本題に入る前に、私達ファンが宝塚の生徒というものに持つイメージを語りたい。
宝塚音楽学校の競争率は高く、狭き門である。
音楽学校の2年間は軍隊並に厳しく、礼儀や作法や接し方を徹底的に指導される
宝塚歌劇団の生徒は原則として年功序列。例え、歳が上でも下級生であれば敬語を使う。
宝塚歌劇団の「同期愛」はすさまじく、これがジェンヌの力の源になっている
たとえトップスターにならなくても、中途からでも努力して成果を残す程努力家
組にはそれぞれカラーがあり、しきたりなどが違う。
等々。無論、いわゆる「いじめ」などは日常茶飯事でありそれらを乗り越えていくのがタカラジェンヌ。だからコロナ禍において多くの芸能人が自殺をしたけど、ジェンヌに限ってはないと思っていました。
しかし、昨今はそうでもないと言う事がよくわかた一件だったと思います。
まず、有愛きいの自殺は「いじめ」が原因ではないということ。
原因があるとすれば、本人の気持ちの問題だったんだろうと言う事です。
まず、宙組という組について話しましょう。
1998年発足の宙組は、当初、各組からの寄せ集めでスタートしました。
トップスター姿月あさと、娘役トップ花總まり。
姿月が1年で退団。その後、和央ようかが2代目となり6年間トップ。
その後は貴城けい(1作)大和悠河、大空祐飛、凰稀かなめ、朝夏まなと、真風涼帆、そして芹香斗亜ですが、生え抜きが一人もいません。
当初から、生え抜きのトップを作らないつもりだったのか、貴城けい、大空祐飛の落下傘トップ、凰稀かなめも2番手としての期間は短かったですね。
花總まりがかなり長い期間娘役トップを務めたので、その間辞めて行った路線娘役は多数。
そしていつしか、路線男役で早めにトップにしたい場合は宙組へという流れが出来ました。
じゃあ、芹香斗亜は7年でしたっけ?2番手だったじゃないかと言われてしまいますね。
芹香斗亜は元々星組、そこから花組で2番手まで進も突如宙組へ異動。
これには諸説あるのですがここでは触れません。
真風涼帆とは旧知の仲ですし、相性がよかったのか延々と2番手でした。
和央ようかも長かったですが、彼女の場合は2番手がころころ変わっていました。
真風涼帆・芹香斗亜・桜木みなとの3人の並びはほとんど見飽きてしまう程長い期間で、宝塚でも珍しいケースではないでしょうか。
朝夏まなとトップの時代、2番手として有能さを現わしていた愛月ひかるが突如星組に異動させられ、結果的にトップにならずに退団しました。
また、桜木みなとが95期にも関わらず、いつまでもトップになれない現状を察する時、いつしか、初舞台生が宙組配属になると「トップになれない」という事でがっかりするというような話まで伝わっています。
組長は、1998年から2002年まで出雲綾が務め、その後は2023年まで寿つかさが組長。
これまた長すぎる組長生活と言えたでしょう。
宙組は寄せ集めから始まり、生え抜きを大事にしなかったがゆえに、自然と作られるカラーや組風などが決まらず、その都度よそから来たトップによって変わる事が多々あったでしょう。
宝塚なんだからどこの組でも同じ・・・ではなく、代々受け継がれた「芸」やメイクやしきたりなど特徴があり、それを守る役割を果たすのは「組を愛する」気持ちだったかなと。
私などは発足当時から宙組を見て来ましたが、いいと思ったのは大空祐飛と朝夏まなと時代ぐらいで、あとはごちゃごちゃ感と好き勝手感が否めない印象です。
特に真風涼帆時代というのは、組自体が緩んでいるな・・・生き生き感がないと思っていましたし、桜木みなとのような芸達者がいたずらに歳を重ねていくのが悲しかったです。
現在、宙組生は68人。他の組が80人体制なのに対して異常な少なさですね。
