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アムステルダムの詭計 原新一
「第8回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作」と銘打たれた本書。著者略歴を見ると、一般企業を退職した著者のデビュー作とのことだ。書評等をみると、昭和40年頃に実際にあった「アムステルダム運河殺人事件」、画家フェルメールの絵画に関わる謎といったキーワードが並んでいるが、これらがどのようにつながるのか皆目見当がつかない。そんなことを想いながら読み始めたが、すぐにその安定した文体に引き込まれてしまった。内容は、戦後の日本の復興、東京オリンピック、三億円事件、学生運動、バブル景気等、我々やもう少し年上の世代が記憶する大きな出来事と共に進行する事件を追ったミステリーで、その意味でも不思議な共犯者のような感覚を共有しながら読んでしまった。巻末に「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞書」の選者による、選考理由と解説が掲載されているが、そこにも同様のことが書かれており、それが同世代の人の共通の感想なんだと、納得した。また、解説のなかで、本書には当然書かれて然るべきだ事件の幾つかが意識的に言及されていないという指摘があって面白かった。(「アムステルダムの詭計」 原新一、原書房)
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