「引きこもりと家族トラウマ」(服部雄一著・生活人新書)
この本はあくまで参考に読んでいただければいいと思います。
決して鵜呑みにしちゃいけないという事です
引きこもりは甘えではなく病気である
この本を貫く思想は上記の「引きこもりは病気」という考え方です
育った環境がハードで、親からネグレクトされたりきちんと愛されなかった子供が
次第に感情表現が出来なくなり、ある日爆発する。
親は実は「子供を可愛がらなかった」という自覚がなく、ただ「手がかからな
いいい子でした」というイメージしか持ちません
そんな時間の流れの中で子供は傷つき、「アタッチメント・トラウマ」を持ちます。
誰とも親しくなれない
対人関係で緊張する
自分を抑えて相手に合わせる
感情をうまく表現できない
等などのトラウマを持ち、結果「引きこもり」になっていくという事ですね。
根底には強い「人間不信(特に親)」があります
今まで日本では「引きこもり」は親のしつけが悪いとか、本人の甘えによるもの
だと言われて来ましたが、筆者は「日本特有の精神病」と位置付けています。
アメリカの学者さんも同様に考えているようです
そこまではいいんですよ・・・そこまでは
治療に関しても、いわゆる「熱血教師」のように思い切って外に連れ出したり、
一人きりにしたりせず、入院という過程を踏んで、カウンセリングを続けながら
人間関係に恐怖感を抱かないように自我を育てていくという事ですから。
でも私が疑問なのは、筆者がこの本の中で頻繁に使う「抑圧」という言葉です。
「社会的抑圧」「親による抑圧」「学校による抑圧」
要するに日本の子供は周り中「抑圧」だらけの環境にいる為、
アメリカの子供達のように「自己表現」がうまく出来ない、
できる環境にないというのです
筆者はアメリカにいた経験が長く、「自分の意見をはっきり言う」社会の中で
暮らしていたため、日本の様に「意見を言ってはいけない雰囲気を持つ社会」が
とても窮屈で「抑圧的」に感じるんですね。
特に子供にとっては学校や社会で「個性重視」とはいいつつも、
実際は「没個性」じゃないといじめられたりする環境や習慣に
警笛を鳴らしています
まあ、確かにそういう側面があると思いますが、
「抑圧」を破るのは他でもない「若い世代」の子供達ではないかとも
思うんですよ
「生き辛さ」を感じて自殺したり、引きこもったりする事を全て
「大人社会の抑圧のため」という風に定義づけてしまうのは危険ではないかと・・・
それこそがある意味の「子供の甘やかし」になるのではないかと思うんです
どんな時代も「抑圧」は存在しました。
でもどんな時代もその「抑圧」を跳ね飛ばしてきたのは「子供」ですよね。
むしろ今の時代の子供達に「抑圧」を跳ね飛ばすだけの力がない事のほうが
問題です。
この本の中で「引きこもりは病気」と定義するのは賛成ですが、
「責任は大人にある」というのはどうかと・・・・
そういう考え方がエスカレートすると「フリーセル教育」になります。
「フリーセル教育」というのは「子供を抑圧から解放し自主性を育てよう」と
いう考え方で、
文章で見るとやたら理想的なのですが、非常に大きな落とし穴があります。
実はうちの子供達が通っていた保育園で、娘が年長組の時に「フリーセル教育」が始まったのですが、散々な結果をもたらしました。
というのは・・・・「何でも子供の意思を尊重し、自分で考え行動させる」というの
が基本になりますので、たとえそれが善悪のよしあしがわからない小さい子でも
そうさせてしまったんですね。
事例1
2歳児が小さな子を泣かせてしまった。でも保育士は叱らずに見ているだけ。
理由は「その子がいじめるのはいけないこと・という感情を持つまで待つ」という事
らしい。
事例2
お昼時間になっても食事を取らない、お昼寝の時間も起きている子が多い。
保育士は「その子がそうしたくなるまで待つ」んだそう。
「お昼ご飯はお昼に食べるもの」という気持になるまで待つらしい。
感覚的に理解していただけたと思いますが、ろくにしつけを受けていず、
「何がよくて何が悪いか」という価値観を持たない子供に
「自主性を持って考えさせるために何も教えない」というのは間違っていませんか?
当然、保護者会で問題になり、緊急保護者会を開いて先生達に
「どうして子供を野放しにしておくのか」と抗議したのですが、
園長曰く「子供を抑圧から解放するため」と言いました
「ああしなさい、こうしなさいと命令を与えるだけでは子供はきちんと育たない」
というのが園長の持論でしたけど、
小さい子には親がきちんとした価値観を与えてやらねばならないというのが
私の考え方です。そうして大きくなった時に子供は初めて
「価値観の相違や矛盾」に気づき、比較研究するわけです
結果、どうなったか・・・
保育所育ちの子達は、幼稚園児のようにお勉強ができるわけではありませんが、
集団生活に適応しやすく、ルールを守れる子が多いのが自慢だったんですね
それが小学校に入っても教室の中を徘徊する、ぷいっと出て行くなどの問題行動を起こす子が増えました。
行過ぎた「社会的抑圧からの解放」もまた問題であるという事です。
(鵜呑みにしてはいけないといったのはこの事です)
筆者は「日本の教育は中央集権システムにのっとり、去勢教育で戦前と同じ」
と嘆いていますが、私にはそこまでは思えませんが・・・
この本には「ひきこもり防止策」として
子供に見捨てられ恐怖を与えない
ペット扱いをやめること
三世代同居の問題を考えること
いじめの撲滅
を上げています。
「子供が感情表現できない全ての状況を取り除くこと」が
一番の課題だそうです。
プラス個人的に付け加えるなら親世代が「なぜ子育てをしているか」を
考えるべきではないでしょうか?