アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンの、首都カブールを制圧に際し、日本政府は、アフガンに残る国際機関で働く日本人や日本大使館の現地スタッフら約500人の国外への退避のため、現地に自衛隊機を派遣しました。
多くの国々が同様に、自国民や自国民への支援者の脱出に動き、救出に成功していますが、日本は約500人の脱出目標に対し、米軍が撤退した8月末までに、米国の要請に基づき旧政権の政府関係者らアフガン人14人を、また、26日にはC-130輸送機が日本人1人をパキスタンの首都イスラマバードに輸送出来たにとどまりました。
目標に対しても、他国に比べても、悲惨な実績に終わったままです。
何故そうなったのか。元元空将補の横山恭三氏が、反省と改善点を挙げておられます。
8月15日、アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは、首都カブールを制圧。
これは、今日、バイデン大統領の失政(作戦準備不足)が国内外から批判されている通り、想定外の速さでの実現。
それでも、バイデン大統領は、予定通りに米軍のアフガン撤退を強行。
各国は、自国民や自国へ協力してくれたアフガン人の脱出希望者の国外退去を概ね完了させましたが、日本は大幅に目標未達となっていることは、諸兄がご承知の通りです。
海外で活躍する日本人が、なにかで救出が必要になった時、母国が救出に向かうのは、当然のはなしで、国家の義務。
今回の件で、日本が世界の中で劣る国だと明らかになりましたが、横山氏の総括のまず 1点目は、自衛隊派遣決断の遅れ。
8月17日、外務省は「在アフガン日本大使館の一時閉館とイスタンブールにおける臨時事務所の設置について」というプレスリリースを発出。
アフガン政府軍とタリバンが戦う南部カンダハルのインド総領事館から、インド外交官や警備員ら約50人が退避したのは、7月10日。
アフガンに残っていた大使館の館員12人は、本8月17日、友好国の軍用機(筆者注:英軍輸送機との報道あり)によりカブール国際空港から出国し、アラブ首長国連邦のドバイに退避と発表。
国家安全保障会議(NSC)開催は、8月23日。
岸防衛大臣は、午前の記者会見で、「自衛隊法第84条の4に基づき、アフガンからの在外邦人等の輸送について命令を発出。
日本を出発したC-2輸送機は、24日にパキスタンに到着し、25日にアフガンに入ったが、退避希望者が空港に着いておらず、26日にパキスタンに戻った。
24日に日本を出発したC-130輸送機2機は、25日にパキスタンに到着。しかし、26日に自爆テロが発生。バスで空港に向かおうとしていた約500人は、移動中止。米国の要請に基づき旧政権の政府関係者らアフガン人14人、日本人1人をパキスタンの首都イスラマバードに輸送。
8月31日、岸防衛相は、米軍のアフガン撤収で、派遣の前提となる現地の安全を確保できなくなったと判断し、アフガン派遣部隊の撤収を命じたのでした。
ほぼ移動を完了した世界の国々に比べて大きく見劣りする、失敗の結果の日本。
横山氏が、教訓としてあげておられるのは 2点。
一つは、自衛隊派遣の決断の遅れであり、もう一つは、在外邦人等の輸送および保護措置のための自衛隊の海外派遣について今後解決すべき法的課題。
現地の情勢を見れば、自衛隊部隊の派遣を検討・決断するポイントがいくつかあると横山氏。
・第1のポイントは7月10日、インド総領事館から外交官や警備員らが退避した時。
・第2のポイントは、8月15日、タリバンに首都カブールが制圧された時である。この時、日本大使館は一時閉鎖されている。
・第3のポイントは、8月17日、アフガンに残っていた大使館の館員が退避した時。
今回は、派遣要件の少ない「在外邦人等輸送」(自衛隊法第84条の4)を根拠とした派遣であることを考慮すれば、8月15日に自衛隊の派遣の決断が可能であったと考えられると。
上記の3つのポイントのほかにもう一つ重要なポイントが、インテリジェンス(諜報)に関連することであるので公表されていないが、我が国が、「イスラム国ホラサン州(IS―K)」の(自爆)テロに関する兆候情報を入手したのが何時か。
「国際テロ情報収集ユニット」は、テロに関する兆候情報を入手していたのか、その情報は関連省庁で共有されたのか、などを検証すべきだと。
気になる報道として2つ付言されています。
一つは、カブールが陥落した8月15日、岡田隆在アフガン特命全権大使はアフガン国内にはいなかった(朝日新聞デジタル2021.8.28)こと。
現地で陣頭指揮し、かつ現地情報を東京に報告する責任者がいなかったことは邦人退避作戦にとつて大きな痛手となったと。
もう一つは、茂木敏充外務大臣が、8月15日~24日の間、中東諸国訪問で東京を不在にしていたこと。茂木外相は15日午前、当初の計画通りに10日間の中東歴訪へと出発した。首都カブールではその日、タリバンが大統領府を制圧。第2の都市カンダハルが制圧された8月13日の時点で、カブール陥落が間近いことが予想されていた。
我が国の在外邦人の輸送・保護措置に関する法的課題は3つあると横山氏。
1つ目は、武器使用制限の緩和。
自衛隊の場合は「武器使用の制限」が他国以上に厳しく、この「武器使用の制限」が部隊の任務遂行や隊員等の安全確保にとって障害となってきた。
第84条の3(在外邦人等の保護措置)及び84条の4(在外邦人等の輸送)については、「警察官職務執行法第7条」が準用され、相手に危害を与えるような武器の使用は、正当防衛と緊急避難の場合を除き認められていない。
まず、この縛りを外すべきであると。
84条の4(在外邦人等の輸送)も、第84条の3(在外邦人等の保護措置)と同じように「任務遂行のために武器使用」を認めるよう改正すべきとも。
2つ目は、命令の発令手続きの変更。
84条の4(在外邦人等の輸送)の手続きを、第84条の3(在外邦人等の保護措置)と同じように、内閣総理大臣の承認を得て、防衛大臣が命令を発令する様に変更すべき。
3つ目は、領域国の同意のない場合でも在外邦人の輸送及び保護措置を行うための法制度の整備。
「いかなる危機に際しても、国民の命を守り抜く」ための法制度の整備。
今回、脱出者が自力で空港まで来るのが原則とし、バスの手配が韓国(一旦国外に脱出した大使館員が戻り、米軍と協力し手配)に比べ、早々に大使館員が脱出した日本は手配が遅れたことにも関連しそう。
今回のアフガン退避作戦において、国家安全保障会議(National Security Council:NSC)と国家安全保障局(National Security Secretariat:NSS)はどのような役割を果たしたのであろうかと横山氏。
ここで活躍してこそのNSC。
是非反省を生かし、世界で最も自国民や現地協力者の批難がお粗末な国となった汚名はぬぐっていただける、自国民を自国で護れる国になっていただきたい。
バスでの空港移動が中止となり、取り残されたままの約500名の方々。
その後の状況情報が、稀です。
日本の国際信用にかかわる問題です。政府は継続して脱出手段を進めていただきたいし、メディアは追跡取材し、政府に促進を促していただきたい。
アフガン救出、これからだ 協力者保護は国益にも直結: 日本経済新聞
# 冒頭の画像は、アフガニスタンに派遣されたのと同じ航空自衛隊の「C-2」輸送機
この花の名前は、スイフヨウ
↓よろしかったら、お願いします。
