた、ということで、
この辺の収束の仕方が実に心地よいのです。
さらには、意外な真相が現れるということだけではない。
終始の会話を通して、如月ミキって、どんな子だったのか、それが浮かび上がってくるんですね。
特にラスト、どうして彼女は物置で倒れていたのか、という真相では、
胸が熱くなってしまいました。
なんと、ハートフルな作品でもあったのです!

多くの方のお勧めというのも納得のステキな作品でした。

2007年/日本/108分
監督:佐藤祐市
出演:小栗旬、ユースケ・サンタマリア、小出恵介、塚地武雅、香川照之


幸せの1ページ

2008年09月09日 | 映画(さ行)
この作品は、オーストラリアの作家ウェンディ・オアーの人気児童書の映画化。
コミカルな冒険ファンタジーとなっています。

冒険小説家のアレクサンドラは、なんと対人恐怖症で、引きこもり。
そして過度の潔癖症。
外の郵便受けに郵便を取りに行くこともできないほど。
しかしある日、南の島の少女ニムから、SOSのメールを受け・・・。

アレクサンドラの小説にはアレックス・ローバーというヒーローが登場するのですね。
イメージとしてはインディ・ジョーンズ。
数々の危険を危機一髪で潜り抜ける、タフな冒険好きの男。
そのアレックス・ローバーが、しばしばアレクサンドラの横に現れては、
彼女を外の世界へ行くようにと励ます。
無論彼女の想像の産物ではありますが、映画的にはこのシーンはおいしい。
さて、ニムを助けたい一心で、あらん限りの勇気を振り絞って、
アレクサンドラは家から外へ足を踏み出した。

飛行機を乗り継いで、船に乗って、ヘリに乗り・・・
最後にはほとんどヤケで、船に積んだボートを盗んで荒海に漕ぎ出したりする!

一方、南の島では・・・。
そこは海洋学者ジャックとその娘ニム2人だけで住む孤島。
ジャックはたまたま調査のため海に出て、
11歳の少女ニムが一人で留守番になるんですね。
しかし、嵐が来て、父親は戻ってこない・・・。
ニムは生活力旺盛の元気な子。
アレックス・ローバーの大ファン。
でも、その作者が女性で、しかも、引きこもりだなんて思ってもいません。
父親が戻らないことで、不安なニムはアレックス・ローバーに助けを求めたというわけです。
ニム役のアビゲイル・ブレスリンは、近頃の女性子役NO.1といっていいですね。
「リトル・ミス・サンシャイン」の頃からは、ずいぶん大人っぽくなりました。

また、遭難しかけた父、ジャックは、
ニムのために何が何でも生きて帰らなければならない、と必死に船を修理する。

アレクサンドラ、ニム、そしてジャック、三人の奮闘振りが交互に描かれてゆきます。
楽しいのは、ニムと仲良しの島の動物たち。
ドリトル先生並に気持ちが通い合ってしまうあたりは、
やはり児童小説なので、カンベンね、というところです。
でも、楽しいので許しちゃう。

空想の人物アレックス・ローバーとニムの父親ジャックが
ジェラルド・バトラーの一人二役なんですが、
ここはうまいキャスティングだと思いました。
ニムにとっては父親こそがヒーローというのは納得できます。
また、アレクサンドラにとっては実は理想のタイプだったりしそうなので、
その後のロマンスも期待できるということですよね。

ちょっと物足りなかったのは、
アレクサンドラとニムが力を合わせて何かをやり遂げて、
そしてやっと気持ちが通じる、そんなシーンが欲しかった・・・。
最後が時間切れ?という感じであっさりしすぎたのがちょっと残念です。

2008年/アメリカ/96分
監督・脚本:ジェニファー・フラケット&マーク・レヴィン
出演:ジョディ・フォスター、アビゲイル・ブレスリン、ジェラルド・バトラー

「幸せの1ページ」公式サイト

「ガン病棟のピーターラビット」中島梓

2008年09月08日 | 本(エッセイ)
ガン病棟のピーターラビット (ポプラ文庫)
中島 梓
ポプラ社

このアイテムの詳細を見る



「ガン病棟のピーターラビット」中島梓 ポプラ文庫
ポプラ文庫・・・、いつの間にかまた新しい文庫ですね。
文庫ファンにはうれしいですが、各社の新刊を並べるだけでも書店さんは大変だろうなあ・・・と思ったりします。