真風涼帆時代に大量退団があったけれど、補充がなかったのか、退団者がその後も増え続けたのか。
そしていよいよ有愛きいの話に入ります。
有愛きいは103期生。新人公演の長。
ここからは文春の書いた記事ですが
新人公演の稽古で疲弊しきっていた。
103期は下級生の面倒をみつつ、一部演出なども手掛けなくてはならなくて、プレッシャーを感じていた。
下級生からの突き上げ、上級生からの叱責があり、亡くなる前日も夜中の12時まで説教を受けていた。
宙組の初日は出演。でもその日の夜に親にLINE「精神が崩壊している」と。
マンションから飛び降りたけど、発見させるまでに時間がかかった模様。
妹で雪組生の一禾あおは舞踊会に出演。訃報を聞いて泣き崩れた。
理事長はあいさつしたが、詳細を語らず
「パガド」は自死するシーンがあるので、今後演出を変えるのではないか
だそうで。恐らく来週あたり、LINEの内容とか色々出そうな気がします。
有愛きいは京都の140年も続く漬物やの令嬢。宝塚で姉妹で住んでいるマンションも親が買い与えたもの。
音楽学校は非常にお金がかかります。学費に制服にお稽古着・・それに自主稽古で別枠で月謝払って習っている子もいますので、1学年差で二人を入れると言うのは親側にしたら相当な負担だった筈です。
娘役はアクセサリー等も自腹ですし、お金のかかり方が違いますよね。
だけど娘たちの夢の為に親は精一杯尽くしたと思うんです。
宙組の103期はここ数年で次々退団。人気で始めの亜音有星も「カジノ・ロワイヤル」を最後にずっと休演しています。
これも事情がありそうで。
つまり、今回の新人公演は長の期が2人だけ。一方一つ下の104期は結構な数がいます。
もしこの104期が103期の言う事きかなかった為に、有愛きいが非常に悩んでいたとするなら、誰が助けるべきだったのでしょうか?
大昔は上級生の言う事は白いものも黒といわなければならないしきたり。
私もずっとそう思っていたけど、どうも96期あたりからそうじゃないようで。
生意気な下級生に手を焼く上級生というのがいたようです。
だけど、新人公演を卒業した生徒は、基本、もう新人公演には関わらないので帰宅する時間も違うし、個人的に相談を受ければ別だけどそうでない限り口を出す事は出来ない。
組長や副組長が目を光らせると言っても、新人公演の稽古は公演終了後に行われますから、この時間は演出に関わる人か生徒のみって事になりますよね。
特別仲のよい上級生などがいて「お稽古見てあげようか」って言ってくれて、一緒に残ってくれる・・・人もいればまたよかったかもしれないけど、みんな疲れているしすぐ帰りたいし。
だから孤独感を募らせて死を選んでしまったと言う事はありえると思うんです。
星組のようにめちゃくちゃ濃厚な先輩後輩同期の助け合いというのがあればいいけど、宙組は伝統的にそういう組じゃなかったでしょうしね。
だけど。
やっぱりどんな理由があっても、死を選んではいけないんですよ。
同じ宝塚にいる妹はこの先、どうやってジェンヌとして過ごしたらいいのですか?
親御さんたちはどうなりますか?
今回、ネットでは天彩峰里を自殺の原因として糾弾するような書き込みが目立ちますが。
それは全然違います。
むしろ、下級生に教えた側が悪にされるなんて風潮がまかり通ったら宝塚の神髄が壊れますから。
今回の事でまた宙組から大量退団を出すかもしれませんよね。
でも、これは「下級生の心得」をちゃんと教えなかった宙組の責任です。
かつて真風涼帆がスカステで「宙組は自由。冷蔵庫の中のものも勝手に食べちゃう人がいる」とか言って笑っていた事があるけど、本来は言語道断ですよ。
どこの世界も厳しいです。
人を幸せにするのが演劇の素晴らしい所なので、こんな事実を突きつけられて、ファンとしても悲しいし悔しいです。