水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

贅肉をつける

2016年12月15日 | 学年だよりなど

 

  学年だより「贅肉をつける」


 「贅沢」「贅言(よけいな言葉)」というように、「贅」とはよけいなもの、必要以上のものを表す。
 「やべ、贅肉ついちゃった」という言い方をするが、いったん身につくと、なかなかおちない。
 人間の知性も、贅肉のように、気づいたらいつの間にかついているものであるようだ。
 知性の贅肉は、むしろぶ厚い方がいい。


 ~ 内田 贅肉みたいに「やだやだ」と思っているうちに、知性って自然に身についちゃうからね。
橋口 そう考えると知性って「よーしつけるぞ!」と思ってつけるもんじゃなくて、“ついてくる”ものなんですよね。でも今、世の中的には、贅肉は落とそうという傾向にあるからなあ。エッジの効いた文章や一刀両断的な発言を一生懸命よしとしようとしているのと似てる。
名越 そうなのよ。それだめ。身体はシャープでいいけれど、知性は贅肉のようについてくる状態が理想。 ~


 人は、すぐに役立つ知識や技術を手に入れたがるものだが、それらはその時々にしか役立たない。
 すぐ効果がなさそうなもの、自分には理解不能なものも、とりあえず受け入れてみると、気が付くと贅肉のように身についてくるのだ。


 ~ 内田 すごい人の文章っていうのは、止める場所が見つからないんだよね。
名越 それにずーっとついていくと、その忍耐力と読解力の錬磨によってどんどん自分の中の未熟な攻撃性がおさまって、成熟されてきて。
内田 読んでうちにリテラシーが上がってゆくんだよ。 … 飲み込んだ文章って、自分は気がついてなくても、そうやってだんだんだんだん血肉化していくから。うどんの味を判定するために、ずるずる啜っているうちに、当のうどんに自分が養われている。
名越 そうなんですよ! だから文章っていうのは、酔っ払って明け方に食べたラーメンのようなほうがいいっちゅうことや。 … 今のラーメンの比喩を、もっと別にかたちで言うと「知性は贅肉のようについてくる」ってことです。  (内田樹・名越康文・橋口いくよ『本当の大人の作法』メディアファクトリー) ~


 すぐには役立ちそうにない知識や技術ほど、いったん飲み込んでおくと、後々になって随分役立っていることに気づく。
 スポーツでいうと、体幹トレーニングや、オフシーズンの走り込みに該当するかもしれない。他の競技をやってみたり、映画やお芝居を観ることさえイメージ作りには役に立つ。
 一見遠回りのように思える勉強が、自分の知の枠組みを大きくするためにはたらく。
 大学入試の問題を見てみると、難関と呼ばれる大学の問題ほど、その枠組みの大きさを問おうとしていることも気づく。
 この冬休み、定期試験4回分のやり直しは必須(人によっては1年からの9回分)だが、それに加えて自分が興味がある分野や学部の、学問に関する本を手にしてみよう。

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冬期講習

2016年12月14日 | 国語のお勉強(古文)

 

 冬期講習は古文の演習。レギュラーの授業で古文を教えてないので、ものすごく予習してしまった。
 最初の一行で余裕で一時間話せるくらいに。
 第一問はセンター試験1996年の「栄花物語」の一節だ。
 本文も設問もむだに難しく、作っている先生の古文の力を疑ってしまうような出題も多いセンター古文だが、この問題はいい。
 文章自体がほどよく難しく、同時に読みやすく、いろんな角度から古文の力を測るのに適切な問が設けられている。
 1行あれば、受講生個人に何が足りなくて、今後何をやればいいのかを瞬時に教えてあげられるので、結局お説教の授業になってしまった。
 「古文の基本を確認できる問題ベスト5!」に入るようなこの文章を、おぼえるくらい、自分で授業できるくらいに読み込めれば、ほんとうに力がつく … のは間違いないんだけど、信じて復習してくれる子はいるかなあ。
 いないかもしれないけど、講習後にやるべき作業を伝えておこうと思う。

 1 自分で全訳する。(一気に全文ではなく少しずつ)
  すべての単語を訳す。
  すべてのパーツの主語(Sガ)を補って訳す。
  すべての目的語(Oヲ、Oニ)を補って訳す。
  省略されている名詞を補って訳す。
  「スーパー単語集」「スーパー活用表」「助詞ミニマム」を確認しながら作業する。
 2 答えあわせをする。
  覚えていない単語は別の紙に書き出す。
  なぜそういう訳になるのかわからない箇所は質問にいく。
  時間をおいてもう一回やった方がいいパーツをチェックしておく。