さて、問題のこの本。
「中島梓」は、私の生涯の愛読書「グイン・サーガ」著者、栗本薫さんの別名であります。
彼女が評論などを書くときに使うもう一つの名前。
それで、危うく見逃すところだったんですね。
先日ふと、書店で目についたのです。
「ガン病棟」・・・。
彼女がガンを患い、手術のため入院していたことは、
「グイン・サーガ」の後書きの中で読んでいたので知っていましたが、
これはその時の体験記なんですね。

ひどい黄疸が出て、病院へ行ったら即入院。
「グイン・サーガ」後書きの中では、なかなか気丈な書き方をしていましたが、
この本を読むとかなり大変な手術だったことがよく分かります。
ICUでのこと、その後の経過、病院での日常・・・等など。
入院しながらも原稿を書き続けていた、というあたりは、さすが・・・というしかありません。
とにかく、無事退院にこぎつけ、徐々に平常の生活に戻りつつある・・・と、
本文では一応そんな終わり方だったのですが・・・。

あとがきでまた驚かせられました。
その後ガンの転移が発見され、現在抗ガン剤治療を受けているというのです。
ちょっと、言葉を失います。
それにしても、ここまでオープンに書いてしまうとは。
なんて勇気のある方なのでしょう。
この時点で今年の6月26日。
今も、栗本氏(失礼、私の中では、やはり中島氏でなく、栗本氏なので)は
ガンと闘っているはず。

励ましなんて、おこがましいですが・・・。
私のようにこれまでファンレターの一通も書いたことがなくても、
毎巻欠かさずグインを買って、ハラハラ・ドキドキ一喜一憂しながら、
また次の巻を心待ちにしている、
そういうファンがすご~くたくさんいる、
ということを力の一つとしてもらいたいと切に思います。

栗本さんはストーリーテーラーとして、まさに天才だと思うのです。
100巻を超えるグインの物語は、ちっとも飽きることがない。
まもなく連載30年というこんな長さなのに、
ストーリーははじめの方を忘れてしまうなどということもなく、
ほとんど頭に残っている。
これはすごいことです。
なんだか、夕鶴のおつうみたいですね。
彼女は自分の身を削ってこの壮大な物語を書いているのではないでしょうか・・・。

満足度★★★★

「御手洗潔対シャーロック・ホームズ」 柄刀 一

2008年09月07日 | 本(ミステリ)
御手洗潔対シャーロック・ホームズ (創元推理文庫 M つ 5-1)
柄刀 一
東京創元社

このアイテムの詳細を見る

「御手洗潔対シャーロック・ホームズ」 柄刀 一  創元推理文庫

この本を見るとまず、あれ?と思いますね。
御手洗潔はおなじみ島田荘司の人気NO.1キャラ。
対するのがシャーロック・ホームズでは時代が全く違います・・・。
しかも、見れば作者は柄刀 一。
これは、柄刀氏が島田荘司に奉げるパスティーシュだったのです。
パスティーシュとはすなわち・・・
広い意味でのパロディ :文体や雰囲気など、先駆者に影響を受けて作風が似ること。
御手洗潔と石岡和己の名コンビのストーリーを、その作品世界を損なわないように柄刀氏が描く。
・・・いやはや、まさに、島田氏の作品世界そのものでした。
スタイルを真似するだけではダメで、
その作品自体きちんと読み応えのあるものでなければならない、というところもきちんと押さえられています。
特に、御手洗シリーズの方は、脳科学やイギリスの伝承を下敷きとしたストーリー、
いかにも島田氏が書きそう・・・というところで、感動します。
「シリウスの雫」で語られるイギリスの古代遺跡。
そこで描写される雄大な自然がもたらす奇跡の映像・・・。
ロマンです。

そして、シャーロック・ホームズとワトスン。
なぜかこの二人は時空を通り抜けて現代の日本に現れたりする。
それがなぜか東京の街を馬車で移動したり・・・。
いや、これはぜひ横浜を舞台にして欲しかったですね。
これぞ馬車道ということで・・・。
あ、馬車道は御手洗の方でした・・・。

