夢見るババアの雑談室

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伊岡舜著「瑠璃の雫」 (角川文庫)

2020-10-05 21:02:21 | 本と雑誌



角川書店「七月のクリスマスカード」を改題した作品だと宇田川拓也氏の解説にあります

杉原美緒は小学生の時に弟の充を死なせて自分も死のうとした

幼い充が赤ん坊の穣を死なせたーと美緒の両親は教えた

穣が死んで 母親は酒浸りになり そんな母親を置いて父親は出ていった

父は家を出る前夜 美緒に赤い毛糸の手袋をくれた

美緒は家庭が壊れたのは充が穣を死なせたせいと信じていた

充を素直に可愛がることはできない
でも他人が充をいじめたら もういじめないようにと相手をおどすこともする
結果 おどした相手の兄と悪友から酷い目にあわされるが

アル中で幾度も救急車で病院に運ばれ 入院する母親

充のしでかしたことで 弟に万引きさせた姉と誤解され責められたり

美緒は指を噛んでこらえる癖がついてしまった

救いは母の妹の薫
実によく世話をしてくれる

その薫の客に元検事の永瀬がいた

薫によれば 娘の瑠璃は幼い時に誘拐され行方不明

そして薫は瑠璃が見知らぬ男が瑠璃の手を引いて連れていくのを見ていたのだと
薫は瑠璃と友達だった

その時は誘拐などと思わず 
ずっと自分のことを責めてきた薫

けれど永瀬の妻も永瀬も薫を可愛がってくれた

瑠璃が居なくなり 夫婦としての永瀬と妻は壊れた

事件後 妻は転勤する永瀬についていかず残り 夫婦は長年 別々にくらした

その妻も病死
永瀬はある場所で怪我をし足が少し不自由になった

その永瀬の趣味を充に教えてやってほしいと強引に薫は頼みこむ

薫は美緒のことも充のことも 不自由な体で一人暮らしの永瀬のことも案じていた
美緒と一緒に永瀬の家の掃除を申し出る


美緒は知らず 永瀬には美緒が瑠璃と似て見えた

もしも娘が生きていたらー

しかし そうではないことも既に永瀬は知っていた

消えた娘 娘がどうなったのか

行方を捜して 誰が犯人か考えて考えて

ひそかに突き止めてはいた


ただ妻の為にー
妻の精神のことを考え 彼は娘の遺体を埋めた相手を告発はしなかった


高校を卒業した美緒は薫のツテで就職する

永瀬の家が火事で永瀬も重傷
そして亡くなる

末期がんでもあった永瀬は美緒への言葉をのこしていた


美緒は永瀬とのこれまでを思い返し 永瀬の旧知の記者とも出逢い

永瀬の昔かかわった事件について詳しく知る

とうとう瑠璃の遺体が何処にあるかも知るのだった


美緒は自分の両親のついた嘘についても気付く

穣を死なせたのは弟の充ではなかった

一番つらかっただろう充


美緒と充に薫と永瀬の存在があって良かったと思う

美緒が勤務する会社の社長も良い人だし


この環境でよくぞ ぐれもせず まっすぐ育った美緒ーと

幾つもの謎と 苦悩と



それでも人は生きていく


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