 第一問(1996年)、第二問(2003年「五葉」)の二問だけでも、この作業をしておけば、ステージはかつんと上がる。

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生産性(2)

2016年12月13日 | 学年だよりなど

 

    学年だより「生産性(2)」


 生産性の高い時間とは、中身の濃い時間のことだ。
  単純な例でいえば、1時間で5問解く人より、10問解ける人の方が生産性が高い。
 形而下のことでなくても、大事なことを決断できたり、思いついたり、出会えたりしたならば、生産性の高い時間を過ごせたと言えるだろう。
 当然のことながら、同じ時間内に多くのことができる人ほど、自分のやりたいことに近づける。
 自分の生産性をあげるには、速く歩かないといけない。


 ~ 頭は体の一部です。
 頭と体は連動しています。
 自転車のスピードが速いのは、自転車自体が速いのではありません。
 足の回転が速いのです。
 誰でも自分の歩くスピードは、「人並み」または「速い」と思っています。
 自分の歩くスピードが遅いことに気づいていないのです。
 それは、速い人と一緒に歩いたことがないからです。
  … 放っておくと、歩くスピードはどんどん落ちていきます。
 歩くスピードが落ちると、頭の回転のスピードも落ちていくのです。
 そういう人と一緒に話をすると、どんどんイライラしてきます。
 想定外のことに対して、後手後手にまわるからです。
 具体的に頭の回転を速くするには、歩くスピードを上げればいいのです。 (中谷彰宏『歩くスピードを上げると、頭の回転は速くなる。』大和出版)  ~


 長く高校生に接してきた経験から言えるのは、歩くスピードと知的能力の相関関係はきわめて高いという事実があることだ。
 統計的な数字を示すことはできないが、たとえば街中で高校生の歩き方を見れば、どこの高校かなと推定することができる。
 もっとはっきり言いましょうか。偏差値の高い学校は歩くスピードも速い。
 勉強だけではない。部活の大会に行けば、強豪校ほど動きが速いことは、みなさんも感じているのではないだろうか。
 ただ、それに気づけないことも多いのが問題だ。
 「けっこう自分は速く歩いているのではないか」と思い込んでいるから。
 まあまあがんばっている方だと自分では思っていても、客観的には全くそうでないことも多い。
 部活よりも、勉強面での「自分の遅さ」に気づくことは難しいかもしれない。
 高校になると、圧倒的に速さの違う人が、同じ学校内にあまりいなくなるからだ。
 まず歩くスピードを意図的に少し上げてみよう。

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アズミハルコは行方不明

2016年12月12日 | 演奏会・映画など

 

  ここまで時間軸があっちこっちにとぶと、話の筋をつかめない。小説は時間の流れをつかむことが大事、後ろが原因で前が結果になるよ、回想場面は必ず主人公の視点だよ … などと日頃教えてるのに、だめだった。まだまだ映画を観る力が足りない。
 ただ、どの場面からも地方都市の暮らしの閉塞感が半端なく伝わってくる。ストーリーなどむしろ不要だ。ちゃらい女子を演じる高畑充樹ちゃんのお芝居も上手すぎるし、微妙に心をを病んでいるかのような蒼井優さんのお芝居もさすがとしかいいようがない。「オーバーフェンス」の蒼井優さんは本当にこわかった。
 全体にただようひりひり感と、この二人を見れただけでお値段分の価値はおつりがくるほどある。

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また新テスト

2016年12月11日 | 日々のあれこれ

 

  カリキュラムを検討する会議では、「新テスト」を見据えてという話が中心になってきた。さすがにそろそろ本気でつくっていかないといけない。
 今のローテーションのままいくなら、初めて新テストを受ける今の中学二年生を受け持つのは、自分たちの学年だということに気づいた。なるほど、それなら文句ばっかり言っててもしょうがない。
 まちがいなく新テストは実施されるのだし、全員に記述対策をしなければならないのも動かしがたい。ぶっちゃけると、それならそれでいいよ、むしろ差をつけられるかなという思いもないではない。
 いっちょ、やってやろうやないか!
 「海賊とよばれた男」は、上下二巻分のお話を、映画一本分の尺におさめるのに随分苦労されたのだろうなと感じた。

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今年記憶に残るマンガ

2016年12月08日 | おすすめの本・CD

 