多くの国々が同様に、自国民や自国民への支援者の脱出に動き、救出に成功していますが、日本は約500人の脱出目標に対し、米軍が撤退した8月末までに、米国の要請に基づき旧政権の政府関係者らアフガン人14人を、また、26日にはC-130輸送機が日本人1人をパキスタンの首都イスラマバードに輸送出来たにとどまりました。
目標に対しても、他国に比べても、悲惨な実績に終わったままです。
何故そうなったのか。元元空将補の横山恭三氏が、反省と改善点を挙げておられます。
韓国に「恥辱」と呼ばれたアフガン退避作戦が示す課題 致命的な決断の遅れ、大使の早すぎる退避、法整備・・・ | JBpress (ジェイビープレス) 2021.9.15(水) 横山 恭三
日本の「アフガン退避作戦」が残した教訓
2021年8月15日、アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは、首都カブールを制圧した。
現地の情勢が急速に流動化する中で、日本政府は、アフガンに残る国際機関で働く日本人や日本大使館の現地スタッフら約500人の国外への退避のため、現地に自衛隊機を派遣することを決定した。
具体的には、8月23日に開催された国家安全保障会議(4大臣会議)における議論を経て、防衛大臣は、自衛隊法第84条の4に基づき、アフガンからの在外邦人等の輸送について命令を発出した。
この命令を受けて、防衛省は、航空自衛隊の「C-130輸送機」2機、「C-2輸送機」1機をはじめとする空自と陸自計約260人で編成される派遣部隊を現地に派遣した。
輸送機は、カブールの空港と拠点とするパキスタンのイスラマバードの空港の間をピストン輸送する計画であった。
ところが、8月23日、日本を出発したC-2輸送機は、24日にパキスタンに到着し、25日にアフガンに入ったが、退避希望者が空港に着いておらず、26日にパキスタンに戻った。
また、24日に日本を出発したC-130輸送機2機は、25日にパキスタンに到着したが、翌日(8月26日)にカブール国際空港のゲート付近で自爆テロが発生して、空港の出入り口であるゲートの周辺には、タリバンによる迫害を恐れるアフガン人らが殺到し、混乱状態となった。
それでも、26日にはC-130輸送機が、アフガンの首都カブールの空港から米国の要請に基づき旧政権の政府関係者らアフガン人14人を、また、26日にはC-130輸送機が日本人1人をパキスタンの首都イスラマバードに輸送した。
いくつかの報道によると、政府は当初、退避希望者の空港までの移動手段について、「各自で確保していただくしか仕方ない」(岸信夫防衛相)としていたが、タリバンが24日にアフガン人の出国を認めない考えを表明したことを受け、方針を転換。
8月26日、十数台のバスをカブール市内の各所でチャーターしたが、輸送と同時に空港付近でテロが起こったため、その任務を中止せざるを得なくなった。
今回帰国した唯一の日本人である共同通信社の安井浩美氏は、ジャーナリスト用にカタールがチャーターしたバスになんとか乗ることができたという。
8月31日、岸防衛相は、米軍のアフガン撤収で、派遣の前提となる現地の安全を確保できなくなったと判断し、アフガン派遣部隊の撤収を命じた。
9月1日以降について、加藤勝信官房長官は30日の記者会見で「米国をはじめとする関係国と連携をしながら、その対応を検討していく」と述べた。
ところで、今回の日本の邦人等退避作戦について、内外のメディアは厳しい評価をしている。
8月28日の韓国紙「中央日報」は、当初は500人の退避を想定しながら実際は10人程度だったとして「日本、カブールの恥辱」との見出しで伝えている。
また、日本のメディアも「日本政府の『退避作戦』は、失敗に終わった。想定外の速さで首都カブールが陥落するなか、自衛隊派遣の決断の遅れが響いた(朝日新聞デジタル2021.9.1)」と報じている。
さて、本稿では、「アフガン退避作戦」が残した教訓として2つのことについて述べてみたい。
一つは、自衛隊派遣の決断の遅れであり、もう一つは、在外邦人等の輸送および保護措置のための自衛隊の海外派遣について今後解決すべき法的課題である。
1.自衛隊派遣決断の遅れ
(1)現地の情勢(各種報道による)
①7月10日、アフガン政府軍とタリバンが戦う南部カンダハルのインド総領事館から、インド外交官や警備員ら約50人が退避した。
地元住民が朝日新聞に提供した動画には、総領事館近くを武装した車列が走り去る様子が映っていた。
インド外務省は翌11日の声明で「カンダハル近郊の激しい交戦のため一時的に帰国させた」と説明。アフガン人職員による領事業務は続けるという。
インドメディアは、外交官ら約50人が空軍機でインドに帰還したと伝えた。(朝日デジタル2021年7月13日)
②8月12日、タリバンは、第2の都市カンダハルや南部のヘルマンド州の州都の制圧を宣言し、ツイッターに動画を投稿した。これで34あるうち15か所の州都を制圧したことになる。
アフガニスタン政府が支配するのは首都カブールなど一部の地域のみとなった。
情勢が緊迫する中、米国防総省のジョン・カービー報道官は、米政府はカブールから大使館員を安全に退去させるため3000人規模の部隊を派遣すると発表した。
また、今月末までの撤退に変更はないと発表した。(FNNプライムオンライン2021.8.13)
③8月13日、タリバンは、南部カンダハルに続き複数の州都を制圧し、これで国内の州都の半数がタリバンの支配下に入った。
首都カブールへの進撃が加速している。ロガール州の州都も陥落し、現在はカブールから100キロ以内の町や地域がタリバンの支配下にある状況だ。(CNN2021.8.14)
④8月14日、タリバンの攻勢によりカブール陥落の恐れが強まっていた。米メディアは政府高官の話として、数日以内に首都カブールへの攻撃が始まるとの観測を伝えている。
米国防総省のカービー報道官は、「タリバンの勢力拡大の速さと政府軍の反撃の欠如を懸念している」と述べた。
米軍は3000人の兵士を派遣し、カブールに残されている大使館員や民間人を対象に1日に数千人規模を国外に脱出させることにしている。(FNNプライムオンライン2021.8.14)
⑤8月15日、タリバンは、首都カブールを制圧。同国のアシュラフ・ガニ大統領は国外(UAE)に亡命し、ガニ政権は事実上崩壊した。
⑥8月16日、ジョー・バイデン米大統領はホワイトハウスで演説し、「撤退に関する自分の決定を断固として堅持する」と述べた。
また、バイデン氏は、次のように述べた。
「事態は予想より早く展開した。ではいったい何が起きたのか? アフガンの政治指導者たちは諦めて国から逃げ出した。アフガン軍は、時には戦おうともしないまま、崩壊した」
「むしろ、ここ1週間の出来事から、アフガンでのアメリカの軍事的関与を今終わらせるのは正しい決定だったと、改めて確認できた」
「アフガン軍が自ら戦おうとしない戦争で、アメリカの兵士が戦って死ぬことはできないし、そうするべきではない」
「アフガン特殊部隊や兵士には、きわめて勇敢で有能な人たちもいる。しかし、アフガンが現時点でタリバンに本格的に抵抗できないなら、現地に米兵が後1年いても、あるいはあと5年や20年いたとしても、大差はあり得ない」(BBCニュース2021.8.17)
⑦8月17日、外務省は「在アフガン日本大使館の一時閉館とイスタンブールにおける臨時事務所の設置について」というプレスリリースを発出した。内容は以下のとおり。
・在アフガン日本国大使館は、現地の治安状況の急速な悪化を受けて、8月15日をもって一時閉館し、トルコのイスタンブールに臨時事務所を設置して当座の業務を継続しています。
