水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

評論文読解の超基本(1)

2020年04月11日 | 国語のお勉強(評論)
1 基本的な考え方

① 文章は人に何かを伝えようとして書かれます。

 他人はどうあれ、自分はこう思っているという内容が書かれています。
 誰もが言いそうなこと、知ってそうなこと、一般的に正しいこと、そんなのは常識でしょ、という内容は書かれる必要ないですよね。
 「世間一般ではBと思われてるようだけど、私的にはAだと思う」という形で書かれています。

 一般論(B) ←→ 筆者の主張(A) 

 BかAか、どちらか一方しか書いてないように見える文章も多いですが、無理矢理「B ←→ A」を見つけようとすると、見つかります。
 Bが見つからないときは、書いてないことがBです。一般的な内容、世間の常識的なことがBです。

② 今と昔、日本と西洋をくらべた場合、わたしたちは一般的にどちらを「いいもの・価値あるもの」「+」と思うでしょうか。
 やっぱり、いろいろ問題あるけど、昔よりは今がいいに決まっている、日本の文化より西洋の文化の方がクールだと、思いがちですね。

 昔、たとえば江戸時代。
 お殿様がいて、侍がいて、お百姓さんがいて、職人さんがいて、商売人がいました。お侍の子供は侍になり、村に生まれた子供はそのまま農民としての人生を送りました。
 それに比べると、今は自分の人生は自分で決めることができます。好きな仕事を選ぶこともできるし、好きな人と結婚できます。結婚しない自由もあります。
 自由、平等、権利といった考え方は、近代化した世の中で、人々が手に入れたものです。
 そういう考え方がなかった時代より、今の暮らしの方が幸せに決まっていると思いますよね。
 しかし、評論は、その考えを疑います。
 ほんとうにそれって幸せ? と問いかけます。
 近代的な考え、新しく発明されたもの、今の世の中のあれこれを問い直してきます。
 結果として、

 今(B) ←→ 昔(A)
 西欧(B) ←→ 日本(A)
 近代的価値観(B) ←→ 前近代的価値観(A)
 
 という方向性で書かれています。
 そんな風に見えなくても、そうかもしれないという目で見直してみると、言いたいことに気づける可能性が高くなります。

③ 言いたいことを伝えるために、いろんな技が用いられます。ストレートに「Aだ」というよりも効果があります。

 対比を用いる方法   B「ではなく」Aだ 
            一般的にはB、「しかし」Aだ

 具体例をあげる方法  「たとえば」、a1、a2、a3、
            「このように」Aは…
 
 理由の述べる方法   Aだ、「なぜなら」 ~ 「だからだ」
            ~「のである」

 言いたいことを伝えるための「技」にあたる語句を自分なりにチェックしてみましょう。
 「ではなく」とか「このように」にチェックしてみると、チェックした言葉の後ろに大事そうな内容が書いてあることに気づきます。


④ 言いたいことを伝えようとする気持ちは、いろんな言葉に表れています。

「日本は平和な国である。」という一文を読むと、まあそうだよね、と受け取るだけですが、少しよけいな言葉がついていると印象が変わります。

 「私は」日本は平和な国である「と思う」。
 日本は平和な国だと言える「のではないだろうか」。
 日本は平和な国だと、「ぼくは」「思わざるを得ない」。
 日本は平和な国ではないと言える「だろうか」。

 「思う」「だろう」「~か」といった表現は、実はより伝えたい内容にくっついているのです。

 単語のニュアンスにも表れます。
 「ということ」と言いそうな事柄を、「という事態」と書いてあったら、どうでしょうか。
 「~した」ではなく「~してしまった」と書いてあったら、どうでしょうか。

「農村人口の減少」がおこった。
 → 「農村人口の減少」という〈事態〉がおこった。
 「都市人口が増え」た。
 → 「都市人口が増え」〈てしまった〉。

 「 」の内容を、筆者がマイナス(-)ととらえていることがわかりますね。
 マイナスぽい言葉をチェックしてみると、言いたいことの方向性が見えてきます。
 逆に明らかにプラスの言葉もチェックしてみるといいと思います。
 ちょうど、メジャコードとマイナーコードがあるように、対比が見えてきます。

⑤ ここはAの内容、ここはB側の内容、ここはAの具体例a1、ここはマイナスの言葉が使われているからBの具体例bなんだろうな、とチェックしながら読んでみましょう。
 A 
  a1
  a2
このように A
しかし
 B
  b1
  b2
したがって
 B ではなく A
 というような構造に整理できると、文章が立体的に見えてきます。

コメント
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