「町田くんの世界」 … なかなか新刊がでなかったけど、待ちに待った4巻を読んでたら泣いてしまった。

「恋は雨上がりのように」 … こんなに長く続くとは思わなかった。でも読んでてせつなすぎるから、そろそろまとめてほしい気もする。発展しなくていい。あきらちゃんにドロドロしてほしくない

「僕たちがやりました」 … たらたらした高校生が、からまれた不良たちに復讐しようと、不良の通う高校に爆弾をしかける。それが死傷者が出る大事件に発展し … からはじまったドタバタ劇かと思いきや、いつのまにか希望と絶望のはざまを生きる若者のやるせない思いが描かれるドラマになっていた。若いうちって、希望もあるから絶望も大きいのだ。歳をとると、絶望力も衰える。

「いつかティファニーで朝食を」 … 食レポ系の漫画でしょと軽い気持ちで手にして、アラサー女性の生き方をしみじみと考えてしまった。いや年齢性別関係なくうったえてくるし、「東京タラレバ娘」より救いがある。

「機械仕掛けの愛」 … 今3年生を受け持っていたなら、小論文を書く生徒さんには強制的に読ませるだろう。来年そうしよう。もう一巻ぐらい出るかな。「天声人語」を読んでもマイナスにしかならないが、これほど考えさせられ、ネタになる作品はない。

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8兆点

2016年12月07日 | 日々のあれこれ

 

 結局J1は浦和レッズが2位。年間勝ち点で15点も(だっけ?)差をつけて1位になったのに、CSの2試合で合計点が同じながらアウェイゴールの差で負けるという、年間勝ち点一位のアドバンテージがまったくない、不思議なシステムだった。せめて勝ち点差の分ぐらい点をとらないとダメ方式にしないと、普段の試合の意味じゃね。
 その理不尽さに、その当事者やサポーターになって初めて気づいた人も多いのだろうが、最初からわかってた方々も多いはずだ。やってみてダメなことがわかったから来年はもう変更するというのは、潔いとは言えるかもしれないが、去年と今年はなんだったのだろう。
 理不尽なのが世の常だとはいえ、スポーツの世界で、勝敗や順位を決める枠組みに理不尽さを設けるのはやるせない。最後の問題だけ8兆点もらえるバラエティ番組のクイズと同じだ。本気のクイズ番組でそれをしたら、やはり批判が起きる。
 だから、地道に勉強した子が一点刻みでセンターで点をとって、目標に近づける方式をつくるのがいい。ちゃんと採点ができるかどうかも未知数の記述や論文で、最後に8兆点もらって逆転する受験システムをつくろうとするのは、文科省にしか入れなかった人々の怨念がこもった改革なのだろうか。一度かえたら、Jリーグほど機敏に再変更することは難しい。

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生産性

2016年12月06日 | 学年だよりなど

 

  学年だより「生産性」


 試験おつかれさまでした!
 今日は5分ぐらいのんびりした後、これからやるべきことを書き出し、それらに少しでも手を付けておこう。
 本校を志望する受験生(中3)と相談会で話していると、2タイプの悩みを聞くことがある。
 a「学校の成績はそれなりにもらえているが、北辰の偏差値があがらない」
 b「北辰はとれるが、通知表があがらない」
 もし、皆さんがこのように訴える中学生に相談にのってあげるとしたら、a、bどちらに対してもほぼ的確なアドバイスをしてあげられるのではないだろうか。
 aの子にはどう言いますか? 
「定期試験のあとすぐに復習し、やりっぱなしにならないように積み上げていこう。覚えられないのは繰り返しが足りないだけだ、もしくは練習量が足りない」と言ってあげるはずだ。
 bならどうか。
「定期考査をあまく考えずにきめ細かく取り組んだ方がいい。何より日頃の授業態度をきちんとし、提出物を手抜きしないように」ではないだろうか。
 もうひとつ、c「がんばっているけど、結果がついてこない」もあった。
 この子にも「自分ではやっているつもりでも、客観的にはまだ足りないということだよ」と言ってあげられるのではないか。
 今日は遊ぼう、のんびりしようという気分かもしれないし、友だちに誘われるかもしれない。
 しかし、自分の心の声に耳をすませるなら、今やるべきことはそうじゃないと内心わかっていることに気づくだろう。