アフガンに残っていた大使館の館員12人は、本8月17日、友好国の軍用機(筆者注:英軍輸送機との報道あり)によりカブール国際空港から出国し、アラブ首長国連邦のドバイに退避しました。
・引き続き、イスタンブールの臨時事務所において、邦人保護等の業務に最大限取り組みます。
⑧8月23日、アフガン情勢について、国家安全保障会議(4大臣会合)が開催された。(官邸HP)
⑨8月23日、岸防衛大臣は、午前の記者会見で、「自衛隊法第84条の4に基づき、アフガンからの在外邦人等の輸送について命令を発出した」と述べた。
⑩8月26日夕刻(現地時間)、カブール国際空港のゲート付近で自爆テロ及び銃撃が発生し、報道によれば、米軍関係者13人を含む100人以上が死亡。「イスラム国ホラサン州(IS―K)」が犯行声明を発出した(外務報道官談話2021.8.27)。
(2)誰が部隊の派遣を決断するのか。
自衛隊は、海外で危険に瀕している邦人等を国外に退避させるための措置を講じることができる。その法的根拠は、「在外邦人等保護措置」(自衛隊法第84条の3)と「在外邦人等輸送」(自衛隊法第84条の4)である。(「在外邦人等保護措置」と「在外邦人等輸送」の違い等はついては次項で詳述する。)
「在外邦人等保護措置」の場合は、防衛大臣は、外務大臣から「保護措置(輸送を含む)」依頼があつた場合において、外務大臣と協議し、内閣総理大臣の承認を得て、部隊の派遣を命じることができる。
一方、「在外邦人等輸送」の場合は、防衛大臣は、外務大臣から「輸送」の依頼があつた場合において、外務大臣と協議し、部隊の派遣を命じることができる。
このように、自衛隊法の規定では、「在外邦人等輸送」の場合は内閣総理大臣の承認を必要としていないが、内閣総理大臣の承認または了承なしで自衛隊を海外派遣することは考えられない。
今回の場合も、国家安全保障会議(4大臣会合)が開催されている。防衛大臣も「国家安全保障会議における議論を受けて、命令を発出した」と述べている。
(3)筆者コメント
前項(1)の現地の情勢を見れば、自衛隊部隊の派遣を検討・決断するポイントがいくつかある。
・第1のポイントは7月10日、インド総領事館から外交官や警備員らが退避した時である。
・第2のポイントは、8月15日、タリバンに首都カブールが制圧された時である。この時、日本大使館は一時閉鎖されている。
・第3のポイントは、8月17日、アフガンに残っていた大使館の館員が退避した時である。
日本政府は、いつ邦人輸送を検討したかは不明であるが、筆者は諸外国の大使館の館員が退避を始めた7月10日には邦人輸送を検討し始め、遅くても日本大使館の館員が退避した8月17日に自衛隊派遣の決断をしていれば、8月26日の自爆テロの混乱に巻き込まれることなく、無事に邦人等を日本に輸送できたと考える。
特に、今回は「在外邦人等保護措置」(自衛隊法第84条の3)でなく、派遣要件の少ない「在外邦人等輸送」(自衛隊法第84条の4)を根拠とした派遣であることを考慮すれば、8月15日に自衛隊の派遣の決断が可能であったと考えられる。
実は、上記の3つのポイントのほかにもう一つ重要なポイントがある。
それは、インテリジェンス(諜報)に関連することであるので公表されていないが、我が国が、「イスラム国ホラサン州(IS―K)」の(自爆)テロに関する兆候情報を入手したのが何時かである。
入手していなかったのかもしれないがそれもそれで問題である。もう少しで多数の退避者が犠牲になるところだった。
我が国は、厳しさを増す国際テロ情勢を踏まえ、2015年12月に官邸の直轄部隊として「国際テロ情報収集ユニット」を設置した。
同ユニットは南アジア、中東、北・西アフリカ、欧州の5地域を中心に、国際テロ情報を収集するため、拠点となる公館に国際テロ情勢、現地情勢や語学に精通する適任者を省庁横断的に配置し、
①邦人関連テロ発生時に備えた各国の治安・情報機関との迅速な協力ラインの確立
②我が国としての直接のファーストハンド(直接)の情報収集に取り組んできた。
将来、今回の退避作戦の検証作業が行われるときには、「国際テロ情報収集ユニット」は、テロに関する兆候情報を入手していたのか、その情報は関連省庁で共有されたのか、などを検証すべきである。
次に、筆者が気になる2つの報道について付言する。
一つは、カブールが陥落した8月15日、岡田隆在アフガン特命全権大使はアフガン国内にはいなかった(朝日新聞デジタル2021.8.28)ことである。
大使に個人的にどのような理由があるか分からないが、現地で陣頭指揮し、かつ現地情報を東京に報告する責任者がいなかったことは邦人退避作戦にとつて大きな痛手となったと思われる。
もう一つは、茂木敏充外務大臣が、8月15日~24日の間、中東諸国訪問で東京を不在にしていたことである。
茂木外相は15日午前、当初の計画通りに10日間の中東歴訪へと出発した。首都カブールではその日、タリバンが大統領府を制圧した。
アフガン第2の都市カンダハルが制圧された8月13日の時点で、カブール陥落が間近いことが予想されていた。
これらのことを理由に中東訪問を中止することは外交上非礼にならないであろう。
茂木外相は8月31日の記者会見で、アフガンからの邦人退避などをめぐり、自衛隊機派遣が遅れたとの批判に対し、「決して遅かったとは思わない。十分退避に間に合うタイミングで行き、輸送手段も確保した」と反論した(出典:時事ドットコムニュース2021.8.31)。
2.在外邦人等の輸送および保護措置のための自衛隊の海外派遣に関する法的課題
(1)今回の派遣の法的根拠
今回、自衛隊部隊の任務は自衛隊法84条の4に基づく「輸送」で、空港内での邦人らの誘導と空自機による退避が中心であった。
同法は輸送を「安全に実施することができると認めるとき」に限定しており、米軍が安全をコントロールできる空港内でのみ活動し、自衛官が市中に退避希望者を迎えに行き、警護して連れてくることはできなかった。
2016年施行の安全保障関連法で、新たに在外邦人らの救出や警護を認める「保護措置」が可能となり、より強い武器使用権限も与えられた。
しかし、派遣先となる受け入れ国の同意や現地の治安が維持されていることが要件であることから、タリバンが支配するアフガンでの適用は見送られた。
派遣の要件をめぐっては、8月24日の自民党国防部会などの合同会議で「安定していないからこそ(保護の)ニーズがある」として、緩和を求める声が上がった。
防衛省内からも「今回の件をきっかけに議論を始めてほしい」と法改正に期待する声も出ている(時事ドットコムニュース2021.8.29)。
また、自民党総裁選に出馬する岸田文雄・前政調会長は9月5日のフジテレビの番組で、アフガンからの国外退避を望むアフガン人協力者が取り残された問題を受け、自衛隊機の派遣要件を緩和する自衛隊法改正を検討する考えを示した。
岸田氏は「危険な状況の人を救いに行くのに現地の安全が確認できないと行けないのは、国民感覚からしてもどうなのか。ぜひ法改正を考えてみたい」と述べた(読売新聞オンライン2021.9.5)。
(2)第84条の3(在外邦人等の保護措置)と84条の4(在外邦人等の輸送)との要件等の違い
ア. 実施要件
(ア)第84条の3(在外邦人等の保護措置)
①保護措置を行う場所において、当該外国の権限ある当局が現に公共の安全と秩序の維持に当たっており、かつ、戦闘行為が行われることがないと認められること。
②自衛隊が当該保護措置(武器の使用を含む。)を行うことについて、当該外国などの同意があること。
