萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第78話 冬暁 act.10-side story「陽はまた昇る」

2014-08-26 23:00:00 | 陽はまた昇るside story
dimness それでも希望は



第78話 冬暁 act.10-side story「陽はまた昇る」

シャツ透す湯に濡れてゆく、肩からシャワーの飛沫降りかかる。

抱きしめた腕も胸もシャツと湯を透かす体温ひとつ、震えるごと沁みてゆく。
水の音、かすかな嗚咽、石鹸やわらかな香、顎ふれる髪の水滴、ふるえる素肌。
抱きしめたまま濡れてゆくシャツに鼓動ひとつ響きあう、その温もりと震えに英二は微笑んだ。

「周太、泣いていいよ?」

泣いていい、今夜の君は。

誰だって普通は泣く、きっと君の父親だって泣いた。
その父親も泣いただろう、そのまた父親も、その親も、連綿と泣き続けてきた。
だから今ここで泣いたらいい、そのために今夜いちばん傍にいたかった背中を抱きしめた。

「周太、今夜は周太を思いきり泣かせたくて俺は来たんだ、独りで泣くより俺の傍で泣くほうがマシだろ?あのときの俺みたいに、」

あのときの自分、そう言ったら君はどの夜を思い出してくれるだろう?
こんなふう抱きしめてもらって泣いた夜は自分こそ多すぎる、そんな記憶に腕のなか濡れた黒髪がみじろいだ。

「えいじ…僕が何を泣いてるとおもうの?」
「俺との約束の時間に来れなかった理由だろ、周太?」

答えて笑いかけながら腕ほどき、棚のバスタオル一枚とる。
シャワー停めて、ふわり濡れた裸くるみこみ笑いかけた。

「周太が出たら俺がシャワーするからさ、部屋でゆっくり着替えなよ?それとも俺が周太のこと、着替えさせていい?」

こんなこと言ったら叱られるんだろうな?
その予想に笑いかけた真中で濡れた黒髪ふりむいて睨まれた。

「けっこうです自分でします、さっさとおふろのしたくしたら?あっちいってて、」

すこし棒読みな言い方は恥ずかしがっている。
そのトーン通り紅い顔そっぽ向いてタオル包まってしまう、この変わらないツンデレに笑って浴室を出た。



ばさり、タオル被って息吐いて鏡から自分が見つめる。
雫まだこぼれる髪に眉から頬ぬれる、泣いているみたいだ?
そんな感想と見つめるまま本音が可笑しくて英二はそっと笑った。

「は…泣いてるかな、俺、」

換気扇の音まじり笑った声がどこか泣く。
いま見つめる鏡は湯気かすんで曇る、その白い影に自分の目は泣いていない。
それでもシャワー浴びる間ずっと泣いていたかもしれない?その臆病が軋む。

『英二こそ僕を信じてる?』

ほら、髪拭きながら声また聴こえてしまう。
もう四日前の言葉、けれどタオル髪ぬぐう狭間に大好きな声は続いて裸の肩ふれる。

『僕は14年ずっと父を探してきたよ、良いことも悪いことも僕は知りたいんだよ?庇われたくない、英二こそ僕を信じてる?』

先週末に言われた言葉また響く、あの電話ごしの声と同じ意味だった。
ほんの15分前に言われた言葉、あれは信頼を問いかける。

『僕が何を泣いてるとおもうの?』

なぜ周太はひとり浴室で泣いたのか?

その解答ふたつ本当は迷っている、周太は今日どちらを選んだろう?
選択肢ふたつは唯一瞬で分かれていく、この分岐点あの人には大きすぎる。
午後遅い公園のベンチに見つめた電子文字の記事、あの事件で君が選んだのは?

“ いま向かいのビルが窓割れた、なんか機動隊っぽいの突入したけど全員マスクしてる怖い何? ”

機動隊は普通そんなマスクはしない、だからどこの部隊なのかもう解かる。
自分も実際に見たことは未だ無くて、それでも知識として知っている画像が記憶から映す。

警視庁特殊急襲部隊 Special Assault Team 通称SAT

入隊条件は身長170cm前後、独身、男性限定。
独身なのは「万が一」において家族も妨げとなるため、または「審査」を要するから独身の方が都合良い。
男性限定は体力から精神力の安定が求められるため、女性特有のホルモンバランス変化や不安定性は事故につながる危険が高い。
それは特に狙撃班員には要求される、二十四時間体勢で遠距離からの監視、警戒を行い状況次第では犯人射殺も辞さない、そんな任務は過酷だ。

―本当に狙撃したなら精神的な負担も大きい、どんなに平静に見えても初弾は、

自分も発砲経験がある、けれど威嚇射撃と狙撃は違う。
威嚇目的の発砲は「警告」そこに生殺与奪の意志は無い、でも狙撃の目的は「死」だ。

「…俺だって震える、きっと、」

独りごと零れて鏡のなか湯気そっと消えてゆく。
こんな自分ですら目的「死」なら震えるだろう、あの優しい人なら何を想う?
そんな想像に選択と答えは見えてくる、その確信に微笑んで扉を開き部屋に出た。

「周太、起きてる?」

タオル拭いながら呼びかけて小柄な背中を探す。
スラックス履いた脚は裸足のまま絨毯を踏む、タオル被っただけの肩に乾いた空気が涼む。
エアコン温まるオレンジ色のランプ下ソファへ振り向いて、その真中、座るナイフ持つ姿に叫んだ。

「っ、周太っ!」

なぜ、そんなもの持っているの?

すこし小さな手に銀色きらめく、あれはナイフだ。
あれは馨の遺品だと前に話してくれた、この記憶ごと腕伸ばし手首つかんだ。

「周太っ、なにしてるんだやめろ!」

叫びながら掴んだ手首に掌から軋む、だって細くなった。
日々の訓練に太くなるはず、それなのに少し細くなった手首からナイフひとつ零れ落ちる。

「なんで周太、なんで俺が離れた隙にするんだよ?やるんなら俺も一緒にやるから独りでやるなっ、」

きらり落ちた刃ランプ光らせテーブル転がる。
銀色の残像ただ視界の端に見ながらカーディガンの肩ひきよせ抱きしめた。

「お願いだ周太、俺の知らないところで死のうとかしないでよ?逝くなら俺も一緒に逝くから、だから独りでやるな周太お願いだから、」

抱きしめて黒髪やわらかに頬ふれる。
まだ濡れている髪さわやかに深い香が優しい、この香いつも傍に見つめていた。
いつも毎夜一緒に過ごした時は確かで、あの幸せだった記憶ごと抱きしめ頬よせた。

「周太、なにがあっても俺は周太の傍にいくよ?俺には周太しかいない、もう解ってよ…光一だって代りにならないの認めて、もう諦めて周太?
もう俺から離れられないって諦めてよ、こんな勝手な俺だけど全部で護るから離れないで…勝手にどこかいかないで周太、なんでもするから傍にいて」

頬よせて抱きしめたニットが素肌ふれる、被ったタオル素肌すべって肩から墜ちる。
ぱさり、かすかな音にスラックスの足許コットン墜ちて、その懐みじろいで黒目がちの瞳が見あげた。

「あの…えいじ?ぼく、りんごむこうってしただけなんだけど…ね?」

りんご、って今言った?

