特に、農業に関連し、酪農製品や鶏肉・鶏卵の生産や輸出入を各生産者に割り当てる「供給管理政策」を堅持するカナダのTPP参加承認は、日本と共通の障壁課題を有し、過去にも参加を見送った経緯もあり、注目していました。
そのカナダも障壁を乗り越えて参加に漕ぎつけたことは、日本がいかに怠けているか、学ばねばなりません。
遅れて取り残されるから焦って参加しろと言っているのではなく、カナダ政府の努力と戦術に比べ、何事も直前まで放置し、一夜漬けに近いドタバタの中で決めてしまう民主党政権の重要政策への取り組み=怠けた姿勢に、世界の国々の常識を学んでいただきたいのです。
日豪EPA妥結持ち越し 日本は世界の自由貿易から取残される - 遊爺雑記帳
カナダは酪農製品や鶏肉の“減反”にこだわり:日経ビジネスオンライン
メキシコ・ロスカボスで開かれている主要20か国・地域(G20)首脳会議(サミット)で、メキシコの環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加が決まった。一方、野田首相は、国内調整の遅れから日本の正式参加表明を見送った。アジア太平洋地域における自由貿易のルール作りは、日本抜きで着々と進んでいる。(ロスカボス五十棲忠史、岡田章裕)
メキシコ参加決定
■強弁
メキシコの参加が決まった18日(日本時間19日)、野田首相はオバマ米大統領と短時間会談したが、日本のTPP交渉参加について互いに努力し合うことを確認するにとどまった。
枝野経済産業相は19日の閣議後記者会見で、「(メキシコとは)状況、立ち位置が違う」と強がったが、日本の遅れは明白だ。玄葉外相は「(社会保障・税)一体改革の議論にまず決着を付ける。その上でTPPの意見集約をしていく」と述べ、遅れたのは一体改革のせいと言わんばかりに釈明した。
日本、カナダ、メキシコは、昨年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)に前後して、ほぼ同時にTPP交渉参加の意向を表明した。3か国の同時参加が有力とされたが、メキシコが先行することになった。
■米の思惑
TPPの旗振り役の米国にとっては、メキシコは貿易自由化に熱心で、ともに北米自由貿易協定(NAFTA)を結んでおり、3か国の中で最も受け入れやすい相手だった。
カナダもNAFTAに加盟しているが、牛乳やバターなどの価格と供給を安定させるため、農家に生産量を割り当てる供給管理を行っている。農家を保護する方針を堅持しており、米国が交渉入りをすんなり認められる相手ではない。
日本は、米国にとって消費市場としては魅力的だが、コメや砂糖、乳製品などの重要品目を多く抱える。米側から見ると、高いレベルの自由化に対応できるのかという疑問をぬぐえない。米自動車メーカーが日本の交渉参加に反対しており、大統領選を前に、米政府が簡単に参加を認めるわけにはいかない事情もある。
■次は9月
日本にとり、G20で正式な参加表明ができなかったことで、次の節目は9月にロシア・ウラジオストクで開かれるAPEC首脳会議となる。ただ、9月に交渉参加が認められたとしても、米政府が新たな通商交渉に入る場合、90日前までに連邦議会に通告して承認を得る「90日ルール」があるため、実際に交渉に参加できるのは年明けとなる公算が大きい。
メキシコの交渉参加決定には、枝野、玄葉両氏も織り込み済みで、言い訳逃れを出来ていました。が、しかし。。
【ロスカボス=岡田章裕】環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に、新たにカナダの参加が決まった。19日に米国とカナダの両政府が発表した。TPP交渉には18日にメキシコの参加が決まっており、昨年11月にメキシコ、カナダと同時に交渉参加の方針を表明した日本が取り残される構図がより鮮明となった。
カナダはメキシコに続き、米国や豪州などTPP交渉に参加する9か国すべてから参加を承認された。日本は米国などとの事前交渉を続けているが、出遅れの背景には、農業分野などで国内の意見集約が遅れている日本側の事情もある。
オバマ米大統領は19日、主要20か国・地域(G20)首脳会議後の記者会見で、メキシコとカナダのTPP交渉参加が決まったことを「われわれの通商の課題を進めるうえで著しい進展があった」と歓迎した。
全米商工会議所は声明で、カナダの交渉参加が決まった要因として、カナダ議会が18日夜、米国との事前協議で懸案とされた著作権を巡る法案を承認したことを挙げた。
カナダ政府の国内世論への説得と、交渉参加への戦術遷移は、上記の「日経ビジネスオンライン」のリンク記事に詳しく載っていますが、押したり引いたりの交渉が国益と言う大きな目標を達成するために行われたのですね。
つまり、世界中がそうである、アジア市場の活力を取り入れ自国の活性化を進めることを考えたのでした。
ですから、カナダのハーパー首相は「新たな市場を開拓し、ビジネス機会を創出することは、全てのカナダ国民に雇用、成長、長期的な繁栄をもたらす」との声明を発表したそうです。
カナダもTPP交渉参加へ 日本の出遅れ一段と :日本経済新聞
上記の記事で、日経は、「国際的な自由貿易圏づくりで日本の存在感が一段と薄まりそうだ」と括っています。
民主党政府が行った、戦術と思しきものは、日中韓FTA交渉への取り組みで、米国を牽制しようとしたと思われますが、中韓が日本を除いて二国間のFTAを先行させることにし、ここでも取り残されてしまっていました。外交は日米同盟が基軸といいながらのこの行動は、ルピー鳩や、韓国・盧武鉉の「均衡論」の類で、同盟国である米国から信頼を失うだけのものでした。
TPPと日中韓FTA 二兎を追う日本は孤立へ - 遊爺雑記帳
ただ、TPPについては民主党だけを責めることは出来ず、自民党も党内で賛否が分かれていて、野田氏ほど強く主張する執行部役員は見当たらないのが現状です。
TPPについての考え方 ; 自由民主党
毎回唱えるのですが、高齢化で後継者不足の日本の農業は、現状の形を保護すると言うことは座して死を待つというか、茹でガエルというか破滅の坂道を転がり落ちる時間を少し先伸ばしするだけのことで、改革が求められているのです。TPPを機に、その改革をすすめ、将来に向けて継続可能な農水林産業を構築する必要があるのです。
日本経済全体としても、増税での社会保障の一体改革の他に、経済活性化での税収増を図るのが必要で、そのためには、カナダも目指して踏み切った、アジアの活力の取り込みが欠かせないのです。
政府は、カナダの様に、そのことを広く国民を説得すべきなのです。
日本にそれが出来る政党や政治家はいないのでしょうか。
# 冒頭の画像は、カナダ・ハーパー首相と、米・オバマ大統領
この花の名前は、ハクサンハタサオ。 撮影場所;六甲高山植物園
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農業だけの問題ではなく全体的に見て日本にとってプラスになるかならないかの判断が本当に必要であると思います。
以前にご指摘された通り日本政府の交渉能力は毅然としているとは言えません。そんな中でTPPのようなアメリカをはじめ10数カ国で行う国際的な大会議、大問題で交渉を日本に有利に進めることができるかどうかの可能性はゼロに近いと言わざるを得ません。「バスに乗り遅れるな」と言うよりもそのバスから飛び降りるべきだと思います。「置き去りにされる」というよりも日本は鎖国をしていません。まだ第2次世界大戦以前のような世界のブロック経済に締め出されるような事態ではありません。TPPは極端な話見送りでよいと思います。
日本が個別にアジアと連携を進めていく、あるいはカナダやオーストラリアと個別にFTAを結んでいくことのほうがより現実的な方法なのではないのでしょうか?