③予想される危険に対応して当該保護措置をできる限り円滑かつ安全に行うための部隊等と当該外国の権限ある当局との間の連携及び協力が確保されると見込まれること。
(イ)第84条の4(在外邦人等の輸送)
①派遣先国の空港・港、航行経路での安全が確保されていること
②当該国の着陸や領空通過等の許可(同意)を得ていること
イ.武器使用権限
(ア)第84条の3(在外邦人等の保護措置)
自衛官は、保護措置を行う職務の実施に際し、自己若しくは当該保護措置の対象である邦人等の生命若しくは身体の防護又はその職務を妨害する行為の排除のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合に、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器の使用が可能である。
ただし、刑法第三十六条又は第三十七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。(出典:第九十四条の五:在外邦人等の保護措置の際の権限)
いわゆる「任務遂行のための武器使用」を認めているが、ただし、人への危害が許容されるのは、正当防衛・緊急避難に該当する場合のみとされている。
(イ)84条の4(在外邦人等の輸送)
在外邦人などの輸送に従事する自衛官は、自己、若しくは自己と共にその輸送の職務に従事する隊員又はその保護の下に入った輸送の対象である邦人若しくは外国人の生命・身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合、その事態に応じて合理的に必要と判断される限度での武器の使用が可能である。
ただし、正当防衛又は緊急避難の要件に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。(第九十四条の六:在外邦人等の輸送の際の権限)
いわゆる「自己防護のための武器使用」を認めているが、「任務遂行のための武器使用」は認めていない。
(3)今後解決すべき法的課題
初めに、非戦闘員退避活動(Non-combatant Evacuation Operations:NEO)について簡単に述べる。
欧米を中心とする国際社会は、20世紀初頭まで、軍事力によって在外自国民を保護する行動は、主権国家に与えられた制約されることのない自衛権の行使として広く考えられていた。
しかし、国連憲章が制定されてからは、その適用方法をめぐり、自国民保護を名目とする他国への軍事介入が、大国の権益拡大として捉えられ問題視されてきた。
冷戦崩壊後は、破綻国家での内乱やテロに際して当該国政府の明示的同意の有無にかかわらず、軍隊を派遣して在外自国民を保護する事案が増大した。
そして、「非戦闘員退避活動(NEO)」という概念が広く流通するようなった。
NEO は、災害救援や人道支援と並ぶ平時における戦争以外の軍事作戦(Military Operations other than War:MOOTW)であるとされる。
軍事作戦であるNEOが、国際社会に許容されてきた最大の理由は、他国への軍事介入に対する歯止めがかかっているからであろう。
例えば、米国は、軍事力の迅速な投入と目標の一時的占拠、任務完遂後の計画的撤退を強調している。
さて、我が国の在外邦人の輸送・保護措置に関する法的課題は3つある。
1つ目は、武器使用制限の緩和である。
自衛隊の「武力の行使」や「武器の使用」には、憲法上の判断から厳しい制約が設けられている。
ところが、実際に自衛隊が国連PKOへ参加してみると、自衛隊の場合は「武器使用の制限」が他国以上に厳しく、この「武器使用の制限」が部隊の任務遂行や隊員等の安全確保にとって障害となってきた。
そして、数度の海外派遣を経て、逐次、武器使用の制限緩和に関する自衛隊法の改正が行われてきた。
(詳細は拙稿『中国海警局の武器使用:日本の問題点と必要な法整備-ガラパゴス化した日本の武器使用基準では中国の侵略を許す』2021.2.19』を参照されたい)
さて、第84条の3(在外邦人等の保護措置)及び84条の4(在外邦人等の輸送)については、「警察官職務執行法第7条」が準用され、相手に危害を与えるような武器の使用は、正当防衛と緊急避難の場合を除き認められていない。
まず、この縛りを外すべきである。または、人に危害を与えたとしても違法性が阻却されるよう法律を改正すべきである。
その上で、84条の4(在外邦人等の輸送)も、第84条の3(在外邦人等の保護措置)と同じように「任務遂行のために武器使用」を認めるよう改正すべきである。
2つ目は、命令の発令手続きの変更である。
84条の4(在外邦人等の輸送)の手続きを、第84条の3(在外邦人等の保護措置)と同じように、内閣総理大臣の承認を得て、防衛大臣が命令を発令する様に変更すべきである。
危険があるから自衛隊機を派遣しているのである。危険がなければ民間機をチャーターすればいいのである。
実際、今回も国家安全保障会議を開催して、内閣総理大臣の暗黙の了解を得ている。
この手続きの変更は、2007年1月に在外邦人等の輸送が自衛隊法 の「本来任務」に位置付けられた時点で行われるべきであったと考える。ちなみに、自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣である(自衛隊法第7条)。
3つ目は、領域国の同意のない場合でも在外邦人の輸送及び保護措置を行うための法制度の整備である。
つまり、「いかなる危機に際しても、国民の命を守り抜く」ための法制度の整備である。
一般に、事前の合意のない外国軍隊の派遣は、外形的には武力侵攻と変わるものではなく、領域主権に対する重大な侵害と考えられる。
特に、1927年の山東出兵や 1932年の上海事変のように、居留民保護を名目に派兵を行った歴史を持つ日本としては、この点について慎重な対応が求められる。
しかし、たとえ同意が取得できない場合であっても、国民の命を守るために、輸送・保護措置を行う必要に迫られた場合、同意に代わる法的根拠をどのように確保したらよいのか。
日本国憲法が許容する在外邦人の輸送・保護措置はどこまでなのか。これらは、朝鮮半島有事を考えた場合、早急に解決すべき喫緊の課題である。
おわりに
今回のアフガン退避作戦において、国家安全保障会議(National Security Council:NSC)と国家安全保障局(National Security Secretariat:NSS)はどのような役割を果たしたのであろうか。
今回、この点に関してメディアは注目していなかった。
筆者は、国家安全保障会議に、日本の外交・安全保障政策の司令塔になってほしいと思っている。
国家安全保障会議は、2013年に安倍晋三政権が発足させた。首相、官房長官、外相、防衛相による「4大臣会合」を中核として、各省庁からの情報を共有し、外交・安保の方向性を決める。
また、国家安全保障会議を恒常的に支えるための事務局として、内閣官房に国家安全保障局が設置されている。
局長は外務・防衛両省の官僚や自衛官らで構成する事務局を率いて、省庁間の縦割りを排し、各国のカウンターパートと情報交換をしながら、首相に助言をする重責を担っている。
今回のアフガンへの自衛隊部隊の派遣について局長は首相にどのような助言をしたのであろうか。
国家安全保障会議は、米国のNSCをモデルとしていることから、日本版NSCと呼ばれている。だが、その実態は本家のNSCは大きくかけ離れている。