「え、?」
「あの、りんご、」

見あげ告げながら身じろいで左手さしだしてくれる。
すこし小さな手、けれど赤い林檎ひとつ確かに載せて微笑んだ。

「家からひとつ持ってきたんだ、コートのポケットに入れて…英二、寮生活だとりんご食べるとき無いでしょ?りんごは医者いらずだから、」

すこし小さな掌に赤い丸い林檎ひとつ、ルームライト艶めかす。
かすかな甘い香まだ傷ひとつない、その艶やかな果実に笑いかけた。

「ありがとう周太、周太のポケットに入ってたリンゴならすごく甘いだろな、」

林檎でよかった、

本音ほっと笑って背中の力抜けてしまう。
それでも離せないまま掴んだ手首に穏かな声が羞んだ。

「ふつうにあまいと思います…りんごむくから手、放して?」

放して、なんて今は聴きたくない。
そんな想いにさし出された林檎の手に掌そえて赤い実に口つけた。

かしり、さくっ

果実くだけて甘い香ひろがらす。
皮ほろ苦く軋んで実が甘い、さくり、甘さ呑みこみ笑いかけた。

「甘いよ周太、ありがとな、」

笑いかけ白い噛みあとまた口つける。
かしり歯に砕けて芳香あまい、さわやかな甘さに穏かな声すこし笑った。

「丸ごとかじっちゃうなんて英二、ちゃんと剥いてあげるのに?」
「このままで美味いよ、周太もほら、」

あまい香呑みこみ笑いかけて、添えた掌ごと赤い実しめす。
重ねたままの手すこし途惑っている、そんな眼差しへ綺麗に笑った。

「それとも周太、口移しで食べさせてほしい?俺がかじってあげるから、」

かしり、

ひとくち齧って笑いかけて黒目がちの瞳また途惑いだす。
いま困りだす眼差しの首すじ紅く昇りゆく、この恥じらい嬉しくなる。
だって何ひとつ変わっていない、その純粋な瞳ゆっくり瞬いて、そして告げた。

「英二、僕は誰も死なせていないから」

ことん、

あまい塊ひとつ喉から肚へ落ちてゆく。その軌跡やわらかに甘くて、けれど皮ほろ苦い。



(to be continued)

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閑話書覧:同居する癒し×内田百

2014-08-26 22:45:00 | 文学閑話散文系
猫、寝子、ねこ



閑話書覧:同居する癒し×内田百

内田百という作家をご存知ですか?

夏目漱石門下の文学者で東京帝国大学独文科を卒業後、
陸軍士官学校や海軍機関学校でドイツ語学教授を務め法政大学の教授になっています。
なんて経歴を書くとドイツ留学+軍医を務めた森鴎外と同系なカンジしますけど、百さんの作風はまた違います。

『ノラや』『クルやお前か』

飼い猫2匹をめぐる随想小説な作品です、
1代目ノラと2代目クルツに対する愛情をひたすら連綿と綴っているんですけど、
とにかく百の人柄がカワイイと思わされる作品で、近代文学で笑っちゃう×微笑ましいといえばコレかなと思います、笑

コレをベースに黒澤明監督『まあだだよ』という映画もあります、
これ自分的には好きな映画ベスト10に入る作品なんですけど、百の人柄と愛情+周囲の人間の温かみがイイです。
静かで穏やかな時間と映像の淡々とした空気×人の感情や願いみたいなものが温度になっている、人間っていいなーと思わせる映画です。

ちなみに内田百の「ケン」は「モンガマエ」+「月」なんですけど、
元はモンガマエに「日」で「内田百間」でした、で、この「」は環境依存文字なので文字化けします。



なんていう作品を描いているかと思えば、
夏目漱石の『夢十夜』を思わせるような幻想小説×ドイツ哲学みたいな作品もあります、

『件』

確か『冥途』に入っている短篇なんですけど、
人面牛身の「件=クダン」という妖怪というか珍獣になってしまった男の独白です。
大学の講義でとりあげられて読んだんですが、漱石の幻想系に連なりながら理知的な空気が独特。
なんとなく不思議空気で非日常感を味わいたいなっていうならおススメかもしれません、

が、個人的には『ノラや』の方が好きです、笑

にゃんにゃん 第55回ブログトーナメント



なんてかんじに気分転換に文学紹介してみました、笑

第78話「冬暁10」冒頭UPしました、加筆校正またしていきます。
Aesculapius「Chiron10」加筆ほぼ終わりました、当初の倍になっています。
第78話「冬暁9」校了しています、Favonius「少年時譚37」あと少しで校了します。

取り急ぎ、



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正午雑談:殉職の定義×学者

2014-08-26 12:45:10 | 思考雑談
正午雑談:殉職の定義×学者

理化学研究所の笹井芳樹博士が亡くなって3週間、
3週間前は色んな人がいろんなコト言っていましたけど、そのころ気になった言い回しを見たんでちょっと書きます、

「笹井氏の自殺は殉職だ」

ってカンジの文章ですけど、コレ書いた方は意味を理解して言葉を使ったのでしょうか?
言葉「自殺」「殉職」の意味+笹井博士が優れた科学者であることへ敬意ある発言なのかなと。

「殉職」=職業・仕事の職分・信念を護り全うするために死ぬこと、または一生を懸けること

殉ずる、とは信念や仕事を「全うするために」死ぬこと一生を懸けることです。
全うするって言うのは「成し遂げる」って意味になります、
で、気づかなくちゃいけない問題は、

自殺することは「全うする」といえるのか?

たとえば150年前の日本では「切腹」という死刑がありました、
切腹は「自刃」とも言いますが、イコール「自裁」自ら裁きを下すという意味です。
そこには自身の生命を今そのとき終わらせることでプライドや誇り、家族、家名、国家など何か「護る」対象がある。

自裁=「護る」対象がある自殺

ってことになるんですけど「自裁」と「殉ずる」は意味が近くて異なる言葉です。

「殉ずる」=信念や仕事を全うするために懸けた人生を終えて死ぬこと、本来は他殺による死や病死・老衰など自然死も含まれる

自裁は自殺だけど、より広範囲の死のありかたが「殉ずる」です。
だから「殉職」も本来の意味は自殺や他殺・早逝だけではなく「全うするため懸けた人生を終える」なので自然死なども含みます。
そんなワケで「学問に殉じた生涯でした」なんて言い方も学者への弔辞には使われるし「技術の発展に殉じられた」なんても言います。

対して自殺は「自分で自分を殺して命を終えること」であり「全うする」「護る」という意味は含みません。
同義語は「自死」自ら死ぬこと、ただ目的の有無を問わずに自分から生命を放棄することが「自殺・自死」です。
ようするに「生きることが嫌になった辛い、だから死ぬ」という理由なら自殺であっても「殉ずる」にならない。

で、笹井博士の自殺は「職分を全うした死」殉職だったのか?

彼は「科学者」であり立場的には「学術指導者」です、
そして当時の職務は「STAP細胞の有無を確認する」ことによる「日本の科学に対する信頼回復」でした、
また「指導した後輩科学者のサポートと教導」であり「日本の学位および学術にある不信感を是正」することです。
このどれか一つでも全うした自殺だと言えるでしょうか?

