遅ればせの緊急事態宣言出た。取りあえず首都圏で、大阪一体は、しばらく様子見だったねぇ。相変わらずの後手後手、要するに金を出したくない、責任は負いたくないって首相のせこさ、ここに来ても変わらない。あまりの感度の鈍さに、政権支持率もだだ下がりだ。入国制限も限定的にして、新型コロナが出たらすぐ止めるってもう早速出てるから入国者で感染者。先を読む力、人並み以下だってこともバレちまった。
前回は夜の街、今回は飲食店が攻撃目標に上げられた。夜は8時まで、酒の提供は7時まで。それでいて補償は不十分と来れば、もう、政府や知事のお願いなんて聞いちゃいられないぜ、ってお店も少なくないようだ。で、従わないと店名好評、晒し者!どう見たって向いた方向そのものが間違ってるよな。
と、いうことで、対応が出されるたびに辛い思いしてる人たちの声をコントで拾い上げた。前回の宣言発出の時とはちょっと状況違うようだが、同じような不満は、お客さん商売に根深く広がってだろうから、ちょいとキャバ嬢のつぶやきに付き合ってもらおうか。
菜の花座11月公演『ディスタンス』からだから、当然、一人芝居だ。
第4話「夜の街」
来客前のキャバクラ店。キャバ嬢、ソファに座ってインタビューを受けている。インタビュアーは小さなネットテレビ。一人でカメラを回しつつ質問をしている。が、当然、姿は見えない。質問は、あらかじめ用意したボードに書かれている。
キャバ嬢 珍しいよねぇぇ、店長が撮影許可するなんてぇ。
えっ、ネットテレビ?ってことは、普通のテレビじゃ映らないんだぁ、残ぁん念!でも、どうせ顔隠しするんだもんね。やるんでしょ、おたくも。きれいにかっこよく隠してよぉぉ。目線?ほら、目だけ黒塗りするやつ、あれはやめてよね。犯罪者みたいだもん。
希望としてはねぇ、メガネスタンプ。まん丸メガネで目を隠すやつ、あれ、超カワイイ!
それでわぁぁぁ、最初の質問にお答え、いたしまぁぁぁす。
と、フリップボードを前に掲げ、最初の行のカバーを剥ぐ。「コロナの影響は?」と書かれている。
キャバ嬢 散々(さぁんざん)!がばっと減った、お客さん。うちら、歩合制じゃん。相手していくらだからさ。苦しいのよぉ、生活。お涙金?
あっ、給付金って言うんだ。10万円もらったって、ぱぁーってなくなっちゃった。
でも、あれなかったらもっと悲惨だったかも。今頃、飢え死にしてミイラになってるかも。
だからさぁ、初め、風俗にはやらないとか言ってたじゃん。もう、むちゃ腹立ったよ。うちら、ぺットか?チワワ?トイプードル?だったら、税金取んなよ!消費税なしにしろよ!もう、大臣だかの、風俗は対象外って話し、ぜーったい、許せない!
あっ、次の質問?ああ、そう。
と、2行目のカバーを剥ぐ。「コロナでも来るお客さんはどんな人たち?」とある。
キャバ嬢 今来てくれてるお客さんかぁ。
まず、ご贔屓さんって言うか、ある意味ストーカー。あっ、いけね、店長こっちにらんでる。仕事仕事。えーー、とてもとても熱心なお客様でぇぇぇす。
あたし、ほら、若くて美人じゃない?でょ、でしょ。いいよ、今夜から贔屓になってくれたって。
なに?お金、ないって。そんなのなんとかなるよ、若けりゃ、女だって、男だって。
ああ、あたしの話しね。お目当てに来てくれる人多いんだ。この間もさぁ、結婚することになったから今夜でお別れだぜっ!って。
そんなこと報告に来るなってえの。てめえの金だからいいけどさ、じゃんじゃか吐き出させちまえって、盤振る舞いのバカ騒ぎ。お茶引いてる女の子みーんな呼び寄せてさぁ。どんちゃん騒ぎ。次から次抱き着いちゃ乾杯繰り返して、
で、コロナ陽性だって。バッカだよねぇ、男って。えっ?結婚はどうなったかって?知ぃらない。今頃病院で唸ってんじゃないの。
で、次の質問ね。
「この店が感染クラスターになった感想は?」
キャバ嬢 しかたないよぉ、秘密の花園、密着接待、濃密サービス!これお店の売りだから。
も一度言う?秘密の花園、密着接待、濃密サービス!そうよぉ、秘密の密でしょ、密着の密に、濃密の密。三密だから、お金になるの。
いつか誰か、感染するって覚悟はしてたよねぇ。
たださぁ、選りによって姐さんだったなんて。・・酷くなぁぁい?女手一つ、小さい娘育ててんだよ。
あたしが罹ればよかったのに、って思うよ、ほんと、嘘じゃないって。
しんみりとするキャバ嬢。店長の方をうかがいつつ小声で、
なのに、店長とかってぼろくそ言ってんの、油断するからだとかって。うちらの体でいい思いしてんのに、お前が体張れってのよ。あっ、これは内緒ね、編集してね。
でも、ほんと強欲だよねぇ。1日休んで店内消毒して翌日から通常通り。いっそ、休業命令?ての出して欲しいよぉ。で、休業中の給料も出してくれて。
最後の質問「夜の街と言われてどう感じるか?」を剥がし、
キャバ嬢 ふん、バカにして、軽蔑してんだろうけど、ほんとうはぁぁ、みんなうちらのことが怖いのよぉ。ほら、男の裏側知ってるじゃない、うちらって。男ってどんだけ嫌らしいか、助平か、身勝手か、ぜーんぶ知ってるから。公然の秘密ってやつね。それ、はっきりしちゃいそうで、だから、恐れてるわけ。
女は、嫉妬じゃない。結婚の直前にだって来ちゃうんだから、男って。だから、こういう機会にいびるのよね。夜の街、妖しい女、気味悪いホスト。やつらが元凶だ。やつらさえいなけりゃって。
と、窓ガラスが割れる音が響く。
キャバ嬢 ほぉら、また、定期便!自粛警察のいやがらせだよ。張り紙もあるよ、絶対。「コロナを広げるな!」とか、「出ていけ!店閉めろ!」
キャバ嬢、決然と立ち上がり、言い放つ。
キャバ嬢 止めるもんか!辺り一面、コロナばら撒いてやる!
第4話 完