いつものシャーロック・ホームズの名推理、ということで、
ホームズが階下から登ってくる人の足音を聞いただけで、その人がどんな人なのかを推測します。
「身長は190センチ以上、体重80キロ、いささか運動不足の肥満した体型の男性。
自尊心が強く、やや意地っ張りなタイプ。」
さて、当人が現れてみれば、
------黒いドレスで身を包み、4・5歳ぐらいと思われる体の大きな子どもを腰のあたりに抱えている若い婦人で、
高々と30センチほど髪を結い上げ、かかとの取れたハイヒールを履いていた------
と、大外れだったりするのがとてもおかしい。

最後の中篇「巨人幻想」では、ついにこの二組のコンビが合い間見え、
推理合戦を繰り広げるという贅沢な趣向です。

さらに、この本のおいしいところは、
巻末になんと、本家島田荘司氏の特別寄稿として、
「石岡和己対ジョン・H・ワトスン」というのがある。
この二人の手紙のやり取りになっていて、始めはとても丁寧、紳士的なやり取りが、
次第に辛辣な揚げ足取りになっていく・・・というもの。
まあ、柄刀氏自身も言っているので、言っちゃいますが、
この本ではここのところが一番面白かったりする・・・。

まあ、御手洗ものが好きな方にはお勧めです。

満足度★★★★


フェイク

2008年09月06日 | 映画(は行)
フェイク エクステンデッド・エディション

ソニー・ピクチャーズエンタテイメント

このアイテムの詳細を見る


FBIの囮捜査官ジョゼフ・ピストーネが6年にわたりマフィア組織に潜入。
これは、その実話を基にした物語。

ジョー・ピストーネ(ジョニー・デップ)はドニー・ブラスコと名前を変えて、マフィアの組織に近づく。
始めに接近したのは、マフィアの末端、
もういい年なんだけれどもうだつの上らないレフティ(アル・パチーノ)。
しかし彼は態度は尊大なんだけれど、情に厚い・・・。
まあ、昔かたぎとでも言いましょうか・・・。
何かとドニーを気遣い、面倒をみるのです。
レフティは彼を自分の息子とも引き比べてしまい、
ドニーに単なる弟分を越えた信頼・愛情を置くようになっていく。
そんな彼に対して、だましていることに罪悪感を感じ、いらだつドニー。

さてまた、やはりマフィアですからね。
暴力沙汰は日常茶飯事で、自分の正体がばれないためにはドニーも、それに加担しなければならない。
正体がばれること、すなわち死。
このように神経をすり減らす毎日の中で、次第に、ドニーとジョニーの境界線があいまいになっていく・・・。
そしてまたさらに、ジョーには妻と3人の子どもがいるのですが、
この囮捜査の生活のために家へはほとんど帰ることができず、
次第に妻や子どもたちとの絆も失われていく。

こんなにしてまで、続けるべき仕事なのかと、つい女の身の私は思ってしまうのですが・・・。
でも、どこかそれは彼にとっての「生きる」場になってしまっているのだなあ、
という感じはひしひしと伝わってきます。
もう、妻や子との「温かい家庭」にはなじめなくなってしまっている。
そんな事情とは裏腹に、彼のひそかな連絡や盗聴マイクのおかげで、
囮作戦はかなりの成果を上げていきます。
しかし、マフィア同士の抗争のため、いつしかドニーの身にも危険がせまり、
ついに作戦中止。
その時には、ドニーの正体も明かされるわけですが、
それはつまり、弟分として彼の面倒を見ていたレフティの責任ということで、
レフティの命も非情に危険ということ・・・。
レフティは最後に家を出る時に妻に言い残します。
「ドニーに伝えてくれ、お前なら許せる・・・」
こんな言葉を残せるくらいに、家族のような信頼を築いてしまったこの二人の男。
か~っ。渋いです。
男の世界ですね~。

アル・パチーノとジョニー・デップ、この共演は成功です。
おちゃらけなしの、クールなジョニー・デップは、やっぱりカッコイイ。

1997年/アメリカ/126分
監督:マイク・ニューウェル
出演:アル・パチーノ、ジョニー・デップ、マイケル・マドセン、ブルーノ・カービー


20世紀少年

2008年09月05日 | 映画(な行)

