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お台場アイランドベイビー 伊与原新

ミステリー大賞を受賞した著者のデビュー作。第ニ次世界恐慌で経済に大きなダメージを受けた後、追い討ちをかけるように首都直下型地震で壊滅的な被害を受けた日本が舞台の近未来小説。その震災直後に東京に「震災ストリートチルドレン」と呼ばれる子どもたちが多数現れるが、震災からの復興や治安維持のために力を注いでいた政府が彼らに何もできないまま、ある時彼らが忽然と姿を消す。元刑事と現職少年課婦警の2人がこの子供たち失踪の謎の解明に奔走するというのが大まかなストーリーだ。経済恐慌と大震災のダブルパンチで荒廃した日本の描写、外国人労働者受入政策や社会保険制度の崩壊、政治の腐敗といったリアリティがとにかく緻密で容赦ない。さらに東日本大震災の1年前に書かれた本書だが、東京湾埋立地での液状化現象による被害などは正に1年後を予測し、更に今後のリスクをも予言しているようで怖いくらいだ。著者の科学的知識、論理的思考、想像力、文章の4つが織りなす迫真の一冊だ。(「お台場アイランドベイビー」 伊与原新、角川文庫)
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