今年は、不安定な気候と酷暑が続く中、7月に入ってからCOVID−19の流行が急拡大しました。収束時期が見通しにくい状況下、医療を日々続けている関係者、感染防止に留意しながら高齢者の介護や子どもの保育・教育に携わっている関係者などの様々な努力に深く感謝しております。
現場で頑張っている人々もちゃんと見て下さっている。
また今年も、記録的な大雨や河川の氾濫などによる被害も各地で生じました。COVID-19流行に伴う不便さや不安、そして自然災害などによって、生活の基盤に大きな影響を受けた人々のご苦労はいかばかりかと、案じております。
世界に目を向けても、異常気象や厳しい世界情勢などによって住む場所を失った人々、命を落とした人々のニュースが続いています。
「令和4年(2022年)広島平和記念式典」において、こども代表の小学生が、「今この瞬間も、日常を奪われている人たちが世界にはいます。」と述べた言葉を聞いた折には、一人の母親として、子どもたちが未来への希望を失わないようにと願っています。
「母として」よいう言葉が刺さりますね。
この一年に国内外で印象に残った出来事を思い起こすと、うれしいこと、悲しいこと、様々でした。
科学の分野では、眞鍋淑郎さんが昨年の秋にノーベル物理学賞を受賞され、また文化勲章を受章されたことは、大変喜ばしいことです。
また、2020年に帰還した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウで採取した試料は生命の起源の解明の手がかりになるという報道がありました。
この試料のレプリカは各都道府県で展示され、子どもたちが小惑星から宇宙へと興味を広げることにつながるのではと期待しています。
スポーツの分野では、パラリンピックで金メダルを取った車いすテニス選手の国枝慎吾さんが、昨年の全米オープンから四大大会をすべて制し、「生涯ゴールデンスラム」を達成したことが印象に残りました。
悲しいお別れもありました。海外の児童書の翻訳も手がけられ、子どもたちが読書によって人類の知恵を吸収することを願い続けてこられた東京子ども図書館名誉理事長の松岡享子さんが1月に亡くなられたことは、とても寂しいことでした。
3人の子どもたちが幼かったとき、松岡さんがいらした東京子ども図書館に出かけて本を読んだり、昔話などのお話を聞いたりしたことを懐かしく思い出しております。
また先月、文化勲章受章者の森英恵さんが亡くなったことを大変残念に思います。
私や娘たちにも、宮中での大切な行事のための装いをお作りくださいました。日本の服飾文化からタイ王室で作られている絹地への思いまで、幅広いお話を伺ったことは、よい思い出になっております。
また先日、長年携わってきた結核予防活動に関連する大きなニュースとして、日本がWHO(世界保健機関)の基準での「結核低まん延国」になったという(厚生労働省による)発表がありました。
戦後、結核が高まん延状態にあった時期から今日まで、結核を減らすための対策に尽力してきた関係者に感謝しております。
一方、近年の急激な患者数の減少は、COVID-19による受診率の減少も関係があると考えられるため、今後も経過の観察と結核に罹(かか)るリスクが高い人々に対する支援が必要であると聞いています。
感染症には国境がないと言われる中で、COVID-19と同様に、結核やその他の感染症への対策は、世界の国々や国際的な協力が重要であると思います。
日本人ってかなり結核の危険性に鈍感になっているような気がします。コロナ禍で接触の機会が亡くなった分、感染の広がりが抑えられているかもしれませんが、コロナのように次々先進的な薬は作って貰えません。
結核はお金にならない「貧乏病」と思われている為、研究者が少ないのです。
紀子様達の活動が啓発に繋がればよいと思います。
皇室の関係では、COVID-19のため延期になっていた立皇嗣の礼後の神宮ならびに山陵への参拝を今年の4月におこなうことができました。
これをもって、御大礼に関係する行事のすべてが終了したことになり、私どもも安堵(あんど)するとともに、今の立場に伴う責任への思いを新たにしました。
コロナ禍により世界の人々が困難に直面している時期に一連の行事を終えることになりましたが、これからも宮様とともにいかなる時節にあっても人々の暮らしの安寧を祈り、天皇皇后両陛下をお支えしながら、務めを果たしてまいりたいと思っております。
皇嗣両殿下、おめでとうございます。
上皇陛下には、米寿をお迎えになりました。
コロナ禍以降は、上皇上皇后両陛下へご挨拶申し上げる機会が限られていましたので、いかがお過ごしでいらっしゃるかと折にふれて思いながら過ごしておりました。
そのような中、今年の春に赤坂御用地にお引き移りになり、お二方ご一緒で御用地内をご散策中にお目にかかることもあります。
お身体を大切にされ、穏やかな時間をお過ごしになられることを願っております。
昨年の12月には、敬宮様が成年を迎えられました。
娘たちと一緒にすてきな笑顔を見せて遊んでいらっしゃったご幼少の頃から、あっという間に月日が経ったようにも感じます。
また、今年の6月には、三笠宮妃殿下が白寿の節目を迎えられました。
皇室のご慶事の続いた一年でした。
天皇皇后両陛下をはじめ、皆さまがこれからもお健やかにお過ごしになられますよう願っております。
赤坂に移った上皇陛下がよく悠仁殿下と会うというようなお話があります。
悠仁殿下の存在が癒しになるといいですね。
この一年の間に様々なことがありましたが、誰もが安全で安心して暮らせる社会であってほしいと強く願わずにはいられません。
今までに経験したことがない感染症に遭遇した当初は対応に苦慮し、自粛生活が人々の心身の健康にも、そして生き方にも大きな影響を与えてきました。
感染症の状況は予断を許しませんが、この一年はもう一歩、それぞれの活動を進める模索や工夫が各地でおこなわれているように感じました。
その中で、声を上げることが難しく、辛く悲しい気持ちでいる人たちが取り残されることのないように、広い視野をもつことが大切なのではないかと思います。
感染症や気候変動について考えるとき、私たち一人ひとりの行動が隣の人に、更に遠くの地に暮らす人たちへも、そして地球全体に影響を与えていることに気づかされます。
お互いを大切に思い、支え合いながら、この時節を乗り越えていくことができるよう努めてまいりたいと思います。
前向きで希望が持てるなあと思います。