浦沢直樹原作コミックの映画化であるこの作品。
私はコミックでで途中まで読んでいたのですが、
途中からどこまで読んだのかわからなくなってしまい、面倒になってそれっきりになっていました。
今回は3部作のうちの一作目とのこと。
予告編はうまくできてましたからね。つい、見たくなってしまう。
しかし、実際見終わった感想は・・・、まあ、可もなし・不可もなしというところ。
今回の部分まではコミックを読んでいました。
そうしたら、あまりにも本の印象と同じなので、いまさら特に感動も何も・・・という感じです。
これは本を読まない人のほうが、ワクワクと楽しめるのではないでしょうか。

ケンヂたちは少年の頃、自分たちで「よげんの書」を作り、遊んでいた。
30年を経て、その「よげんの書」と同じ事件が各地で起き始める。
世界は次第に破滅へと向かっていく。
その事件の首謀者は、あるカルト教団の教祖で「ともだち」と呼ばれる男。
ケンヂたちと子どもの頃一緒に遊んでいた誰かと思われるが、その正体がわからない。
人類を滅亡から救うため、ケンヂたちは今立ち上がった!

大阪万博、アポロ11号の月面着陸、
彼らの少年時代はそのまま私の子ども時代でもあるので
(私のほうがもっと上ですが・・・)
なつかしい気がします。
確かにあの頃は、輝く未来をみな信じていたのですけれど・・・。
あの頃、もっと真剣に地球温暖化を考えていればよかったですね・・・。
二酸化炭素の温室効果なんて、誰も知らなかったな・・・。

同じ小学校の友人たちというごくローカルな話と、
世界征服というグローバルな話、
このつなぎ目がすごく難しいと思うんですね。
ここがうまくつながっていないとただの子供向けの話になってしまう。
何しろケンヂは自衛隊員でも特殊工作員でも科学技術者でもなくて、
ただのコンビニ店長ですから。
彼が立ち上がって一体何ができるのか・・・? 
まあ、そこを何とか世界に引き付けているのは、オッチョの存在ということになりましょう。
豊川悦司の演技がすごく光っていました。
彼の存在がこの物語をお子様劇から救っています。
個人的には常盤貴子が好きなので、ユキジもよかったです。
ブルースリーも。
その他、ほんのチョイ役も含めて豪華で多彩な出演陣。
タカ&トシまで出てきたのは驚いた。
ストーリーを知り尽くしている人はこういうところでお楽しみくださいってことかな?

2008年/日本/142分
監督:堤幸彦
出演:唐沢寿明、豊川悦司、常盤貴子、香川照之・・・

「20世紀少年」公式サイト


深泥丘奇談

2008年09月04日 | 本(その他)
深泥丘奇談 (幽BOOKS)
綾辻行人
メディアファクトリー

このアイテムの詳細を見る

「この世にはね、不思議なことがあるものなのです。」
このセリフを読んだら、京極夏彦ファンならきっとにやりとするでしょう。
かの、日本で一番有名な古本屋の主のセリフ、
「この世には不思議なことなどないのです。」
と、真っ向から対決するのが、この本のコンセプトということなんですね。
推理小説、特にこの著者が目指してきた本格ミステリは、論理がすべてだったわけです。
どんな不可思議な事件も、論理によって解き明かされる、と。
しかし、ここでは著者は論理は置き去りにして、
不思議で怖い異次元の京都、
そこでの作家の生活を描いています。
短編集なのかな?と思ったら、これは終始ある「作家」が語る体験談。
時間を追った連作となっています。
この「作家」は推理小説作家ということで多分、著者綾辻氏にとても近いと思われます。

冒頭作から、うっ!と思わせられるのですが、まずは「顔」。
場所は自宅に程近い「深泥丘病院」。
そもそも、この病院が怪しいのですよ・・・。
そっくりな顔の石倉という名前の3人の医師。
いつも手首に包帯を巻いている咲谷という看護師。
いつも何かしら変異に絡んでいる病院・・・。
検査入院をした深夜、彼はかすかな「ちちち・・・」というような音が気になり、その音の出所をさがす。
ようやく見つけた部屋の片隅の壁面。
白いクロスが薄茶色に変色した上、その部分がなにやら奇妙な形に盛り上がっている。
・・・人の顔?!
見てはいけないものを見たような気がして、
それ以上見ることができず、無理に眠り込む。
翌朝になれば、いやな夢を見た・・・そんな程度だったのですが、
その日、胃の検査のため、内視鏡を呑む。
その、モニター映像に写ったものは・・・
昨夜壁にあった人面と同じ・・・。