笹井博士が優れた科学者といわれる代表的研究はES細胞です、
このES細胞は受精卵をベースに作ります、そのため生命倫理に抵触するという現実があります。
正確にいえばES細胞=受精卵または受精卵より発生が進んだ胚盤胞段階の初期胚を用いて作るんですけど、
この受精卵・胚細胞について、ずっと法律上もされている議論「胎児に生存権を認めるのか」に関わる問題があります。

「妊婦を殺害し胎児も死んだ場合、殺人されたのは2名か1名か?」

これが胎児の生存権の問題ですけど、感情論で言えば胎児=おなかの赤ちゃんにも命を認めたいですよね?
けれど胎児については医療からの問題点「堕胎」と「不妊治療」があるため、現行法は胎児の生存権を認めていません。
堕胎は母体の生命維持に必要とされる場合があります、また犯罪被害による望まない妊娠への救済措置として堕胎が行われる事もあります。
不妊治療は子供を望む=生命の誕生を叶えるためにありますが、そこには「試験管児」=受精卵を人工的に生み出す処置が行われています。
堕胎も不妊治療も「受精卵・胎児」が関わるわけです、これに生存権を法律上でも認めれば産科医療の現場で殺人罪が起きてしまうわけです。

こんなふうに受精卵は生命倫理の問題が大きな存在で、そのため受精卵由来のES細胞は倫理上の問題が大きいワケです。
実験段階ではマウスで試作していればいい、けれど医療現場の実用段階で人間の受精卵を使えば「他者の命を犠牲にする」ことに繋がる。
ようするに、

受精卵・胚細胞=人間になる存在

だから受精卵による治療方法は他人の命を犠牲にすることへの肯定になります。
これに対して山中教授のips細胞は「患者本人の体細胞由来」です、そのため上述の生命倫理の問題がクリアできている。
そしてSTAP細胞も実現可能ならips細胞と同じく生命倫理の抵触も無く、かつips細胞より簡単に作製できるという利点もあったワケです。
これが実現化すれば再生医療の現場、たとえば脳の神経細胞の劣化によるアルツハイマー病など細胞異常による難病治療の期待がされました。
これらの治療についてips細胞が臨床段階へ進み始めていますが、より作製が簡単なSTAP細胞には期待も大きく実験が世界中でされたわけです。
けれど現実にはips細胞の成功例は他に無く、論文もコピペ・剽窃だけではなく証拠として重要な画像までips細胞ではない映像だった。
こうした論文を「提出許可した」ことは学者として指導者として犯したらアウト、そして今回は個人の問題に留まりません。

剽窃とは「他者の文章・論を引用したのに引用元を明らかにせず自論のよう見せかける」ことです、
人が何か文章を書くとき、考えたり資料を調べたりと時間も能力も費やした結果として文章などが生まれるワケですが、
こうした頭脳から生まれた成果物を「知的財産」と言います、その一つとして「著作権」があり全ての著作=作りだしたものにある権利です。
こういう頭脳・思考から出来た産物はいわゆる「物体」としては無い、だから財産として見えなくて簡単に盗用する人も多いのが現状です。
だから今回も「コピペが悪いことと思わなかった」という発言もあったワケですが文章も財産です、無断使用すれば権利侵害として罪に問われます。
作者に私用許可を得るor「引用文献」「参考資料」として書名・作者名を明記する、そうすれば剽窃ではなく抵触することもありません。
それは創作物、文章や画像などに対する尊重であり作り手への敬意です、こうした謙虚な姿勢が無いものは「唯一本物」とはいえません。

こうした剽窃などは学者なら一番最初、大学入学の時や論文指導で教えられる作法で当然の義務でもあります。
これは指導する側は必ずチェックすべき点でもある、その論文が所属組織の外に提出するものなら組織自体のプライドに関わるコトです。
そして国外に発表するなら自国の学術界を代表する責任を負うことになります、それはプライドだけの問題ではなく信頼性がポイントです。
もし誤った論文を提出したなら国全体の学術レベルから技術力・国家の信頼度まで壊しかねない現状があります。

こういうの大袈裟って考える方も多いかもしれませんけど、知的財産は「物体」じゃない無形だからこそ信頼性は重要です。
まして科学的研究は検証実験にも経費と時間が掛かります、金も時間も費やす元ネタが正解ではなかったら信頼性はどうなりますか?
それが国を代表する機関に所属する研究者が発信したものであり、その研究者を指導したのは優秀だと信頼されていた科学者だったなら?

笹井博士は理化学研究所の代表的指導者の一人であり、優秀な科学者でした。
だからこそ周囲も彼を信頼してSTAP細胞の研究を推し、科学雑誌も掲載して世界中が新しい医療方法の希望に懸けたんですけど、
そういう彼だからこそ失った信頼も大きかったワケですが、でも信頼を取戻せる可能性も大きかったはずです。

彼に課されていたのは「日本の科学への信頼回復」と「日本の学位および学術にある不信感を是正」でした、
どちらも一個人には大きすぎる課題です、プレッシャーも罪悪感も大きすぎて当たり前のことだろなと。
でも彼だったら成し得る可能性があるからこそ課された現実だと思います、

彼がなぜこんな事件の渦中に踏みこんだのか?

嫉妬、虚栄心、自尊心、組織内または学術上の立場、いろんな要因の結果だろうなって推定しか出来ません、
それでも優れた科学者として生きていた現実は彼本人が積みあげた時間の成果です、
そして貶めてしまったことも彼の時間たちの結果で、彼自身が選んだ道です。

けれど彼は全うしないまま自殺しました、誰がその代りを出来るのか?

なんて問いに答えられる人間は今まだいません、
彼なら取り戻せかもしれない、けれど取戻す前に放棄してしまったのが現実です。
一個人としての問題がたとえあったとしても優れた科学者だったと賞賛されるのが彼の現実です、
その「優れた」才能に立場に彼が全うすべきことは大きくて、けれど途中で放りだしたことは彼の才能と尊厳のため同情すべきじゃない。

彼の死を「殉職」と言って同情する方は多いと思います、それは偽善者の詭弁です。
心から彼という人間と才能に敬意を払うなら、彼の全うできなかった死に「殉職」と名づけるのは残酷で傲慢な嫌味です。
名声や立場を得た人間が堕ちて死んだ事を同情で美化して飾りつける言葉を贈ることは相手に対する蔑みでしかない、憐憫という快楽です。
そうした安易な同情を彼が望んで自殺を選んだのだとしても、彼という唯一の可能性と才能と尊厳のために「殉職」なんて言うべきじゃない。

学問は「世界の尖塔」だから学者は世界の舳立っている、その可能性と希望は自身の才能と人格に負う責任で義務で権利だ。

そんな言葉があります、なにかの本にあった文章で恩師の台詞としても聴かされた言葉です。
そんなふうに自分は教わりましたけど、これは学者に限らず生きてる誰にも全ての立場で言えることかなって思います。
学問なんて言うとカタクルシイとかムズカシイとか言う人もいるけれど、

マンガ=文学(ストーリー)+美術学(イラスト)
ゲーム=文学(ストーリー)+美術学(イラスト)+工学(コンピューター)
ファッション=美術学(デザイン)+家政学(縫製・織工)+工学(織機・紡績)+数学(流行の確率など)

