遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

北方四島 「特別な制度の下で行う共同経済活動」 その後

2017-07-28 23:58:58 | ロシア全般
 昨年12月のプーチン大統領訪日では、領土問題に期待を煽る日本の報道に冷や水をかけたプーチン大統領。領土問題については、「引き分け」よりむしろ後退する姿勢で、各種経済協力の調印を長々と披瀝する、台所が苦しいロシアの成果はしっかり示される結果に終わっていました。
 「特別な制度の下で行う」四島での共同経済活動を成果としてあげた日本政府。9月の首脳会談に向けて交渉が進められていますが、ロシア情勢には札幌大学の木村名誉教授と双璧の詳しい新潟大学の袴田教授が、怪談としか言いようのない 2つの事態が、日露関係に生じていると指摘しておられます。

 

日露関係に絡む2つの「怪談」 新潟県立大学教授・袴田茂樹 (7/28 産経 【正論】)

 怪談としか言いようのない2つの事態が、日露関係に生じている。この2つの問題は日本側の上滑りの対露政策の本質
を、痛いほど突いている。

≪共同経済活動は新たなハードル≫
 
怪談1昨年12月プーチン大統領が訪日したが、彼が強調したのは経済協力のみで、「領土問題を解決して平和条約締結」の話し合いは、むしろ後退した。かつて露側が求めた四島での共同経済活動を、昨年5月に安倍晋三首相の側から提案。12月の首脳会談では、平和条約への第一歩として「特別な制度の下で行う」ことに合意したと首相は発表した。筆者は、露側は共同経済活動は露の法律下で行うのが基本原則で、この面でプーチン氏は譲歩しないと述べてきた。「怪談」の根はここにある


 今年4月の日露首脳会談で、「島への官民調査団を5月中にも派遣」と合意し、結局調査団は7月1日までの5日間派遣された。日本政府に衝撃だったのは、直後の
7月6日に、トルトネフ副首相が「四島に新型経済特区創設を決定した」と発表したことだ。もちろん露法律下で実施
される。
 彼は極東連邦管区大統領全権代表でもあり、その決定はプーチン氏自身の決定だ。露国営メディアは「南クリル(北方四島)での日本との共同経済活動計画に終止符か?」と報じた(『SPUTNIK』日本語版 2017年7月7日)。
奇怪なのは7月8日の日本政府の良いことずくめの発表
だ。
 「6月末に派遣された
官民調査団による現地調査が極めて有意義であり、今後の検討の加速につながることを確認」「8月下旬の外務次官級の協議で、現地調査も踏まえ、9月の首脳会談に向けて今後必要となる法的枠組みの議論も含めて、プロジェクトの具体化に向けた議論を進める
」-。

 
筆者はこの面でのプーチン氏の譲歩は来年3月の大統領選挙後もあり得ないと考えている。恐らく何かグレーゾーンで象徴的な「共同事業」を幾つか考えて「前進」と発表されるだろう。筆者は共同経済活動の提案に関しては、日本側から新ハードルを設けたに等しいと批判してきたが、それが現実になってきている


 昨年12月の首脳会談のもうひとつの「成果」は元島民などの自由往来の拡大だが、官民調査団が島に派遣されたとき、サハリン州知事は北海道と北方領土の「定期航路」(船、航空)を提案した。これは共同経済活動に対する積極姿勢ではなく、相当の曲球(くせだま)だ。つまり定期便は法的に「国内便」なのか「国際便」なのか、日本側の苦慮を露は楽しんでいるだろう。

≪領土解決への期待に森氏を利用≫
 
怪談2プーチン氏は、昨年の首脳会談で、領土問題に関し日本側を大変失望させたことを十分承知している彼の最大の懸念事は、日本の国民や政府が、対露経済協力に関心を失うことだ
。そこで、意外な行動に出た。

 7月9日にエカテリンブルクで森喜朗元首相と会談後、森氏を彼の娘の待つホテルまで自ら送り、彼女をサンクトペテルブルクなどに招いたのだ。日本メディアはプーチン氏が「安倍首相は真摯(しんし)な人で全面的に信頼している」「平和条約問題(領土問題)は安倍首相と2人で解決したい」などと述べたと伝えた。露メディアは直接プーチン氏からではなく、日本メディアから森氏が話した会談内容をカッコ付きで引用している。
 これらは、プーチン氏と森氏の親密な関係およびプーチン氏の領土問題解決への熱意を示すものだろうか。筆者は、
プーチン氏は日本側の失望感を改め、領土問題などで再び期待を持たせて経済協力に熱を入れるよう、森氏の対露観や彼と安倍首相や官邸周辺との関係を、十分計算し尽くした上で意図的に利用している
とみている。