胃の中にできた人面瘡・・・。

うぎゃ~、こわいですねー。
いやですねー。
何で、こんなこと思いつくんでしょ・・・。
これなど序の口で、悪夢のような薄気味悪い話満載です。
ごく普通の日常に、ぽっかり明いた異次元へ通じる通路。
そんなものでもあるかのような、不安を感じされられます。

でも、この話は映像化しないで欲しい。
これは頭の中で想像するから怖いのであって、
映像に写し出されたら、へんにおどろおどろしすぎて、
逆に笑っちゃうかもしれない。

満足度★★★★


スターリングラード

2008年09月02日 | 映画(さ行)
スターリングラード

日本ヘラルド映画(PCH)

このアイテムの詳細を見る

1942年、第二次大戦下、ドイツとソ連の最激戦地スターリングラード。
なにしろ、冒頭の戦闘シーンがすごいです。
プライベートライアンにも匹敵するくらい。

ジュード・ロウ演じるヴァシリ・ザイツェフを含む大勢の兵士が列車でスターリングラードに到着するんですね。
貨物輸送用のその列車の扉を開けると、もうそこは戦場。
銃弾が飛び交い、いきなりドイツ軍機から空爆を受ける。
混乱のなか、兵士たちの二人に一丁の銃が渡される。
銃を持つものが撃たれたら、持っていないものが次に持つようにと言われ・・・。
ばたばたと撃たれ倒れていく兵士たち。
逃亡するものは容赦なく同軍により射殺。
まさに、進むも地獄、退くも地獄。
このスターリングラードがここまで激戦地となったのは、この街の名前のためです。スターリンの名前を冠したこの地を、
ソ連は意地でもドイツに明け渡すわけに行かない。
また、ドイツはドイツで、だからこそこの地を是が非でも手中にしたい。
街中は死体と瓦礫の山。

さて、このヴァシリは、狙撃の名手です。
実在の人物。
彼はスナイパーとして、徹底してドイツ軍将校を狙い撃つ。
ゴルゴ13並の腕前!
彼はソ連の戦意高揚のために、英雄に祭り上げられて行きます。

この映画は、立場としてはどちらの軍の味方もしていません。
どちらも、軍の上層部の勝手な思惑で一般兵の命が実に軽くあしらわれている。
そんなことを皮肉な視線で見ていることが感じられます。
・・・まあドイツとソ連ですから、アメリカ的立場としてはどちらに加担しないのも当然かも知れませんが。
・・・余談ですが、作品中ソ連軍が話しているのは全部英語ですから・・・。

さてしかし、そうなるとドイツ軍も黙ってはいられない。
ヴァシリを狙い撃つために、ケーニッヒ少佐が送り込まれてくる。
結局この二人の一騎打ちになっていくんですね。
それはお互いの行動を読み、瓦礫の影に身を潜め・・・息づまる神経戦となっていくわけです。
ほんのちょっとの動作、油断、判断ミスが命取りとなる。

映画は、この緊迫した銃撃戦を、ターニャという女性兵士とのロマンも絡めて、見所満載です。
私は、ヴァシリとターニャの大勢雑魚寝のなかでの密やかな交わりのシーン、
これはなかなかの名シーンだと思う・・・。
このシーンがあるからこそ、ジュード・ロウの起用なのでしょう、やはり・・・。

最後、どうやってヴァシリがケーニッヒに勝つのか。
つまり、そこに至るまでのいろいろな伏線と言いますか、因果と言いますか、
そこが、ドラマなんですよ・・・。
ジュード・ロウファンでない方にもお勧めです。

2001年/アメリカ・ドイツ・イギリス・アイルランド/132分
監督:ジャン・ジャック・アノー
出演:ジュード・ロウ、ジョセフ・ファインズ、レイチェル・ワイズ、ボブ・ホプキンス、エド・ハリス