ってカンジに学問は身近から世界全体アレコレ作っているものです、
いわゆる「生きるにおいて」ある世界の有形無形を謎解きしてヨリ豊かに楽しくするためにあるのが学問、
世界の謎解き+構築するための存在が学問ってことです、だから「学問は世界の尖塔」だとも言われています、

笹井博士も「世界の尖塔」科学という学問の舳に立った一人です、
彼の可能性と希望は彼の才能と人格に負う責任で義務で権利、だからこそ今このとき自殺すべきじゃなかった。
才能と功績にプライドがあるからこそ挫折感も大きかったと思います、けれど挫折も才能で超えられる可能性もあったはず。
彼の才能と人格が踏みこんでしまった事件と課された現実を全うして、その先にあるはずの可能性を見つけるため生きたら良かった。

大きな可能性を全うできる科学者で人間だった、だから殉職じゃない挫けた卑怯者の死だ、

そう言ってあげるほうが才能と生きた時間と、彼の科学と命に対する敬意だと思います、


なんてコト想ったので休憩ナガラにだらっと書いてみました、笑
この一連の事件については色んなトコで色んな人が言ってますけど、哀しいなって思う意見も多いなと。
なにが?っていうと剽窃論文のNGが解ってない人多すぎる=大卒者の低レベルにびっくりしたのと、安易な同情論が多すぎるアタリ。
ここで小説を書き始めて他のWEB小説を読む機会も増えたけど、残酷エログロR18違反や盗作剽窃が「当たり前」な現状が事件の根底なんだろなと。
そういう系のヒトは「知らなかった」で赦される無罪とか思ってるみたいだけど、こんな↑結末もあるのが現実です。

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雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚193

2014-08-26 00:35:01 | 雑談寓話
雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚193

1月上旬の月曜日、御曹司クンと呑みながらアレコレ話した夜、
放りだし気味に帰宅してからメール友達とやりとりして花サンとも往還した、

From:花サン
Re :こんばんわ、今日もお疲れさまー、
   メールありがとう、詳細とか気になるけど電話したら長くなりそうだよね?笑
   明日のお昼とか一緒出来たら嬉しいけど、帰りにコーヒーも私的にはアリです、

Re2:こんばんわ、帰りにコーヒー大丈夫だよ、

ってカンジに明日の約束して、
明日は今夜のこと話すんだろな考えながらパソコンやることやって、
部屋の電気を落して文庫本とベッドに転がったら携帯また着信した、

From:御曹司クン
本文:いろいろ話してくれてありがと、俺たぶん明日は目が腫れてると思う。
   なんて言っても振り向いてくれるワケじゃないの解かってるけど今も泣いてる、、
   こんなに泣かされても大好きだ、おまえに嘘吐かれてない分だけ信頼されてるって嬉しい。
   田中さんのこと俺ほんとは解らない、でも彼女に意地悪したかったんじゃないのは解かってよ?
   もう俺の事なんか信じてくれないだろうけど、おまえへの気持ちは本物だって自分で思う。
   やっぱり愛してる、

なんてカンジのメールが着て、
それボンヤリ眺めながらもう眠くって、で、寝落ちした。

それで翌朝はパン屋に寄ってフツーに出勤して、
いつもどおり買ってきたパンとコーヒーで朝ごはん@自分の机して、仕事して、
いつも通りな一日に仕事しながら忘れていたこと思い出した、

そういえば御曹司クンのメールに返信してなかったな?

って気づいたのは着信から12時間以上経過していて、
仕事合間の休憩した自販機前、携帯電話チェックしたら特定Noサイレントモード設定になっていた、
もちろん特定No=御曹司クンなワケで、そういえば帰りの電車でモード設定したままになっていたの思い出した、

コレだと御曹司クン着信も受信も気づかないな?笑

なんて我ながら呆れて笑って、
缶コーヒー啜りながらチェックしたら朝と昼に各1件ずつ受信していた、

From:御曹司クン
本文:おはよ、もし今日廊下ですれ違っても無視しないで?

From:御曹司クン
本文:いま昼、何度もメールしてごめん。
   昨夜から返信何も無いけど、これってもう終わりってこと?
   廊下でも今日は会えてないけど顔見たいけど、おまえの席に行くのも怖くて行けない。
   こんなとき別室なのは辛いけど、顔見るたび無視されたら泣きそうだしこれでいいのかなとか考える。

なんてカンジのメールを読んだのは午後16時とっくに過ぎていた、
いつもながら忙しくて昼ゴハン遅め且つ新チーム同僚と一緒だったから携帯チェックもしていなくて、
でも、

もし読んでいてもそのとき返信はしてなかったろな?

なんてこと考えながら文面を眺めてコーヒー飲んで、
とりあえず今は返信するの止めよう、って決めて携帯電話ポケットにしまい席に戻って、
また忙しい時間がすぎていくまま終業時間+1時間後、花サンが席に顔出してくれた、

「おつかれさまです、忙しそうですね?」

忙しそうだけど行ける?って訊いてくれてる、
で、今夜の約束を思い出して時計見ながら答えた、

「忙しいよ、あと1時間くらいで上がれる程度にね?笑」
「あ、私と同じペースです、じゃあまた、笑」

ってカンジに会話&約束かわして、で、1時間後に仕事あがって、
いつものコーヒー屋のいつもの席で一杯飲みはじめたら花サンが来た、

「おつかれさまです、トモさんの方が早かったね?笑」

思ったより元気そうな笑顔に嬉しいなって思った、
もっと笑わせてあげたいな思って、で、言ってみた、

「オツカレサン、このままゴハン行く?もう8時過ぎるし火曜ならあの店、予約なしで平気だろうし、笑」
「行きたい、今日も遅くなりそうってお母さんに言ってきちゃったし、笑」

なんて笑ってくれた言葉は最初から話しこむツモリだったんだろう、
その気持ちナンカ解かるなって思いながらコーヒー飲み干して外に出て、で、思い出した、

そういえば御曹司クンのメールまだ返していない+特定Noサイレントモードのままだ?




第78話「冬暁9」+Favonius「少年時譚37」読み直し校了は明朝になるかなと、
Aesculapius「Chiron 智者の杜 act.10」加筆校正まだ倍くらいする予定です、
ってカンジにとっ散らかってますが眠いんで仕方ないです、笑

で、昨日はバナー押してもらえたので今夜も短めですがコレもUPしました、
この雑談or小説ほか面白かったらバナーorコメントお願いします、続けるバロメーターにもしてるので。

取り急ぎ、



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short scene talk ふたり暮しact.67―Aesculapius act.80

