昨年からの米国のアジア重視・対中包囲網構築戦略展開で孤立化する中国は、ロシアとの関係改善で米国への対抗力強化を図ってきたようですね。
各紙が報じていますが、産経が各種ポイントを押さえてあるようです。
【北京=山本勲】5日のプーチン・ロシア大統領の訪中から7日の上海協力機構(SCO)首脳会議閉幕に至る中国の対露、中央アジア諸国外交は、相応の成果を収めたといえる。ロシアとは「戦略的パートナーシップの一段の強化」などで幅広い合意が成った。米オバマ政権の太平洋回帰戦略、折からのパネッタ国防長官のアジア歴訪が、決して一枚岩ではない中露の“蜜月”を後押しした観が深い。
昨年10月、大統領選を控えたプーチン首相(当時)が「ユーラシア連合」構想を打ち上げた直後、中国では「大統領復帰後のプーチンは旧ソ連復活をめざす気か」(対ロシア関係者)と警戒する空気が強まった。
同連合はロシア、ベラルーシ、カザフスタンの関税同盟を土台に、他の旧ソ連・中央アジア諸国と関税撤廃などにより経済統合をめざすものだ。しかし中国にとって中央アジア諸国は、地下資源が豊富であるだけでなく、新疆ウイグル自治区につながる安全保障上の重要国でもある。
中国の超高度成長はソ連崩壊による北方、西方からの脅威消滅によるところが大きかった。仮にプーチン大統領が旧ソ連の版図復活をめざしているとすれば、中国は将来、米露両国の挟撃にあう恐れが出てくる。
一方のロシアには、人口減少が著しいシベリアなど北東部への中国人移民増大で、これらの地域が中国化することへの警戒が強い。さらに、中国が中央アジア諸国と資源エネルギー協力関係を拡大していることも、ロシアをじらせている。
このように中露両国間には、対立の“火種”がいくつも存在する。しかしこれまでにも、米国の一国主義への反発や多極化推進の思惑、エネルギー協力などから中露は関係を強めてきた。その果実のひとつが、SCOといえる。
これに対し、オバマ政権は昨年来、アジア太平洋回帰の政策を進め、大統領選を控えた米国内では対中露強硬論が高まりつつある。
パネッタ国防長官は今月2日、海軍力の6割をアジア太平洋に振り向けると発言。ベトナム、インドとの間で軍事協力強化でも合意した。
11月の米大統領選に向け共和党のロムニー候補は、オバマ大統領の対中融和姿勢を激しく批判しており、大統領もより毅然(きぜん)とした姿勢をとらざるをえない。
ただし、こうした状況は中国やロシアにとって決して悪い局面ではない。対米を軸に、中露の“結束”を加速させる機会になり得るからだ。
逆に日米同盟の側から見れば、中露の“蜜月”は好ましくない事態といえる。日米両国は今後“アメとムチ”を併用しつつ、中露間の潜在矛盾を拡大させる必要がありそうだ。
中露の対立については、諸兄もご承知のことですし、遊爺も折に触れとりあげてきました。一方では、2001年に始まったSCO等第三国を含めた、日米などの先進国に対抗する連携もしています。
アムール川の中露国境では、2004年にタラバロフ島(中国名・銀竜島)と、大ウスリー島(同・黒瞎子島)で面積を折半する形で政治決着しました。
記事にあるように、中国からの人口の流入へのけじめもあったのでしょうが、その流れはとまっていない様です。
主力ガス田の枯渇に伴い、極東や北極圏での開発を迫られているロシアですが、開発への技術や資金もさることながら、人手も必要になっているのですが、中国からの進出に苦慮しているのですね。
極東で開発したガス田の販売先も必要ですが、中国に足元を見られ(欧州では脱露依存が進行)価格など折り合っていません。
一方、北極圏の開発では中国の進出に警戒を強めていますし、アジアのマーケット進出ではロシアもAPECなどへ重点をおく傾向で、米中が覇権を競う中、ウラジオストックの太平洋艦隊の増強も進めていることも衆知のことですね。
先進諸国との対立課題があると連携を強める中露が、今連携を強めたということは、それだけ両国が苦境に立っている証です。
両国が完全に同盟関係を結ぶことはありませんので、勝手にくっついたり離れたりしていればいいのですが、直近ではシリア問題に観られるように、国際世論のまとまりを欠く原因はこの両国の国連安保理の拒否権ですね。
日米での連携強化が、アジアでの両国の思惑をけん制する決め手です。
外交音痴の民主党政権ですが、国内問題ばかりに注力するのではなく、中国包囲網の更なる進展と、苦しいロシアが折れて来るのを待つ我慢の戦略が求められます。
# 冒頭の画像は、中露国境のアムール川
この花の名前は、バイモ(編笠百合)
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