水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

「富嶽百景」の授業(3) 一段落

2016年01月26日 | 国語のお勉強(小説)

 

  「富嶽百景」の授業(3) 一段落


 富士の頂角、広重の富士は八十五度、文晁の富士も八十四度くらい、けれども、陸軍の実測図によって東西および南北に断面図を作ってみると、東西縦断は頂角、百二十四度となり、南北は百十七度である。広重、文晁に限らず、たいていの〈 絵の富士 〉は、鋭角である。頂が、細く、高く、華奢である。北斎にいたっては、その頂角、ほとんど三十度くらい、エッフェル鉄塔のような富士をさえ描いている。けれども、〈 実際の富士 〉は、鈍角も鈍角、のろくさと広がり、東西、百二十四度、南北は百十七度、決して、秀抜の、すらと高い山ではない。たとえば私が、インドかどこかの国から、突然、鷲にさらわれ、すとんと日本の沼津辺りの海岸に落とされて、ふと、この山を見つけても、そんなに驚嘆しないだろう。ニッポンのフジヤマを、あらかじめ憧れているからこそ、ワンダフルなのであって、そうでなくて、〈 そのような俗な宣伝 〉を、いっさい知らず、素朴な、純粋の、うつろな心に、はたして、どれだけ訴え得るか、〈 そのことになると、多少、心細い山である 〉。低い。裾の広がっているわりに、低い。あれくらいの裾を持っている山ならば、少なくとも、もう一・五倍、高くなければいけない。


Q1 この部分で対比されているものは何と何か。
A1 絵の富士と実際の富士

Q2「絵の富士」は、富士をどのような山として描いているか、10字で抜き出せ。
A2 秀抜の、すらと高い山

Q3「実際の富士」はどういう山だと「私」はとらえているか。本文の語を用いて15字以内で記せ。
A3 裾が広がっているわりに低い山。

Q4「そのような俗な宣伝」とはどのようなものか。(60字以内)
A4 日本を象徴する屈指の山として、秀抜ですらりと高い富士山のイメ
   ージが作り上げられ、世間一般に広げられたもの。

〔別〕見た人がみな「ワンダフル」と無条件に賞賛する富士のイメージが
   、現実とは異なって作られ、世間に流布しているもの。

Q「そのことになると、多少、心細い山である」について

Q5「そのこと」とは何か。(30字程度)
A5 何の先入観もなく富士を見た人が、感動する山かどうかということ。

Q6「そのことになると、多少、心細い山である」と言うのはなぜか。(60字以内)
A6 先入観を持たずに富士を見た場合、世間一般で評価されているほど
   の感動を生み出す山ではないと、「私」は見ているから。

 

絵の富士 … 具 広重・文晁・北斎
           ∥
        鋭角・高い・華奢(か細い[+イメージ〕)
        秀抜の、すらと高い山
           ↓
        ワンダフルなフジヤマ(=俗な宣伝) ※ 世間の視点
  ↑
  ↓

実際の富士 … 具 陸軍の実測図
         裾が広がっているわりに低い  
          ↓
         心細い山  ※「私」の視点

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朝で決まる

2016年01月26日 | 学年だよりなど

 

  学年だより「朝で決まる」


 先週の大雪の翌日、スクールバスで登校した。朝、上福岡のバス停の列に並び文庫本を読もうと取り出してふと見ると、つまり上福岡一号車を待つ皆さんを見ると、ただ立って待っているだけの人がいることに気づいた。時間、もったいなくね? その日は、英単語のテストもあったはずだ。余裕で全部覚えている人がいるわけないことは、よく知っている。バスの待ち時間とか、車内は、単語や例文を覚える最適時間だ。
 より効果的なのは、前の晩に勉強したことを確認する時間として使うことだ。


 ~ 勉強には大きく分けて二つある。考える勉強と、憶える勉強だ。
 考える勉強が上で、憶える勉強が下というわけではない。
 どちらも役割が違うだけで、どちらも大切な勉強なのだ。
 ただそれらを習得するタイミングを誤ると、単に「自分の頭が悪いからだ」という、一番わかりやすくてお手軽な理由に逃げてしまう。
 考える勉強は、心身がリフレッシュしているタイミングで行うことだ。
 憶える勉強は、心身がやや疲れ気味である「寝る直前」に行うことだ。
  … さらに、あなたが突出できる後押しをしたい。
 朝起きて、寝る前に憶えたことを1分でいいからサッと復習することだ。
 復習というよりも、目を通して確認するのだ。
 1割や2割の記憶の漏れがここで完璧に修繕される上に、それ以外の記憶もより強固なものになるのだ。
 あとは通学時間やテスト前の休憩時間にリラックスしてぼんやり眺めておくだけで、ほぼパーフェクトの結果が出るだろう。 (千田琢哉『人生の勝負は、朝で決まる』Gakken) ~


 真逆の方法も書いておこう。
 試験の直前に必死で一気に暗記しようとする。そして徹夜明けの頭で試験に臨む。
 結果として、試験が始まる段階ですでに記憶はあいまいなものになっているばかりか、試験が終わるとすぐに、忘却の彼方に去ってしまうだろう。
 日常生活においても、例外的な体質を持つ何%か以外の人にとっては、夜更かし型の勉強は効果が低いのだ。
 寝る前に暗記物を中心に勉強し、朝のフレッシュな頭でしっかり考える問題を解く。
 登校してからに午前中の時間帯は、最も思考に適した時間帯だ。
 睡眠時間をけずると、この一番重要な時間帯、つまり授業中にぼおっとすごすことになる。
 授業中に居眠りする人が例外なく結果を残せないのは、授業の過ごし方だけの問題ではなく、一日の時間の使い方、大げさに言うと高校生活の「生き方」そのものに問題があるからだ。

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