2014-08-25 22:25:02 | short scene talk
二人生活@帰省8本宅夜話
Aesculapius第5章act.9-10の幕間



short scene talk ふたり暮しact.67―Aesculapius act.80

「はー…(脱力顔)(ああなんとか僕お風呂タイム逆上せ乗り切ったな僕ほんと煩悩塗れだよね明日の緊張の所為ってコトにしておきたいけど照困惑)」
「…でもよかったな(笑顔)(逆上せ治めながら散歩できたし蛍よろこんでくれたし綺麗だったし光一が照ほんと蛍の灯に綺麗で萌)」
「雅樹さん、入ってイイかね?(布団いっしょに敷くんだもんねっ)」
「っ、照(ああ光一やっぱり来てくれちゃうよね部屋あるけどやっぱそうかな照×嬉でも今ちょっと)」
「雅樹さん?どうしたの?(返事ないなんて寝ちゃってるかね疲れてたもん心配)ね、入るよ?」
「あ、照×萌(あ光一きれいだ寝間着もやっぱり似合うな白が映えて可愛いどうしよう萌×悶々)」
「起きてたんだね、雅樹さん、(安心笑顔)ね、返事無かったけど具合でも悪いの?」
「あ、(ああ僕ったら光一に心配かけちゃったな反省)いや、ちょっと明日のこと考えてぼんやりしてた、ごめんね?(笑顔)(ごめん嘘吐いて恥)」
「ん、考えごと邪魔しちまってごめんね?(よかった具合悪いんじゃなくて)」
「あ(あ僕また光一に謝らせたりして恥)邪魔なんかじゃないよ、どうしたの?(笑顔)(ってきっと布団のことだろな照)」
「ん、蒲団を敷くんだけどね、雅樹さんの部屋でイイ?それとも俺の部屋にする?(御機嫌笑顔)(ドッチの部屋が良いかねっ)」
「え、っと、照萌(ああやっぱり一緒に寝る前提な話なんだね部屋あげても嬉×萌悶)あ、光一はどっちが良いかな?照萌」
「ん、じゃあ今夜は雅樹さんの部屋がいいかね?ね、蒲団この大きいの敷いてあげるねっ、(昼間に干しといたから気持イイね)」
「あ、照悶(あ待って光一その蒲団って夫婦用のじゃないかなそれってそういう意味なの光一でも僕明日は仕事だし悶々でも敷き始めちゃった照)」
「コレ大きくってイイね、雅樹さんが背高いからって吉村のバアさんが作ったのかね?それとも雅嗣伯父さんも背が高かったから?(御機嫌笑顔)」
「あ、照(やっぱりそっちの意味で敷いてくれるんだね僕また煩悩塗れだ恥ずかしいな照悶々)そうだね、たぶんそういうことかな?」


気分転換に会話短篇UPしました、雅樹と光一@本宅雅樹の寝室譚です、笑

Aesculapius「Chiron 智者の杜10」加筆まだします、雅樹と光一@本宅の朝です。
第78話「冬暁9」読み直したら校了します、英二と周太の再会@ビジネスホテルにて。
Favonius「少年時譚 act.37」もういちど読み直したら校了です、
それ終わったら第78話の続きか短編連載を予定しています。

取り急ぎ、



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雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚192

2014-08-25 01:36:02 | 雑談寓話
雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚192

「花サンが傷ついてるって解っても本気で謝るツモリ無いだろ?そういうのって花サンを大事に想ってる自分ごと粗末にしてくれちゃってるよ、こんだけイイカゲンに扱われたら嫌って当り前だろ、」

「謝るから、田中さんにも謝るから俺を嫌いにならないで、お願いだから嫌わないで…きらわれるのだけは嫌だ、俺おまえには嫌われたくない、」

なんて問答した1月上旬の月曜日@ダイニングバー半個室、
ちょっと今は無理だな思いながら御曹司クンの腕ほどいて勘定の半分を置いた、

「嫌われたくないなら今は帰らせて、月曜だしさ?オマエも早く帰んなね、笑」

って言ってさっさと店を出た、
勘定しなきゃない御曹司クンは追いつけないだろな?
って考えながら駅に着いて改札さっさと潜って乗車して、すぐ花サンにメールした。

To :花サン
本文:おつかれさま、御曹司クンと帰り呑んで少し話してきた、
   全部話したよって事だけは言っといたよ、詳細とか聴きたい?

とりあえず気にしてるだろな?
そう想ったから送信して、そしたら別件着信した、

From:葭田
本文:おつかれ、正月はアリガトな。
   歯医者の彼に駅で会ったよ、なんか本の交流してるとか聴いたぞ?

大学の友達に歯医者は話したらしい、
そんな他愛ないメールに笑って返信した、

Re :おつかれ、こっちこそ色々ありがとね。
   歯医者、おすすめの本あるかって訊かれるから答えてるよ、笑

また友達と歯医者の間で話題になるかもな?
そんなこと考えてたら別件着信した、

From:小林
本文:おつかれー新年会しよ、今週末どう?
   メンバーはいつもので先生も声かけてあるよ、金曜夜と土曜夜ならどっちが良い?

大学の友達の次は高校の友達だ?
こういう偶然もあるんだな思いながら返信した、

Re :おつかれ、幹事ありがとね、笑
   夜なら金曜も土曜も今のトコ大丈夫だよ、

なんて感じにメールやりとりしてたら最寄駅に着いて、
まだ開いていた本屋ちょっとのぞいてから帰宅して、風呂すませて、
コーヒーすこし薄目に淹れてパソコン開いてやることやってたらメール着信した、

From:花サン
Re :こんばんわ、今日もお疲れさまー、
   メールありがとう、詳細とか気になるけど電話したら長くなりそうだよね?笑
   明日のお昼とか一緒出来たら嬉しいけど、帰りにコーヒーも私的にはアリです、

そりゃナントナク長くなるだろね?
なんて納得しながら明日の方が色々良いのかな思いながら返信した、

Re2:こんばんわ、帰りにコーヒー大丈夫だよ、

これで明日は今夜のこと話すことになるんだろう、
そしたら花サンは何を考えてどんな選択するんだろうか?
なんて考えながら自分もイイカゲンにしないとなとか思った、

でも御曹司クンの今夜の容子では、そう簡単にバッサリ切るのもどうなんだろう?
それとも仲良くなってしまう方が色々と弊害も少ないだろうか、っていうか自分はどうしたいんだろう?

そんなこと考えながらパソコンやることやって、
部屋の電気落して文庫本とベッドに転がったら携帯また着信した、

で、御曹司クンからだった、

第39回 昔書いたブログも読んで欲しいブログトーナメント

第78話「冬暁9」読み直したら校了+Favonius「少年時譚37」加筆すこしで校了します、
そのへん終わったらAesculapiusか短編をUPするつもりです、

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楽しんでもらえてたら嬉しいんですけどバナー&アクセス減ったので打ち切るかもしれません。

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第78話 冬暁 act.9-side story「陽はまた昇る」

2014-08-24 23:20:00 | 陽はまた昇るside story
breather 君に時を



第78話 冬暁 act.9-side story「陽はまた昇る」

ルームライトのオレンジ色は記憶のままに暖かい。

師走の早い日没に夜は来る、もうカーテン向こうは黄昏も暮れる。
それでも小さな一室はルームランプに明るんでテーブル越しの横顔を照らす。
すこし伏目がちに睫の翳が長い、その首すじ昇らす薄紅色に英二は笑いかけた。

