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韓国は裏切る 室谷克実

こういう韓国批判の本が本屋さんにあふれている。隣人たる韓国との何となくぎくしゃくした関係を意識し、どちら寄りかを鮮明にした物言いには違和感を覚えつつ、何も言えない自分にももやもやしたものを感じる。そうしたなかでできることは、関連した知識をできるだけ吸収し、考える材料を豊富に手にすることだと思い、そうした本を読み続ける。しかし、本屋さんには圧倒的に韓国を貶めて溜飲を下げるだけの本が多いので、そこから得られる知識に偏りが生じる。それを意識するので、ますます自分の態度に自信が持てなくなる。本書もそうした一冊だが、とにかくその情報量の多さに驚かされる。1つのことをテーマにして長年研究を続けている著者ならではの話題の豊富さと同時に、それを淀みなく畳み掛けるように披露していく巧みな語り口はなんだか一種の名人芸を見ているような感じだ。また、最後の章の50年以上に及ぶ好きな国/嫌いな国のデータによる分析も面白かった。(「韓国は裏切る」 室谷克実、新潮新書)

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雪の花 秋吉理香子

少し前に著者の長編を読んで面白かったので、本書を読んでみることにした。本書に収められた4つの短編は、それぞれが違った光を放っている。特に最初の2編が素晴らしい。両親の離婚をけなげに受け止めようとする中学生を父親の目から描いた最初の作品、突然の妻の失踪の謎を追いかける老人を描いた2つ目の作品、全く違う世代の心情をここまで細やかに描くことができる作者の力量に、まず驚かされる。著者の略歴をみると、小説家であると同時に映像関係の仕事もしているという。映像関係の仕事と小説の両方を手掛ける作家の作品はこれまで何冊も読んだが、期待外れのことが多かった気がする。映像化されることを意識したり、視聴者の反応を意識的に操作しようという下心が透けて見えるようでどうしても好きになれない部分があるからだ。本書は、そうしたわざとらしさとは無縁なところにある。物事を人に伝える時にその媒体を何にするか、著者がそれをよく知っているからだろうと思う。これで、著者の作品は、長編と短編を一冊ずつ読んだことになる。作風などから考えると、次の短編集というのは当分期待できないのかもしれないが、自分としては短編集の方が断然作者の良さを感じられるような気がした。(「雪の花」  秋吉理香子、小学館文庫)

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翼を持つ少女(上下) 山本弘

「ビブリアバトル部」に入部したSF好きの女子高生達を主人公にした学園小説だが、実際には、ビブリアバトルの面白さと古今のSFの名作の紹介を中心とした入門書に近い内容の一冊だ。昔読んだ記憶のある作品から最近読んだばかりの作品まで、色々な年代のSFの古典が数多く紹介されていて、どんな話だったか思い出せないものがあったり、あぁこんな内容の本だったなぁと懐かしくなったりで、結構楽しく読むことができた。巻末についている作品リストを参考にして、これから読もうと思った本も何冊かあり、それも有り難かった。「翼を持つ少女(上下)」 山本弘、創元SF文庫)

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