例えば、2011年5月2日、米軍によるウサマ・ビンラディンの急襲作戦を米国のホワイトハウスのシチュエーションルームでバラク・オバマ大統領のほか、ジョー・バイデン副大統領、ロバート・ゲーツ国防長官、ヒラリー・クリントン国務長官、マイケル・マレン統合参謀本部議長らのNSCメンバーが同時進行で見守る様子を映した写真が公開された。
この写真から、NSCメンバーが固唾をのみ、緊張して作戦の推移を見守っている様子がうかがえる。
翻って、我が国で今回の邦人等退避作戦の推移を固唾をのみ、緊張して作戦の推移を見守るまでのことがなくても、常時関心を持っていたNSCメンバーはいたのであろうか。
今回のアフガン退避作戦は、一つ間違えば、退避者を乗せたバスが自爆テロに巻き込まれ、多数の退避者が犠牲になるところだった。
このような緊要な時期に現地の大使や外務大臣が不在にするなど、筆者には政府の緊張感が感じられなかった。
これからは、人的被害が生じることを覚悟して、自衛隊を海外に派遣(国連PKOを含む)することが増えるであろう。
首相、官房長官、外相、防衛相の4大臣の責任は重い。
日本の「アフガン退避作戦」が残した教訓
2021年8月15日、アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは、首都カブールを制圧した。
現地の情勢が急速に流動化する中で、日本政府は、アフガンに残る国際機関で働く日本人や日本大使館の現地スタッフら約500人の国外への退避のため、現地に自衛隊機を派遣することを決定した。
具体的には、8月23日に開催された国家安全保障会議(4大臣会議)における議論を経て、防衛大臣は、自衛隊法第84条の4に基づき、アフガンからの在外邦人等の輸送について命令を発出した。
この命令を受けて、防衛省は、航空自衛隊の「C-130輸送機」2機、「C-2輸送機」1機をはじめとする空自と陸自計約260人で編成される派遣部隊を現地に派遣した。
輸送機は、カブールの空港と拠点とするパキスタンのイスラマバードの空港の間をピストン輸送する計画であった。
ところが、8月23日、日本を出発したC-2輸送機は、24日にパキスタンに到着し、25日にアフガンに入ったが、退避希望者が空港に着いておらず、26日にパキスタンに戻った。
また、24日に日本を出発したC-130輸送機2機は、25日にパキスタンに到着したが、翌日(8月26日)にカブール国際空港のゲート付近で自爆テロが発生して、空港の出入り口であるゲートの周辺には、タリバンによる迫害を恐れるアフガン人らが殺到し、混乱状態となった。
それでも、26日にはC-130輸送機が、アフガンの首都カブールの空港から米国の要請に基づき旧政権の政府関係者らアフガン人14人を、また、26日にはC-130輸送機が日本人1人をパキスタンの首都イスラマバードに輸送した。
いくつかの報道によると、政府は当初、退避希望者の空港までの移動手段について、「各自で確保していただくしか仕方ない」(岸信夫防衛相)としていたが、タリバンが24日にアフガン人の出国を認めない考えを表明したことを受け、方針を転換。
8月26日、十数台のバスをカブール市内の各所でチャーターしたが、輸送と同時に空港付近でテロが起こったため、その任務を中止せざるを得なくなった。
今回帰国した唯一の日本人である共同通信社の安井浩美氏は、ジャーナリスト用にカタールがチャーターしたバスになんとか乗ることができたという。
8月31日、岸防衛相は、米軍のアフガン撤収で、派遣の前提となる現地の安全を確保できなくなったと判断し、アフガン派遣部隊の撤収を命じた。
9月1日以降について、加藤勝信官房長官は30日の記者会見で「米国をはじめとする関係国と連携をしながら、その対応を検討していく」と述べた。
ところで、今回の日本の邦人等退避作戦について、内外のメディアは厳しい評価をしている。
8月28日の韓国紙「中央日報」は、当初は500人の退避を想定しながら実際は10人程度だったとして「日本、カブールの恥辱」との見出しで伝えている。
また、日本のメディアも「日本政府の『退避作戦』は、失敗に終わった。想定外の速さで首都カブールが陥落するなか、自衛隊派遣の決断の遅れが響いた(朝日新聞デジタル2021.9.1)」と報じている。
さて、本稿では、「アフガン退避作戦」が残した教訓として2つのことについて述べてみたい。
一つは、自衛隊派遣の決断の遅れであり、もう一つは、在外邦人等の輸送および保護措置のための自衛隊の海外派遣について今後解決すべき法的課題である。
1.自衛隊派遣決断の遅れ
(1)現地の情勢(各種報道による)
①7月10日、アフガン政府軍とタリバンが戦う南部カンダハルのインド総領事館から、インド外交官や警備員ら約50人が退避した。
地元住民が朝日新聞に提供した動画には、総領事館近くを武装した車列が走り去る様子が映っていた。
インド外務省は翌11日の声明で「カンダハル近郊の激しい交戦のため一時的に帰国させた」と説明。アフガン人職員による領事業務は続けるという。
インドメディアは、外交官ら約50人が空軍機でインドに帰還したと伝えた。(朝日デジタル2021年7月13日)
②8月12日、タリバンは、第2の都市カンダハルや南部のヘルマンド州の州都の制圧を宣言し、ツイッターに動画を投稿した。これで34あるうち15か所の州都を制圧したことになる。
アフガニスタン政府が支配するのは首都カブールなど一部の地域のみとなった。
情勢が緊迫する中、米国防総省のジョン・カービー報道官は、米政府はカブールから大使館員を安全に退去させるため3000人規模の部隊を派遣すると発表した。
また、今月末までの撤退に変更はないと発表した。(FNNプライムオンライン2021.8.13)
③8月13日、タリバンは、南部カンダハルに続き複数の州都を制圧し、これで国内の州都の半数がタリバンの支配下に入った。
首都カブールへの進撃が加速している。ロガール州の州都も陥落し、現在はカブールから100キロ以内の町や地域がタリバンの支配下にある状況だ。(CNN2021.8.14)
④8月14日、タリバンの攻勢によりカブール陥落の恐れが強まっていた。米メディアは政府高官の話として、数日以内に首都カブールへの攻撃が始まるとの観測を伝えている。
米国防総省のカービー報道官は、「タリバンの勢力拡大の速さと政府軍の反撃の欠如を懸念している」と述べた。
米軍は3000人の兵士を派遣し、カブールに残されている大使館員や民間人を対象に1日に数千人規模を国外に脱出させることにしている。(FNNプライムオンライン2021.8.14)
⑤8月15日、タリバンは、首都カブールを制圧。同国のアシュラフ・ガニ大統領は国外(UAE)に亡命し、ガニ政権は事実上崩壊した。
⑥8月16日、ジョー・バイデン米大統領はホワイトハウスで演説し、「撤退に関する自分の決定を断固として堅持する」と述べた。
また、バイデン氏は、次のように述べた。
「事態は予想より早く展開した。ではいったい何が起きたのか? アフガンの政治指導者たちは諦めて国から逃げ出した。アフガン軍は、時には戦おうともしないまま、崩壊した」
「むしろ、ここ1週間の出来事から、アフガンでのアメリカの軍事的関与を今終わらせるのは正しい決定だったと、改めて確認できた」
「アフガン軍が自ら戦おうとしない戦争で、アメリカの兵士が戦って死ぬことはできないし、そうするべきではない」
「アフガン特殊部隊や兵士には、きわめて勇敢で有能な人たちもいる。しかし、アフガンが現時点でタリバンに本格的に抵抗できないなら、現地に米兵が後1年いても、あるいはあと5年や20年いたとしても、大差はあり得ない」(BBCニュース2021.8.17)
