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コンビニ人間 村田沙耶香

日本だけの現象ではないと思うのだが、経済発展とか社会の成熟度がある程度に達すると、生存・安全といった問題の他に、精神的な息苦しさ・閉塞感・疎外感といった問題が我々の心にもたげてくる。コンビニという日本的なシステムは、それを投影した存在であると同時に、それから生じる痛みを軽減してくれる存在であるという。よく考えてみると、それはそんなに難しい考え方ではないし、そうした観点で書かれた小説などたくさんあって然るべきという気もするのだが、本書を読んでいると、その当り前さにも関わらずすごく新鮮な気持ちにさせられてしまった。そこには難しい理屈もないし、思考の末にたどり着いた境地といった気負いもない。ひたすら自分の考えたことを忠実に辿ると、一つの作品が出来ていた、そんな清々しさを感じる一冊だ。(「コンビニ人間」 村田沙耶香、文芸春秋社)

海外出張のため1週間ほど更新をお休みします。

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