学年だより「集中」
昔の川越東に比べると、大声で騒いでる人がずいぶん減ったと思う。
以前はもっとうるさかった。「不快」とまでは言わないが、休み時間に勉強したい人にとっては厳しい環境かなと思ったことはある。むだに不機嫌オーラをふりまく子とか、やたら「寝てねえよ」アピールするヤツとかも減った。そういう人は精神が大人になっていないのだが、ずいぶん見かけなくなった。だから、教室に入ったとき微妙な知性を感じることもある。人の頭越しに大声で会話する子は、何より知性が足りなく見えてしまうものだ。
みなさんは、どういう場所が一番集中して勉強できるだろうか。
誰もいない静寂な空間が理想だと考えるかもしれないが、一般に人は、そういう場所だとかえって集中しにくいそうだ。
集中をそぐもの(誘惑)がなく、多少の人目があり、完全な無音ではない空間で、身の危険を感じる必要がないとき、つまり安心して孤独気分を味わえるときに人は集中できる。
だから自宅の自分の部屋という、誘惑の多い場所で勉強できる人は、きわめて能力の高い人だ。
幼い頃は特に、子供部屋よりもリビングで勉強している子の方が勉強ができるようになると、統計的にも明らかにされている。
朝の教室、放課後の食堂、図書館 … 。適度な人目、適度な音があり、そのうえ女子がいないという、ほぼ最強の空間が川東にはある。街中のカフェやフードコートが一番勉強が進むという人もいるだろうし、電車に乗っている時間の有効利用は、昔から知的生産術の重要なテーマだった。
いつ、どこで勉強するか。
いつ、どこで、どんなふうに勉強するのが、自分にとって一番効果があるのか。
今はあれこれ試してみて、自分の勉強方法を見つけようとする経験は、身につけた勉強内容と同じかそれ以上に財産となり、大人になってから役立つ。
~ 勉強した内容自体は、忘れてしまうかもしれません。大人も、学生時代に勉強したことは頭からスッポリ抜けてしまうことはあります。
でも、身につけた集中力は、人生をとおして役立つもの。
仕事や家事、もちろん遊ぶときだって、集中力を発揮してメリハリのある時間の使い方は必要不可欠です。オンもオフも満喫できるかどうかほ、どれくらい本気で勉強に向き合ったかで決まってくるとも言えるでしょう。
時間は、すべての人間に平等に与えられています。
時間に管理されるのではなく時間を管理できるようになることで、人生は豊かになります。その力を10代で身につけることができたら、残りの人生をガラリと変えることができます。「いま、まさに一生モノの力をつけているんだ」と自分を鼓舞して、まずは30分間、目の前の問題にとことん集中してみましょう。 (斎藤孝『受験のキモは三日で身につく』角川文庫) ~
その気になれば、ありとあらゆる場所に勉強できる空間を見つけられそうなこの国に生まれたことは、幸せだと思いませんか。