ミリキタニの猫

2008年09月01日 | 映画(ま行)
ミリキタニの猫

アップリンク

このアイテムの詳細を見る

ドキュメンタリーです。
絵を描くホームレスの老人の話・・・と、それくらいの予備知識しかなく、見始めたのですが、すぐに引き込まれてしまいました。

リンダ・ハッテンドーフさんはドキュメンタリー作家ですが、
ニューヨークのソーホー、自宅付近の路上で黙々と絵を描いているホームレスらしき老人を見かける。
2001年、1月。
この寒空に、かなりの高齢のようだけど・・・と、気になって声をかけたのが始まり。
老人は自称芸術家。
日系人、ミリキタニ。
彼は日米開戦となった時に強制収容所に入れられ、ほぼ強制的に米市民権も放棄。
彼はアメリカ生まれなのですが、広島で少年時代を過ごしたという。
その故郷も、原爆で壊滅。
まさに、彼の人生は戦争で大きく狂ってしまった。
その行き着く先が、この、ホームレス生活・・・ということなんですね。

ハッテンドーフ監督は、気になって時折ビデオカメラを携えて、彼を訪ねていました。
そんな中で、9月11日。
あの同時多発テロにより貿易センタービル瓦解。
それは、ミリキタニの目の前で起りました。
リンダがかけつけてみれば、そんな中でもミリキタニは黙々と絵を描いている。
しかしあたりには火災による有毒ガスが立ち込めている。
深く考えるまもなく、彼女はミリキタニを自宅に呼び入れてしまう。
驚き!。
すっかり顔なじみとはいえ、よくこんな汚らしい、怪しい爺さんを・・・、と正直思いました。
実際あの時のニューヨークは平常心をも失わせる異常事態だったのでしょう・・・。
普通ドキュメンタリーでは、作り手は対象と深く係らないのではないでしょうか。
極力、第三者的立場として、カメラを回すだけ、
ドキュメンタリーって、そういうものだと思っていました。
しかし、彼女はミリキタニを自宅に引き入れることで、新たな一歩を踏み出すことになったのです。
インタビューで彼女は言っています。
9.11で自分は自分の無力を感じた、というのです。
何を言っても、やっても無駄なのだ・・・と。
しかし、それでも、自分は何かできるのではないか、やってみようという気になったのは、ミリキタニのおかげだ、と。
彼女は、ミリキタニの市民権や社会保険のことなどを調査し、
ついには老人ホーム入居までこぎつけます。
また、彼の姉がまだ生きて、アメリカにいることも突き止めました。

ようやく安息の生活を始めて間もなく、ミリキタニはツールレイクの強制収容所跡を訪れます。
ミリキタニは言うのです。
これでやっと、過去が通過点になった、と。
彼にとっては、時間は強制収容所でとまっていたのです。
この80歳になるまで・・・。
これがやっと通過点として、新しい人生に踏み出せる・・・。
たった一人の物語なんですが、なんて重いのでしょう。
そしてこれは、単にカメラに撮ったり、インタビューをまとめたりではなくて、
自ら踏み込んで行動した監督の勝利です。
胸が熱くなりました・・・。

ミリキタニの絵には猫が多く登場します。
かつて強制収容所にいたころ、一人の少年が、いつもミリキタニに猫の絵をせがんだというのです。
でもその少年はまもなく亡くなってしまいました。
そんな少年を偲んで、いつもミリキタニは猫を描くのです。

ミリキタニは、また、なかなかの反骨精神の持ち主で、
アメリカの社会保険なんか受けない!と、がんばっていました。
リンダの帰宅が遅い時には「女がこんな時間まで出歩くもんじゃない」と怒ったり、
日本の演歌を調子はずれでうなってみたり、
これがまた、チャーミングなじいさまだったりもする。
まあ、言ってみれば、「ハートフル・ヒューマン・ドキュメンタリー」ですかね。
人の運命を簡単に踏みにじる「戦争」を考えてみたい時、
この作品はお勧めです。

2006年/アメリカ/74分
監督:リンダ・ハッテンドーフ
出演:ジミー・ツトム・ミリキタニ、リンダ・ハッテンドーフ