⑦8月17日、外務省は「在アフガン日本大使館の一時閉館とイスタンブールにおける臨時事務所の設置について」というプレスリリースを発出した。内容は以下のとおり。
・在アフガン日本国大使館は、現地の治安状況の急速な悪化を受けて、8月15日をもって一時閉館し、トルコのイスタンブールに臨時事務所を設置して当座の業務を継続しています。
アフガンに残っていた大使館の館員12人は、本8月17日、友好国の軍用機(筆者注:英軍輸送機との報道あり)によりカブール国際空港から出国し、アラブ首長国連邦のドバイに退避しました。
・引き続き、イスタンブールの臨時事務所において、邦人保護等の業務に最大限取り組みます。
⑧8月23日、アフガン情勢について、国家安全保障会議(4大臣会合)が開催された。(官邸HP)
⑨8月23日、岸防衛大臣は、午前の記者会見で、「自衛隊法第84条の4に基づき、アフガンからの在外邦人等の輸送について命令を発出した」と述べた。
⑩8月26日夕刻(現地時間)、カブール国際空港のゲート付近で自爆テロ及び銃撃が発生し、報道によれば、米軍関係者13人を含む100人以上が死亡。「イスラム国ホラサン州(IS―K)」が犯行声明を発出した(外務報道官談話2021.8.27)。
(2)誰が部隊の派遣を決断するのか。
自衛隊は、海外で危険に瀕している邦人等を国外に退避させるための措置を講じることができる。その法的根拠は、「在外邦人等保護措置」(自衛隊法第84条の3)と「在外邦人等輸送」(自衛隊法第84条の4)である。(「在外邦人等保護措置」と「在外邦人等輸送」の違い等はついては次項で詳述する。)
「在外邦人等保護措置」の場合は、防衛大臣は、外務大臣から「保護措置(輸送を含む)」依頼があつた場合において、外務大臣と協議し、内閣総理大臣の承認を得て、部隊の派遣を命じることができる。
一方、「在外邦人等輸送」の場合は、防衛大臣は、外務大臣から「輸送」の依頼があつた場合において、外務大臣と協議し、部隊の派遣を命じることができる。
このように、自衛隊法の規定では、「在外邦人等輸送」の場合は内閣総理大臣の承認を必要としていないが、内閣総理大臣の承認または了承なしで自衛隊を海外派遣することは考えられない。
今回の場合も、国家安全保障会議(4大臣会合)が開催されている。防衛大臣も「国家安全保障会議における議論を受けて、命令を発出した」と述べている。
(3)筆者コメント
前項(1)の現地の情勢を見れば、自衛隊部隊の派遣を検討・決断するポイントがいくつかある。
・第1のポイントは7月10日、インド総領事館から外交官や警備員らが退避した時である。
・第2のポイントは、8月15日、タリバンに首都カブールが制圧された時である。この時、日本大使館は一時閉鎖されている。
・第3のポイントは、8月17日、アフガンに残っていた大使館の館員が退避した時である。
日本政府は、いつ邦人輸送を検討したかは不明であるが、筆者は諸外国の大使館の館員が退避を始めた7月10日には邦人輸送を検討し始め、遅くても日本大使館の館員が退避した8月17日に自衛隊派遣の決断をしていれば、8月26日の自爆テロの混乱に巻き込まれることなく、無事に邦人等を日本に輸送できたと考える。
特に、今回は「在外邦人等保護措置」(自衛隊法第84条の3)でなく、派遣要件の少ない「在外邦人等輸送」(自衛隊法第84条の4)を根拠とした派遣であることを考慮すれば、8月15日に自衛隊の派遣の決断が可能であったと考えられる。
実は、上記の3つのポイントのほかにもう一つ重要なポイントがある。
それは、インテリジェンス(諜報)に関連することであるので公表されていないが、我が国が、「イスラム国ホラサン州(IS―K)」の(自爆)テロに関する兆候情報を入手したのが何時かである。
入手していなかったのかもしれないがそれもそれで問題である。もう少しで多数の退避者が犠牲になるところだった。
我が国は、厳しさを増す国際テロ情勢を踏まえ、2015年12月に官邸の直轄部隊として「国際テロ情報収集ユニット」を設置した。
同ユニットは南アジア、中東、北・西アフリカ、欧州の5地域を中心に、国際テロ情報を収集するため、拠点となる公館に国際テロ情勢、現地情勢や語学に精通する適任者を省庁横断的に配置し、
①邦人関連テロ発生時に備えた各国の治安・情報機関との迅速な協力ラインの確立
②我が国としての直接のファーストハンド(直接)の情報収集に取り組んできた。
将来、今回の退避作戦の検証作業が行われるときには、「国際テロ情報収集ユニット」は、テロに関する兆候情報を入手していたのか、その情報は関連省庁で共有されたのか、などを検証すべきである。
次に、筆者が気になる2つの報道について付言する。
一つは、カブールが陥落した8月15日、岡田隆在アフガン特命全権大使はアフガン国内にはいなかった(朝日新聞デジタル2021.8.28)ことである。
大使に個人的にどのような理由があるか分からないが、現地で陣頭指揮し、かつ現地情報を東京に報告する責任者がいなかったことは邦人退避作戦にとつて大きな痛手となったと思われる。
もう一つは、茂木敏充外務大臣が、8月15日~24日の間、中東諸国訪問で東京を不在にしていたことである。
茂木外相は15日午前、当初の計画通りに10日間の中東歴訪へと出発した。首都カブールではその日、タリバンが大統領府を制圧した。
アフガン第2の都市カンダハルが制圧された8月13日の時点で、カブール陥落が間近いことが予想されていた。
これらのことを理由に中東訪問を中止することは外交上非礼にならないであろう。
茂木外相は8月31日の記者会見で、アフガンからの邦人退避などをめぐり、自衛隊機派遣が遅れたとの批判に対し、「決して遅かったとは思わない。十分退避に間に合うタイミングで行き、輸送手段も確保した」と反論した(出典:時事ドットコムニュース2021.8.31)。
2.在外邦人等の輸送および保護措置のための自衛隊の海外派遣に関する法的課題
(1)今回の派遣の法的根拠
今回、自衛隊部隊の任務は自衛隊法84条の4に基づく「輸送」で、空港内での邦人らの誘導と空自機による退避が中心であった。
同法は輸送を「安全に実施することができると認めるとき」に限定しており、米軍が安全をコントロールできる空港内でのみ活動し、自衛官が市中に退避希望者を迎えに行き、警護して連れてくることはできなかった。
2016年施行の安全保障関連法で、新たに在外邦人らの救出や警護を認める「保護措置」が可能となり、より強い武器使用権限も与えられた。
しかし、派遣先となる受け入れ国の同意や現地の治安が維持されていることが要件であることから、タリバンが支配するアフガンでの適用は見送られた。
派遣の要件をめぐっては、8月24日の自民党国防部会などの合同会議で「安定していないからこそ(保護の)ニーズがある」として、緩和を求める声が上がった。
防衛省内からも「今回の件をきっかけに議論を始めてほしい」と法改正に期待する声も出ている(時事ドットコムニュース2021.8.29)。
また、自民党総裁選に出馬する岸田文雄・前政調会長は9月5日のフジテレビの番組で、アフガンからの国外退避を望むアフガン人協力者が取り残された問題を受け、自衛隊機の派遣要件を緩和する自衛隊法改正を検討する考えを示した。
岸田氏は「危険な状況の人を救いに行くのに現地の安全が確認できないと行けないのは、国民感覚からしてもどうなのか。ぜひ法改正を考えてみたい」と述べた(読売新聞オンライン2021.9.5)。
(2)第84条の3(在外邦人等の保護措置)と84条の4(在外邦人等の輸送)との要件等の違い
ア. 実施要件