「周太、隣に座ってくれないの?」

せっかく二人掛けのソファなのにな?
そんな想い笑いかけたテーブル越し黒目がちの瞳こちら見て、穏やかな声が言った。

「ごはん食べるには窮屈でしょ、英二の体大きいから…家でも食事の時は向いあいだし、」

すこし羞んだようなトーン答えてくれながら包み開いてくれる。
買ってきた惣菜ならべる仕草は手際いい、相変わらずの主夫姿が嬉しくて微笑んだ。

「周太が並べてくれると美味そうになるな、周太の料理が食べたくなる、」

手料理、もうどれくらい食べていないだろう?
そんな月日数えかけた前に缶ビールさし出された。

「あの…はい、」

今きっと恥ずかしがって困っているな?
こんな貌も懐かしくて嬉しいまま受けとった。

「ありがとう周太、」
「はい…あの、いただきます、」

また気恥ずかしげに答えて箸をとる。
その仕草ひとつ端正に変わらなくて、見惚れながらプルリング引いた。

かつん、

乾いた音に口づけ啜りこんで、ほろ苦い。
アルコールの香、水滴あわく光る缶、ほっと吐いた息にオレンジかすかに混じる。
爽やかで甘い香は懐かしくて記憶の数だけ愛しくて、けれど今は知ってしまった理由に笑いかけた。

「周太、今日はのど飴いくつ食べた?」

はちみつオレンジの香は咳こんだ痕。
咳こんだ数だけ今日を無理した、その理由を聴きたいけど訊けない相手は小さく笑った。

「ん…ふたつ?」
「俺にもくれる?持ってるんだろ、」

笑いかけたテーブルの向こう、カーディガン姿が立ち上がってくれる。
ハンガー掛けたダッフルコートのポケット探す、その背中が3ヵ月前より細い。
夏の終わりにも見たカーディガンの背中、あの体温また捉まえたくて英二はソファを立った。

「周太、」

名前を呼んで腕を伸ばし、カーディガンの背中そっと抱きしめる。
ふわりオレンジ甘く頬かすめて黒髪やわらかに顎ふれる、この身長差なにも変わらない。
それなのに抱きしめた肩は華奢になった、その現実はニット透かす体温にも告げられて微笑んだ。

「すこし熱っぽいんだろ、周太?先に風呂すませてくれていいよ、楽になるから、」

きっと無理をした、そんな容子に夕暮の電子文字が映りこむ。

“ いま向かいのビルが窓割れた、なんか機動隊っぽいの突入したけど全員マスクしてる怖い何? ”

ビルの窓を割ったのは、いま抱きしめる人の手かもしれない?

その結果は何が起きたか未だ解らなくて、それでも信じている。
この人は何があっても変らない、そして変えられそうにない想いごと抱きしめた肩そっと微笑んだ。

「ありがとう英二、でも英二こそ先に入って…冷えちゃったでしょ、」

優しい言葉ほほ笑んで手に掌を重ねてくれる。 
ふれる温もり少し熱い、きっと疲れの微熱ある手に笑いかけた。

「だったら周太、一緒に入ろ?もうずっと一緒に入ってないよ、」

君と一緒の風呂なんて、もう何ヶ月前の事だろう?
考えて直ぐ思いだせない程その時間が遠い、あれは夏だ。

『北岳草を必ず見せて?英二、』

北岳草、あの花を約束した夜から5ヶ月すぎた。
あの約束の夏まであと7ヶ月、この時間に自分は何を出来るだろう?
そして今日まで自分は何を出来たのか?その焦り願いごと抱きしめる人が羞んだ。

「…いっしょにはいるのはだめです」

やっぱり今夜は拒まれちゃうんだ?

こんなこと当たり前だろう、だって今夜は話すためにある。
それなのに一緒に風呂へ入れば済し崩し、そんな予想と納得に笑った。

「じゃあ周太から入ってよ?そうしないと俺、周太を連れこむの我慢できそうにないよ?」

こう言えばきっと先に入ってくれる、そう謀った台詞に赤い首すじが肯った。

「ごはん食べたらはいります…だからちょっとはなれて?」




水音くぐもる扉越し、気配たしかめながらイヤホンに耳澄ます。
午後に掴んだばかりの鍵は耳元で語ってゆく、その記憶を刻む。

“ 電話したら晉伯父さんが出てくれた、待っていたと言われたよ…それでここに待ち合せて、英二の言う通り不起訴記録を私は見せたよ、”

綺麗な低い声は録音にも透ってゆく。
もう覚悟を決めた、そんなトーンに父の声は語る。

“ なぜ不起訴にしたのか、その理由は小説の通りなのかと訊くことは正直怖かった、もし事実なら法律も法曹も解らなくなるからな…でも訊いた、”

語る言葉を追いながらチェスターフィールドのウィングバックが映りだす。
重厚なめらかな革張りの椅子に端正な顔は佇んだ、あの切長い瞳は過去を見ていた。

“ すべて事実だと伯父さんは認めたよ、いつもどおり静かに笑ってな…戦後を支えた学者のスキャンダルだ、国ぐるみ隠したがるのは当然だろう、
そう納得しながらも信じたくなかったよ、国も法律も個人を守る存在じゃ無いと認めることだからな?司法試験に受かったばかりの私には厳しかった、”

静かな口調、けれど絶望が悶えている。
この想いを父は三十三年ずっと抱いていた、その後悔を自分はしたくない。

「…だから周太、俺を棄てないでよ?」

独り呟きながら録音を頭脳へ覚えこむ。
もう三十年より前に断絶された父と湯原家の選択、けれど自分が再び繋いでしまった。
そのことを父は何を想い見つめていたのだろう?そんな推測に3月の言葉が今やっと解かる。

『この息子は、お家にとって邪魔ではありませんか?ご迷惑であれば、今すぐ私が無理にでも連れて帰ります、』

春3月、川崎の家に訪問した父は自分を連れ戻しに来た。
あれは同性愛の結婚を止めに来たのだと想っていた、けれど本当は違う。

『とても恨むことは出来ません、私は心から納得するしかありません…同じ男として私は息子が羨ましい、英二が選ぶなら私には止められません、』

三十三年の後悔は今も哭いている、だから父は納得するしかなかった。
三十三年前に父が選びたかった道は今の父とは違う、だから息子を羨ましいと言ったのだろう。
だから息子の選択を父は止めない、その証に渡された封書は封緘されたまま自分の鞄に入っている。

―物証も証言も揃ったけど、確実に観碕を追い詰めるには、

五十年前の不起訴記録と拳銃、小説、そして田嶋の証言と父の証言。
不起訴記録には観碕の名前も記される、これが不正なのだと小説と父の証言が裏付ける。
小説の信憑性は拳銃とその埋められていた「奈落」の所在地、それを田嶋の証言は傍証してくれる。

これだけ揃えても観碕は否定するかもしれない?けれど構わない、

「…どうせ時効だしな、」

独りごと微笑んでイヤホンの台詞に頷けてしまう。

“ 国も法律も個人を守る存在じゃ無いと認めることだからな ”

そう父が言った通りだ、きっと「個人」を護るためじゃない。
だから観碕はいつも大義名分が必要なのだろう、そんな男だと今もう直接に知っている。
こんなふうに集めてきた事実たちを今夜、あのひとは全てを聴きだそうとするだろうか?

『僕は14年ずっと父を探してきたよ、父の全部を受けとめる覚悟も出来てるんだ、良いことも悪いことも僕は知りたいんだよ?庇われたくない、』

大雪の夜、そう電話ごしの周太は告げた。
知りたいと告げて会いたいと言ってくれた、だから「知りたい」が目的だろう。
そう解っているから今も想いが解らない、今、周太は自分を想ってくれているだろうか?

