和歌の技法の一つ「縁語」を教えるとき、和歌そのものより、歌謡曲の歌詞できれいな縁語になっているのを使う。今年は「潮騒のメモリー」にしてみようかと思ったのだが、縁語、本歌取りが渾然一体となっていて、しかも元ネタの説明に時間がかかりすぎるという問題があることに気づいた。もちろんそれらを説明するのはものすごく楽しいだろう。「この歌詞は、菊池桃子の … 」とか「ここは薬師丸ひろ子の … 」とか延々と語るのは。でも生徒さんがついてこないのは目に見えている。なのでいつものにした。定番ネタはこれら。
~ シングルベッド(シャ乱Q) ~
流行の唄も歌えなくてダサイはずのこの俺
おまえと離れ一年が過ぎ いい男性になったつもりが …
恋は〈 石ころ 〉よりも あふれてると思ってた
なのに〈 ダイヤモンド 〉より見つけられない
シングルベッドで二人 涙拭いてた頃 …
~ 卒業(齊藤由貴) ~
制服の胸のボタンを 下級生たちにねだられ
頭をかきながら逃げるのね ほんとは嬉しいくせして …
セーラーの薄い〈 スカーフ 〉で 止まった時間を〈 結びたい 〉
だけど東京で変わってく あなたの未来は〈 縛れない 〉
~ 硝子の少年(KINKI Kids) ~
雨が踊るバスストップ 君は誰かに抱かれ 立ちすくむぼくのこと見ない振りした
指に光る指環 そんな小さな〈 宝石(いし) 〉で 未来ごと売り渡す君が哀しい
ぼくの心はひび割れた〈 ビー玉 〉さ のぞき込めば君が逆さまに映る
Stay with me 〈 硝子 〉の少年時代の 破片が胸へと突き刺さる
~ 主人公(さだまさし) ~
時には 思い出〈 ゆき 〉の 〈 旅行案内(ガイドブック) 〉にまかせ
あの頃という名の〈 駅 〉で降りて昔通りを〈 歩く 〉
いつもの茶店(テラス)には まだ時の名残が少し
〈 地下鉄(メトロ)の駅 〉の前には62番の〈 バス 〉
鈴懸(プラタナス)並木の古い広場と 学生だらけの街
そういえば あなたの服の模様さえ覚えてる
或いは もしも だなんて あなたは嫌ったけど
時を遡る〈 切符(チケット) 〉があれば 欲しくなる時がある
あそこの〈 別れ道 〉で 選びなおせるならって……