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天国でまた会おう(上・下)  ピエール・ルメートル

「その女アレックス」の大ヒットで、今日本で最も読まれている欧米ミステリー作家と言われる著者の新しい作品。少し前に著者が初来日して話題になっていた。しかも本書はゴンクール賞受賞作品だという。著者の本はこれまで3作品読んできたが、いずれも大きなどんでん返しのあるミステリー小説だった。書評の紹介では、本書はそうした作品とは一線を画す全く違うジャンルの作品で、純文学の世界をもうならせたという。読んでみると、最初のうちは少し回りくどい表現がややとっつきにくかったが、状況が判るにつれてどんどん物語に引き込まれてしまった。最後に大きなどんでん返しはなかったが、次の展開にハラハラさせられるサスペンスの魅力はこれまでの作品と変わるところがない。話の内容の半分は実際にあった事件、もう半分はフィクションとのことだが、半分にせよ本当にこんな事件があったんだと思うとビックリだ。最後の奇跡のような偶然については、もともとリアリティを追求した作品ではないし、一つの曲線が最後に輪になってつながったような感じがして、欠点というよりも逆にここが書きたかったんだと強く感じた。(「天国でまた会おう」 ピエール・ルメートル、ハヤカワ文庫)

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