―飯のときは他愛ない話しか出来なかったな、呑ませても酔ってくれないし、

大雪のこと、大量遭難事故のニュース、芦峅寺出身の谷口のこと。

そんな話を訊かれるまま口にして食事した、周太も大学の話をしてくれた。
缶ビールとオレンジジュースで作った即席のカクテルも喜んでくれた、あの酒に夏の約束を想ってほしかった。
そんな願いと食事したテーブルはもう片付いて今は缶ビールひとつだけ、この風景に他愛ない会話すら幻のよう想えてしまう。

今夜ここに居るのは現実だろうか?

「…あわよくばって考えてはいたけど、」

本音こぼれて笑いたくなる、今夜ここに期待してしまう自分が可笑しい。
あの電話から相手の想い量っては自信失くしそうで、それでも縋りたい本音に公園も2度待った。
もう来てくれないかもしれない?そんな不安にも離れられなくてベンチ座りこんで、そうして逢えた今だから期待したなくなる。

諦めかけて、そして掴めた今の時間だから想いすら取戻せる?

そんな期待するから今も録音を記憶している。
この証言から得られる「鍵」まだあるかもしれない、まだヒント隠れている?
その可能性に探るまま声は終わって、ほっと息吐きイヤホン外して水音に気がついた。

「…泣いてる?」

シャワーの音かすかに嗚咽まじっている?
そう気がつくまま小さな機械ポケットにしまい、浴室の扉に立った。

さああっ、…ぅ、

水降りそそぐ音、そして小さな微かな声。
それでも確かに泣いている気配に英二は呼び掛けた。

「周太?どうした、」

かたん、

掴んだドアノブ素直に回って扉が開く。
ふわり石鹸の香ふれて湯気くゆらし熱ふれる、そのカーテン向こう気配ふり返る。
きっと泣いている、そう解ってしまう空気ごとカーテン引いて湯の飛沫ふる背中を抱きしめた。


(to be continued)

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雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚191

2014-08-24 06:25:03 | 雑談寓話
雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚191

「おまえといられる彼女が羨ましかったし、おまえのこと話せる相手なら楽しい思って、さー…なんでもいいからオマエと繋がってたいから、」

なんて同僚御曹司クンから言われた1月上旬月曜の終業後@ダイニングバー半個室、
こんなこと言われて自分が喜ぶとか本気で思ってるんだろうか?っていう疑問ごと肚立っていた、

だってこんな言い分は花サンを見ていない、

「で、おまえは花サンのドコが好きなワケ?好きだってメールとかでも言ってたなら、好きなトコなんかあるはずだよね?」

彼女のどこが好き、ぐらい答えてくれるよね?
っていう期待で訊いてみたけど御曹司クンは言った、

「仕事一生懸命なトコとか好きだし、女じゃいちばん好きだと思うし、」
「女で一番とかじゃダメだって言ったろ?花サンは人間のなかで一番になれないと難しいってさ、」

女とか男とか関係ない、誰より一番に見つめてほしいって花サンは願っている。
そうじゃなかったら難しいくらいホントは御曹司クンだって解かっているだろう?
それなのに拗ねたような怒ったような目でコッチ見て御曹司クンは言った、

「そんなの、俺が誰を一番好きか解ってる癖に言うなよなっ…何したって俺マジでおまえと」
「何したってイイなんて考え方は嫌いだよ?」

ばっさり言ったテーブル向こう、御曹司クン一瞬固まった、

「…きらいって、そんな無表情で言うなよなー…それとも俺のことほんとに嫌いなわけ?」

嫌いだよ?ってもし言ったらどうなるんだろう、

今ここで嫌いだって言ったら全否定の拒絶になるかもしれない、
そうしたら御曹司クンは自分じゃない誰かを探すだろうか、それとも同じこと繰りかえす?
誰かを欲しいと思ったら周り全部を巻き込んでもイイと考えるんだろうか、そんな孤独に笑ってやった、

「おまえさ、恋愛なら何やっても赦されるとか考えてんの?笑」

そういう考え方って自分は好きじゃないんだけど?
そんな本音と笑ったら御曹司クンは不貞腐れた顔で言った、

「俺だって誰にでもソンナモードになるわけじゃねーし、さー…かっこわるいって自分でも思ってるし、」
「かっこわるい思うんならヤメな?恋愛と同じくらい大事なコト、おまえだっていっぱいあるだろ?笑」

男なら大事なこと色々あるだろう?
そういうのは比べるとかできない、だから大事にしたいことに笑った、

「仕事と私ドッチが大事とか訊かれるのウザイだろ?そういうの、仕事も恋愛も比べるとか出来ないくらいドッチも大事だからだし、
ドンダケ大事な相手でも仕事を選ぶ必要もあるだろ?だから職場恋愛はメンドクサイんだよ、仕事に私情を持ちこまれるとか邪魔だろ?笑」

人間は恋愛だけで生きているワケじゃない、
恋愛至上主義って少女マンガに多いらしいけれど、現実は仕事や勉強や趣味に懸けたい人も多い、
そういうタイプ特に男は多いだろう、だけど目の前に座っている男は拗ねた顔で言ってきた、

「おまえ、俺に愛されてること邪魔になってるってこと?」
「申し訳ないけど今はそう、笑」

正直に笑って答えたテーブル越し可愛い顔が泣きそうになった、
どこに行って良いか解らない、そんな迷子みたいな貌は可哀想で、だから訊いた、

「大晦日に歯医者と呑んだって話、憶えてる?」
「…憶えてるけど、なに?」

他のヤツの話なんかしないでよ?
そんなトーンの目がこっち見て、だけどお構いなく続けた、

「その歯医者、ドッチかいうと美形なんだけどオツボネサマの姪っ子だかいう未成年にツキマトワレてさ?それが思い込み激しいタイプらしくてね、
いちばんの恋人じゃ無くて良いからヤってとか言ってくる妄想どっぷりのガキンチョサマなんだけど、そういうのに振り回されてる男ってドウ?笑」

当たり障りない部分だけ言って笑って、
そしたら御曹司クンすこし考えて口開いた、

「みっともないよな、っていうかその女の子が空気あまりに読めてないのムカつくし、ヤらせれば愛されるって期待してるアタリ気持ち悪い、
歯医者も気持ち悪かったんじゃね?嫌いでも断れない相手にヤれとか言われんの強姦と一緒じゃん…でも俺とその女の子は同じってオマエ言ってる?」

ほら、ちゃんと自覚も出来るじゃん?
それくらいの冷静を持ち合わせてることが正直うれしかった、で、軽くSった、

「妄想お馬鹿チャンと同レベルな社会人男って、みっともないよね?笑」
「う…ほんと言われても俺いま反論できねーし、」

凹んだ貌でグラス口付けて肴に箸つけて、それから御曹司クンは言った、

「でも俺のが妄想ちゃんよりマシだと思う、その歯医者はオツボネさんが怖いのと妄想ちゃんが可哀相っていう同情で拒絶できないんだろ?
そういうの迷惑で嫌われてるくらい歯医者のコトちゃんと見てたら解かると思うけど、見てないから無責任な台詞に酔っちゃってるカンジだろ?
でも俺、おまえが迷惑してるのも同情してくれてるのも、愛されてないのも解ってるし、さー…わかってるから大事だから言わないでいるし、」

