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犬を殺すのは誰か 太田匡彦

ペット業界の闇がよく分かる一冊。業者による地方自治体の引き取り制度を悪用した在庫処分のような大量殺処分、全く対面のないネット取引、酔客の衝動買いをターゲットにした繁華街での深夜営業、子ども連れの衝動買いを誘導するようにペットイベントの片隅で行われる販売会、母犬や兄弟犬との関わりが大切な時期にも関わらず生まれた環境から引き離す幼すぎる子犬販売など、本書が刊行された2013年当時の日本におけるペット業界の闇がこれでもかという感じで書かれていて、犬が非常に苦手な自分でさえ暗澹たる気持ちになる。本書の白眉は2012年のペット業界への厳正な規制を織り込んだ「動物愛護法改正」、特に8週齢規制など犬の側に立った法改正が、ペット業界や公明党議員の反対でどのようにして骨抜きにされたのかという解説だ。動物愛護法は5年毎に社会的必要性に応じて改正されるとのことなので、その後どうなったのかネットで調べてみたら、この本書刊行後の10年間で「8週齢規制」がようやく実現したり、その他の進展も色々あったことがわかったので少し安心した。但し、欧米のようなペットショップの原則禁止といった理想への道のりはまだまだ厳しそうだ。著者の「文庫版へのあとがき」によれば「猫についても本を書きたい」とのこと。既に書かれているのであれば是非読んでみたいと思った。(「犬を殺すのは誰か」 太田匡彦、朝日文庫)
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