水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

「近代の原罪」(東大2020年)の授業(3)

2020年04月17日 | 国語のお勉強(評論)
④ 子どもを分け隔てることなく、平等に知識を培う(ツチカう)理想と同時に、能力別に人間を格付けし、差異化する役割を学校は担う。〈 そこ 〉に矛盾が潜む。出身階層という過去の桎梏を逃れ、自らの力で未来を切り開く可能性として、〈 能力主義(メリトクラシー)は歓迎された 〉。〈 そのための機会均等だ 〉。だが、それは〈 巧妙に仕組まれた罠だった 〉。「地獄への道は善意で敷き詰められている」という。〈 平等な社会を実現するための方策が、かえって既存の階層構造を正当化し、永続させる 〉。社会を開くはずのメカニズムが、逆に社会構造を固定し、閉じるためのイデオロギーとして働く。しかし、それは歴史の皮肉や偶然のせいではない。近代の人間像が必然的に導く袋小路だ。

桎梏……手かせ(桎)足かせ(梏)。自由を束縛するもの。
メカニズム……装置、仕組み。
イデオロギー……思想。人間の行動を左右するものの考え方。
袋小路……行き止まりになっていて通り抜けられない小路。物事が行き詰まった状態。

Q13「そこ」とは何か。40字以内で記せ。
A13 子どもの知識を平等に培いながら、子どもを格付けし差異化する役割を学校が担っていること。

Q14「能力主義(メリトクラシー)は歓迎された」とあるが、「歓迎された」は人々が何を見出したからか。20字以内で抜き出せ。
A14 自らの努力で未来を切り開いていく可能性

「そのための機会均等」について、
Q15「そのため」とは何のためか。簡潔に記せ。
A15 能力主義の考えを具体的な仕組みに現実化するため。

Q16「機会均等」とは何だったのか。15字で抜き出せ。
A16 平等な社会を実現するための方策

Q17「巧妙に仕組まれた罠(わな)だった」と言うのはなぜか。説明せよ。
A17 誰もが理念的に正しいと信じ、喜んで受け入れるシステムだったが、実際には人々が望むような結果にならないものであったから。

Q18「平等な社会を実現するための方策が、かえって既存の階層構造を正当化し、永続させる」という現実をどう呼んでいるか。これより前の部分から10字で抜き出せ。
A18 機会均等のパラドクス


学校の役割
 子どもの知識を平等に培う
   ↑ 矛盾
   ↓
 子どもを能力別に差異化する

戦前 出身階層……過去の桎梏
     ↓
戦後 自らの力で未来を切り開く
     ∥
   能力主義
     ↓
   教育の機会均等
     ∥
   巧妙に仕組まれた罠(わな)
     ∥
   地獄への道は善意で敷き詰められている


 平等な社会を実現するための方策
    ↓かえって (パラドクス)
 既存の階層構造を正当化し、永続させる。
      ∥
 社会を開くはずのメカニズム
    ↓逆に (パラドクス)
 社会構造を固定し、閉じるためのイデオロギーとして働く
   ∥
近代の人間像が必然的に導く袋小路
コメント
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