そのとおり、解かってる分だけ御曹司クンはマシだ、
だからこそ止めてほしくて思ったまま言った、

「解かってるなら、花サンを利用するみたいなの止めな?自分への恋愛感情を理由に他のヤツ傷つけられるとか、ほんと不愉快だから、」
「…でも俺だって田中さんのこと好きなのもホントだもん、いちばんって言えないけど嘘じゃない、」

嘘じゃない、そう言った御曹司クンは怒ってるみたいな拗ねてるみたいな貌だった、
解ってもらえない苛立ちと孤独と、それでも縋りたい願いが底に見えるからSった、

「自分も花サンが大事だよ?だからオマエのこと不愉快だね、妄想ちゃんと同レベルでオマエの愛って嘘くさいよ?笑」

結局のとこ御曹司クンは「孤独が怖い」だけ、
孤独が怖いから誰かを恋愛で縛って傍に置こうとしている、だから花サンを傷つけても正当化してしまう、
本当に相手を想って求めているなら大事にしたい笑わせていたい、それなのに傷つけて正当化できるのは「大事と正反対」の感情だ、

相手を追い詰めて泣かせても自分が孤独にならない方が大事、それを恋だ愛だと言われても誰が信じられるんだろう?

「おまえさ、花サンが傷ついてるって解っても本気で謝るツモリ無いだろ?それって花サンのコト大事じゃないから謝らないんだよ、
そういうのってさ、花サンを大事に想ってる自分ごと粗末にしてくれちゃってるよ?こんだけイイカゲンに扱われたら嫌って当り前だろ、ねえ?」

このままだと嫌いになるしかないよ?
そんな予告にSったテーブル越し、御曹司クンが手を伸ばした。

「待って置いてかないで、ごめん謝るから、」

謝るから、なんだろう?

その続き考える前から御曹司クンの手がコッチの手を掴んだ、
こんなふうに手を掴んでも心まで掴めるわけじゃない、それでも御曹司クンは掴んで言った、

「謝るから、田中さんにも謝るから俺を嫌いにならないで、お願いだから嫌わないで…きらわれるのだけは嫌だ、俺おまえには嫌われたくない、」

嫌われたくない、それだけは嫌だよ?
そんな言葉は御曹司クンの生立ちごと全て哀しいなって思った、

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深夜雑談:収穫の夏×探索者

2014-08-23 22:00:00 | 雑談


深夜雑談:収穫の夏×探索者

今朝ちょっと実家に行ったらコンナ↑のもらってきました、自前産直ってカンジです、笑

夏野菜は豪雨にあうと水分過多→実が弾けて割れたりするんですけど、
今日の神奈川まさにソレな天候で曇のち豪雨のち晴天、今朝もらってきてセーフでした、笑
そんな野菜たちに同居の悪戯坊主は興味を惹かれていました、が、好きな葉物野菜は無くて残念顔になってます。

使いたかった本をとってきたんですけど、
祖父の形見分けでもらった+古本屋で見つけた各ハードカバーの計2冊、
いわゆるスーパー袋に放りこんで持って来たら帰路に豪雨→車から家の間は雨だったからスーパー袋で正解でした、笑

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雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚190

2014-08-23 14:31:07 | 雑談寓話
雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚190

1月上旬月曜、終業後20時過ぎ、
週末は雪山で疲れていたけど同僚御曹司クンに時間ほしい話したい言われて、
週初めから飲みに行ったダイニングバーの半個室にて、会話の主題は花サンのことになり、

「おまえが少しでも花さんのコト大事に想うなら、ちゃんと向きあいな?おまえの身勝手が付けさせた傷だから、責任ないとは言えないだろ?」
「でも俺には田中さん、心開かねーもん…おまえとは違う、」
「おまえも花サンに心開いてないだろ?だから会話にならないんだろが、」
「別にイイもんね、どーせ元から会話なんかホントには出来ないしさー…おまえみたいに言わないで解かってくれるのが嬉しいし、大好きになる、」

なんて対話は=会話成立58%って気がして、
そんな御曹司クンに正直そのまま言ってみた、

「おまえはコッチが今なに言いたいか解ってないよね?笑」

なんで今ここに座って向きあってるのか?
そこらへん通じていない相手はジントニックひとくち飲みこんで言った、

「おまえこそ解かってて無視してるじゃん、俺がホントは誰が好きでどうしたくてこんなことしてるのか解ってるくせに、」

解ってるから、嫌なのにな?

なんで御曹司クンが花サンと時間一緒にするのか暴くのは正直嫌だった、
もし言われてしまえば本気で嫌いになるかもしれない、それが正直シンドイ。
なんてシンドイ想ってるアタリ自分は結局のところ嫌いになりたくなくて、だから言った。

「ごめん、おまえが花サン傷つけること正当化するほど嫌いになると思う、だから止めてくんない?」

ほんと止めてほしい、だからこのとき顔は笑ってなかったと思う。
いつもと違う貌になってるだろな?そんな自覚のままジントニック飲んでポテトかなんかつまんで、
そのまま何も言わないで御曹司クン眺めてたら暗めの照明にも御曹司クンの目が潤みだして、ぽつんと言われた、

「…無表情だとおまえの顔、恐いんだなー…」

コレときどき言われるんだよね、笑
なんて内心ちょっと可笑しくてつい笑った、

「三白眼だからね、笑」
「え、?」

意外だな?そんな感じの声がこっち見て、
その貌に笑い一瞬納めて真顔して、また笑ったら御曹司クンほっとした貌で言った、

「ほんとだ、おまえって三白眼なんだなー今まで気付かなかった、」
「子供の頃から三白眼だよ、だから真顔になると人相悪いんじゃない?笑」
「三白眼のせいもあるかもしれないけど整った貌は無表情だと冷たく見えるじゃんか、おまえホント冷たく見える、」
「おまえには特に冷たいからね、笑」
「っ…それ今マジでへこむんだけど、拗泣笑」

なんて会話に御曹司クンは緊張を解きだして、
飴と鞭と飴みたいな状況に言いたいこと言わせてもらった、

「前にも言ったけどさ、恋愛の駆け引きとか自分は苦手だし、誰かを利用するやり方って好きじゃないんだよね。で、おまえ何のツモリで花サンをヤったわけ?」

こんな言い方は詰問、きっと追い詰めるんだろな?
そう解ってたけど訊いたまんま御曹司クンまた泣きそうになった、

「…無表情こわい、拗」
「怖くて結構だね、さっさと答えな?」

真顔で言いながら、ほんとはちょっと笑いたくなった。
なんだか尋問みたいだな?なんて思うとつい笑いたくなる、でも内容がマジメだから笑えない。

なんだってコンナコトなったんだろう?

とか思いながら何ドコで間違ったのか考えて、
考えるほどドウにもしようがないな思ってる前で御曹司クンが言った、

「おまえといられる彼女が羨ましかったし、おまえのこと話せる相手なら楽しい思って、さー…なんでもいいからオマエと繋がってたいから、」

こんなこと言われて自分が喜ぶとか、本気で思ってるんだろうか?


第78話「冬暁8」もうすこし加筆の予定です、
不定期連載Favonius「少年時譚36」加筆校正します、
そのへん終わったらAesculapiusか短編連載をUPするつもりです、

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楽しんでもらえてたら嬉しいんですけど、ってことで短いけど続きです、笑

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