≪プーチン氏の見事な交渉術≫
 
森氏の対露観
だが、「クリミア併合」の後、2014年9月に訪露した彼は、ナルイシキン下院議長(当時)とのフォーラムでおよそ次のような発言をしている。
 「
ウクライナの問題には長い貴国の歴史と複雑な関係があり、私たちはそれに関わる(口出しする)資格はない。露の国家や国民は、かつての領土であるだけに、この地域が北大西洋条約機構(NATO)に加わることに不服を言うのは、十分理解できる
。欧州連合(EU)が2年前、ノーベル平和賞を受賞して驚いた。その(EUの)皆さんがウクライナを反露戦線に巻き込んで、露を叩(たた)くということを本当に考えているのか。それではノーベル賞が泣く」
 この時、森氏はプーチン氏に安倍首相の親書を手渡しているが、
森氏が先進7カ国(G7)の対露批判とは百八十度反対を向いていることは明らか
だ。

 
日本人の露への信頼回復がプーチン氏の重要課題だ。そのために森氏を利用しない手はない。案の定、森氏は日本側が大いに喜んでプーチン氏への期待を復活させそうなことを、思惑通り日本のマスコミ向けに述べてくれた。交渉術の点ではプーチン氏は安倍氏や森氏よりも格段上である。この点ではお見事という他はない。(はかまだ しげき)

 「怪談1」は、日本側は「特別な制度」と言っているが、ロシア側は、「共同経済活動は露の法律下で行う」と言っている事。
 7月1日までの5日間派遣された、官民調査団の帰国直後の、7月6日、露・トルトネフ副首相が「四島に新型経済特区創設を決定した」と発表し、しかもそれは、ロシアの法律下で実施されるものだと。。
 しかし、日本政府の発表は、「官民調査団による現地調査が極めて有意義であり、今後の検討の加速につながることを確認」「現地調査も踏まえ、9月の首脳会談に向けて今後必要となる法的枠組みの議論も含めて、プロジェクトの具体化に向けた議論を進める」と。。

 「会談2」は、プーチン大統領は、昨年の首脳会談で、領土問題に関し日本側を大変失望させたことを十分承知していて、日本の国民や政府が、対露経済協力に関心を失うことを懸念していて、再び期待を持たせて経済協力に熱を入れるよう、森氏を利用することにし、森氏はまんまと乗せられた上に、「ウクライナの問題には長い貴国の歴史と複雑な関係があり、私たちはそれに関わる資格はない。」「この地域がNATOに加わることに不服を言うのは、十分理解できる。」「EUが2年前、ノーベル平和賞を受賞して驚いた。その(EUの)皆さんがウクライナを反露戦線に巻き込んで、露を叩くということを本当に考えているのか。それではノーベル賞が泣く」などと、G7の対露制裁とは百八十度反対の発言をしています。恥じも外聞もかなぐり捨てた媚露発言です。
 森氏は、何故G7との協調に背いて、媚露発言をしたのか。不思議です。ただただプーチンに取り入りたいだけなのでしょうか。G7の一員で、メルケル首相に次ぐ古参となった安倍首相は、G7でリーダーシップをとれる、これまでの日本では稀有のグローバルな首脳となってきたところです。この森氏の自己中心発言では、G7の中で孤立化を招くことになりかねません。
 森氏は、プーチン大統領の操り人形化してしまった、国賊と言えます。これではますますプーチンペースに取り込まれ、資源価格が低迷し、主力ガス田の枯渇にも直面し、北極圏や極東での開発を迫られている、台所の苦しいロシアに支援だけ吸い取られて、領土問題や平和条約は、いつまでも鼻先にぶら下げられたニンジンとして利用され続けるだけの従来外交となってしまいます。
 サハリン1, 2の開発で、完成間近になると、成果を掠め取られた苦汁を忘れてはいけません。
 台所が苦しい上に、資源の欧州での販路が閉ざされ新規の販路開拓も迫られているのはロシア側です。チキンレースになっているのですから、我慢比べです。国賊の森(トランプのロシアゲートならぬ、森氏にも疑いを向けたくなる)の出番ではありません。

 袴田教授も、プーチン大統領の交渉術に脱帽しておられますが、日本の外務省も、メドベージェフの国後島訪問を見誤った様に、対露外交では翻弄され続けています。中韓にも翻弄され放題の岸田氏が外務大臣を外れる由。首相候補などはとんでもない日本沈没に向けたどこかからの策謀(世論戦)の可能性も疑われますが、新たな外務大臣に、外務省改革を断行していただけることを期待します。

 禁止された天下りを温存した上に首になった意趣返しをする文科省の悪徳官僚。制服組と背広組の対立が表面化の内紛の防衛省・自衛隊。改造内閣では、官僚を使いこなせる実力派内閣にしていただけることを期待します。



 # 冒頭の画像は、ロシアのトルトネフ副首相




  ハネセンナの葉


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写真素材のピクスタ


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ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)
誰がメドベージェフを不法入国させたのか-国賊たちの北方領土外交





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