(ア)第84条の3(在外邦人等の保護措置)
①保護措置を行う場所において、当該外国の権限ある当局が現に公共の安全と秩序の維持に当たっており、かつ、戦闘行為が行われることがないと認められること。
②自衛隊が当該保護措置(武器の使用を含む。)を行うことについて、当該外国などの同意があること。
③予想される危険に対応して当該保護措置をできる限り円滑かつ安全に行うための部隊等と当該外国の権限ある当局との間の連携及び協力が確保されると見込まれること。
(イ)第84条の4(在外邦人等の輸送)
①派遣先国の空港・港、航行経路での安全が確保されていること
②当該国の着陸や領空通過等の許可(同意)を得ていること
イ.武器使用権限
(ア)第84条の3(在外邦人等の保護措置)
自衛官は、保護措置を行う職務の実施に際し、自己若しくは当該保護措置の対象である邦人等の生命若しくは身体の防護又はその職務を妨害する行為の排除のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合に、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器の使用が可能である。
ただし、刑法第三十六条又は第三十七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。(出典:第九十四条の五:在外邦人等の保護措置の際の権限)
いわゆる「任務遂行のための武器使用」を認めているが、ただし、人への危害が許容されるのは、正当防衛・緊急避難に該当する場合のみとされている。
(イ)84条の4(在外邦人等の輸送)
在外邦人などの輸送に従事する自衛官は、自己、若しくは自己と共にその輸送の職務に従事する隊員又はその保護の下に入った輸送の対象である邦人若しくは外国人の生命・身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合、その事態に応じて合理的に必要と判断される限度での武器の使用が可能である。
ただし、正当防衛又は緊急避難の要件に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。(第九十四条の六:在外邦人等の輸送の際の権限)
いわゆる「自己防護のための武器使用」を認めているが、「任務遂行のための武器使用」は認めていない。
(3)今後解決すべき法的課題
初めに、非戦闘員退避活動(Non-combatant Evacuation Operations:NEO)について簡単に述べる。
欧米を中心とする国際社会は、20世紀初頭まで、軍事力によって在外自国民を保護する行動は、主権国家に与えられた制約されることのない自衛権の行使として広く考えられていた。
しかし、国連憲章が制定されてからは、その適用方法をめぐり、自国民保護を名目とする他国への軍事介入が、大国の権益拡大として捉えられ問題視されてきた。
冷戦崩壊後は、破綻国家での内乱やテロに際して当該国政府の明示的同意の有無にかかわらず、軍隊を派遣して在外自国民を保護する事案が増大した。
そして、「非戦闘員退避活動(NEO)」という概念が広く流通するようなった。
NEO は、災害救援や人道支援と並ぶ平時における戦争以外の軍事作戦(Military Operations other than War:MOOTW)であるとされる。
軍事作戦であるNEOが、国際社会に許容されてきた最大の理由は、他国への軍事介入に対する歯止めがかかっているからであろう。
例えば、米国は、軍事力の迅速な投入と目標の一時的占拠、任務完遂後の計画的撤退を強調している。
さて、我が国の在外邦人の輸送・保護措置に関する法的課題は3つある。
1つ目は、武器使用制限の緩和である。
自衛隊の「武力の行使」や「武器の使用」には、憲法上の判断から厳しい制約が設けられている。
ところが、実際に自衛隊が国連PKOへ参加してみると、自衛隊の場合は「武器使用の制限」が他国以上に厳しく、この「武器使用の制限」が部隊の任務遂行や隊員等の安全確保にとって障害となってきた。
そして、数度の海外派遣を経て、逐次、武器使用の制限緩和に関する自衛隊法の改正が行われてきた。
(詳細は拙稿『中国海警局の武器使用:日本の問題点と必要な法整備-ガラパゴス化した日本の武器使用基準では中国の侵略を許す』2021.2.19』を参照されたい)
さて、第84条の3(在外邦人等の保護措置)及び84条の4(在外邦人等の輸送)については、「警察官職務執行法第7条」が準用され、相手に危害を与えるような武器の使用は、正当防衛と緊急避難の場合を除き認められていない。
まず、この縛りを外すべきである。または、人に危害を与えたとしても違法性が阻却されるよう法律を改正すべきである。
その上で、84条の4(在外邦人等の輸送)も、第84条の3(在外邦人等の保護措置)と同じように「任務遂行のために武器使用」を認めるよう改正すべきである。
2つ目は、命令の発令手続きの変更である。
84条の4(在外邦人等の輸送)の手続きを、第84条の3(在外邦人等の保護措置)と同じように、内閣総理大臣の承認を得て、防衛大臣が命令を発令する様に変更すべきである。
危険があるから自衛隊機を派遣しているのである。危険がなければ民間機をチャーターすればいいのである。
実際、今回も国家安全保障会議を開催して、内閣総理大臣の暗黙の了解を得ている。
この手続きの変更は、2007年1月に在外邦人等の輸送が自衛隊法 の「本来任務」に位置付けられた時点で行われるべきであったと考える。ちなみに、自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣である(自衛隊法第7条)。
3つ目は、領域国の同意のない場合でも在外邦人の輸送及び保護措置を行うための法制度の整備である。
つまり、「いかなる危機に際しても、国民の命を守り抜く」ための法制度の整備である。
一般に、事前の合意のない外国軍隊の派遣は、外形的には武力侵攻と変わるものではなく、領域主権に対する重大な侵害と考えられる。
特に、1927年の山東出兵や 1932年の上海事変のように、居留民保護を名目に派兵を行った歴史を持つ日本としては、この点について慎重な対応が求められる。
しかし、たとえ同意が取得できない場合であっても、国民の命を守るために、輸送・保護措置を行う必要に迫られた場合、同意に代わる法的根拠をどのように確保したらよいのか。
日本国憲法が許容する在外邦人の輸送・保護措置はどこまでなのか。これらは、朝鮮半島有事を考えた場合、早急に解決すべき喫緊の課題である。
おわりに
今回のアフガン退避作戦において、国家安全保障会議(National Security Council:NSC)と国家安全保障局(National Security Secretariat:NSS)はどのような役割を果たしたのであろうか。
今回、この点に関してメディアは注目していなかった。
筆者は、国家安全保障会議に、日本の外交・安全保障政策の司令塔になってほしいと思っている。
国家安全保障会議は、2013年に安倍晋三政権が発足させた。首相、官房長官、外相、防衛相による「4大臣会合」を中核として、各省庁からの情報を共有し、外交・安保の方向性を決める。
また、国家安全保障会議を恒常的に支えるための事務局として、内閣官房に国家安全保障局が設置されている。
局長は外務・防衛両省の官僚や自衛官らで構成する事務局を率いて、省庁間の縦割りを排し、各国のカウンターパートと情報交換をしながら、首相に助言をする重責を担っている。