 ~ 生産性を意識すると、人生の希少資源である時間やお金を、自分が本当に手に入れたいモノだけのために使えるようになります。みんなが当たり前のように持っているものでも、世間的にスゴイ、スバラシイと言われるものでも、自分にとってそこまで大事でなければ、貴重な時間やお金を投入するのを止められるようになるのです。
 なぜなら、「みんなと同じ」をやっていては、自分がやりたいことをやるための時間もお金も足りなくなるからです。私の場合そうでなくともやりたいことが多いのに、希少資源の無駄遣いはできません。
 みんながやっていることを、自分だけ止めるのは躊躇しますよね。でも「生産性が低すぎて人生の時間が無駄になる!」とわかれば、止める決断も簡単になります。 (ちきりん『自分の時間を取り戻そう』ダイヤモンド社) ~


 そろそろ、日々の時間の使い方の「質」を高めていく時期にきている。

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エノケソ一代記

2016年12月04日 | 演奏会・映画など

 

  世田ヶ谷パブリックシアターは、前に「梅棒」を観に来て以来かな。めったに来ることのない三軒茶屋まで足をはこんだのは、三谷幸喜作「エノケソ一代記」のチケットがうまく手に入ったからだ。
 戦前からコメディアンとして一世を風靡し、戦後も喜劇界を牽引した榎本健一、通称エノケン。あまりの人気に、日本中ににせエノケンが出没していたという。モノマネではなく、ニセモノが。今だったら、すぐに情報がまわってしまうだろうが、古き良き時代の話だ。もちろん田舎の人たちも、ある程度はわかっていただろう。こんな田舎に本物のエノケンなど来るはずがないと思いながら、なかば確信犯で楽しんでいたのだろうか。考えてみたらテレビのない時代なのだから、「私がほんもののエノケンだ」と言ってしまった者がちだったのかもしれない。
 そんなニセモノの一人で「エノケソ」を名乗る男の人生を描いた芝居だ。
 エノケソは、歌や踊りやしぐさが徹底的に似せるどころか、本物が病気で足を切断したことを知り、健康な足を切断してしまう。ここまでくると、「あんたは本物のニセモノよ」と言われる彼の像が鬼気迫るものとして立ち現れ、芸人さん、役者さんとはこんなにも業の深い存在なのかと思わせられる。
 演じた市川猿之助はさすがだった。奥さん役の吉田羊さんを初めて生で観れたのもよかった。何より声がいい。ずっと聞いていたい。いま映画でも芝居でも、困ったときは吉田羊と滝藤賢一をキャスティングしておけば、とりあえずうまくいく。

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ぱんだウインドオーケストラ

2016年12月03日 | 演奏会・映画など

 

  部員たちの中にも興味がある子はいただろうが、さすがに試験中は無理なので、顧問が代表して聴いてきたのは、「ぱんだウインドオーケストラ」。
 数年前、芸大の学生さんが立ち上げたバンドで、うちのOBのお兄ちゃんも作曲家として関わっていた。あれよあれという間に、CDデビューをし、テレビにも出、なんと今夜はオーチャードホールを満員にする。
 結成時から応援しているお母様方のなかには、微妙な寂しさを抱いている方もいるにちがいない。
 「オーチャードブラス」という企画もので、指揮は、精華女子、活水女子の藤重佳久先生がをなさった。
 藤重先生が全国金賞をとられた「フェスティバル・バリエーション」「華麗なる舞曲」「宇宙の音楽」は、ぱんだのメンバーにとっても容易ではないはずだが、さすがに上手な高校生が死ぬほどさらいました的な悲壮感の漂わない、軽快かつきめ細かい演奏だった。
  生で聴くのは初めてだが、芸大生は(ていうか、卒業したのかな)やっぱり上手だ。あたりまえだけど。
 ただ、藤重先生との出会いが本当に幸せなものなのだろうかという疑問も正直もってしまう。
 藤重先生は「普通の」吹奏楽の最高峰にいらっしゃる方であり、もちろん尊敬の念ももっている。全国大会直前のリハーサルを一瞬だけ見学させていただいたこともある。
 このメンバーで演奏できれば、それはそれは上手だし、楽しいだろうけど、本気でプロとして生きていこうとする若手の演奏会と考えたなら、もっととんがった曲を、とんがった演奏を聴きたい。「普通に」上手なだけじゃおもしろくない。あまりにももったいない。ぜいたくな願いとは思いつつ、これからの吹奏楽を憂えるものの一人として。ただ、それほど上手なメンバーのなかで、さらに上野耕平さんのサックスは突出していると感じるくらいすごかった。

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