今回のアフガンへの自衛隊部隊の派遣について局長は首相にどのような助言をしたのであろうか。
国家安全保障会議は、米国のNSCをモデルとしていることから、日本版NSCと呼ばれている。だが、その実態は本家のNSCは大きくかけ離れている。
例えば、2011年5月2日、米軍によるウサマ・ビンラディンの急襲作戦を米国のホワイトハウスのシチュエーションルームでバラク・オバマ大統領のほか、ジョー・バイデン副大統領、ロバート・ゲーツ国防長官、ヒラリー・クリントン国務長官、マイケル・マレン統合参謀本部議長らのNSCメンバーが同時進行で見守る様子を映した写真が公開された。
この写真から、NSCメンバーが固唾をのみ、緊張して作戦の推移を見守っている様子がうかがえる。
翻って、我が国で今回の邦人等退避作戦の推移を固唾をのみ、緊張して作戦の推移を見守るまでのことがなくても、常時関心を持っていたNSCメンバーはいたのであろうか。
今回のアフガン退避作戦は、一つ間違えば、退避者を乗せたバスが自爆テロに巻き込まれ、多数の退避者が犠牲になるところだった。
このような緊要な時期に現地の大使や外務大臣が不在にするなど、筆者には政府の緊張感が感じられなかった。
これからは、人的被害が生じることを覚悟して、自衛隊を海外に派遣(国連PKOを含む)することが増えるであろう。
首相、官房長官、外相、防衛相の4大臣の責任は重い。
8月15日、アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは、首都カブールを制圧。
これは、今日、バイデン大統領の失政(作戦準備不足)が国内外から批判されている通り、想定外の速さでの実現。
それでも、バイデン大統領は、予定通りに米軍のアフガン撤退を強行。
各国は、自国民や自国へ協力してくれたアフガン人の脱出希望者の国外退去を概ね完了させましたが、日本は大幅に目標未達となっていることは、諸兄がご承知の通りです。
海外で活躍する日本人が、なにかで救出が必要になった時、母国が救出に向かうのは、当然のはなしで、国家の義務。
今回の件で、日本が世界の中で劣る国だと明らかになりましたが、横山氏の総括のまず 1点目は、自衛隊派遣決断の遅れ。
8月17日、外務省は「在アフガン日本大使館の一時閉館とイスタンブールにおける臨時事務所の設置について」というプレスリリースを発出。
アフガン政府軍とタリバンが戦う南部カンダハルのインド総領事館から、インド外交官や警備員ら約50人が退避したのは、7月10日。
アフガンに残っていた大使館の館員12人は、本8月17日、友好国の軍用機(筆者注:英軍輸送機との報道あり)によりカブール国際空港から出国し、アラブ首長国連邦のドバイに退避と発表。
国家安全保障会議(NSC)開催は、8月23日。
岸防衛大臣は、午前の記者会見で、「自衛隊法第84条の4に基づき、アフガンからの在外邦人等の輸送について命令を発出。
日本を出発したC-2輸送機は、24日にパキスタンに到着し、25日にアフガンに入ったが、退避希望者が空港に着いておらず、26日にパキスタンに戻った。
24日に日本を出発したC-130輸送機2機は、25日にパキスタンに到着。しかし、26日に自爆テロが発生。バスで空港に向かおうとしていた約500人は、移動中止。米国の要請に基づき旧政権の政府関係者らアフガン人14人、日本人1人をパキスタンの首都イスラマバードに輸送。
8月31日、岸防衛相は、米軍のアフガン撤収で、派遣の前提となる現地の安全を確保できなくなったと判断し、アフガン派遣部隊の撤収を命じたのでした。
ほぼ移動を完了した世界の国々に比べて大きく見劣りする、失敗の結果の日本。
横山氏が、教訓としてあげておられるのは 2点。
一つは、自衛隊派遣の決断の遅れであり、もう一つは、在外邦人等の輸送および保護措置のための自衛隊の海外派遣について今後解決すべき法的課題。
現地の情勢を見れば、自衛隊部隊の派遣を検討・決断するポイントがいくつかあると横山氏。
・第1のポイントは7月10日、インド総領事館から外交官や警備員らが退避した時。
・第2のポイントは、8月15日、タリバンに首都カブールが制圧された時である。この時、日本大使館は一時閉鎖されている。
・第3のポイントは、8月17日、アフガンに残っていた大使館の館員が退避した時。
今回は、派遣要件の少ない「在外邦人等輸送」(自衛隊法第84条の4)を根拠とした派遣であることを考慮すれば、8月15日に自衛隊の派遣の決断が可能であったと考えられると。
上記の3つのポイントのほかにもう一つ重要なポイントが、インテリジェンス(諜報)に関連することであるので公表されていないが、我が国が、「イスラム国ホラサン州(IS―K)」の(自爆)テロに関する兆候情報を入手したのが何時か。
「国際テロ情報収集ユニット」は、テロに関する兆候情報を入手していたのか、その情報は関連省庁で共有されたのか、などを検証すべきだと。
気になる報道として2つ付言されています。
一つは、カブールが陥落した8月15日、岡田隆在アフガン特命全権大使はアフガン国内にはいなかった(朝日新聞デジタル2021.8.28)こと。
現地で陣頭指揮し、かつ現地情報を東京に報告する責任者がいなかったことは邦人退避作戦にとつて大きな痛手となったと。
もう一つは、茂木敏充外務大臣が、8月15日~24日の間、中東諸国訪問で東京を不在にしていたこと。茂木外相は15日午前、当初の計画通りに10日間の中東歴訪へと出発した。首都カブールではその日、タリバンが大統領府を制圧。第2の都市カンダハルが制圧された8月13日の時点で、カブール陥落が間近いことが予想されていた。
我が国の在外邦人の輸送・保護措置に関する法的課題は3つあると横山氏。
1つ目は、武器使用制限の緩和。
自衛隊の場合は「武器使用の制限」が他国以上に厳しく、この「武器使用の制限」が部隊の任務遂行や隊員等の安全確保にとって障害となってきた。
第84条の3(在外邦人等の保護措置)及び84条の4(在外邦人等の輸送)については、「警察官職務執行法第7条」が準用され、相手に危害を与えるような武器の使用は、正当防衛と緊急避難の場合を除き認められていない。
まず、この縛りを外すべきであると。
84条の4(在外邦人等の輸送)も、第84条の3(在外邦人等の保護措置)と同じように「任務遂行のために武器使用」を認めるよう改正すべきとも。
2つ目は、命令の発令手続きの変更。
84条の4(在外邦人等の輸送)の手続きを、第84条の3(在外邦人等の保護措置)と同じように、内閣総理大臣の承認を得て、防衛大臣が命令を発令する様に変更すべき。
3つ目は、領域国の同意のない場合でも在外邦人の輸送及び保護措置を行うための法制度の整備。
「いかなる危機に際しても、国民の命を守り抜く」ための法制度の整備。
今回、脱出者が自力で空港まで来るのが原則とし、バスの手配が韓国(一旦国外に脱出した大使館員が戻り、米軍と協力し手配)に比べ、早々に大使館員が脱出した日本は手配が遅れたことにも関連しそう。
今回のアフガン退避作戦において、国家安全保障会議(National Security Council:NSC)と国家安全保障局(National Security Secretariat:NSS)はどのような役割を果たしたのであろうかと横山氏。
ここで活躍してこそのNSC。
是非反省を生かし、世界で最も自国民や現地協力者の批難がお粗末な国となった汚名はぬぐっていただける、自国民を自国で護れる国になっていただきたい。
バスでの空港移動が中止となり、取り残されたままの約500名の方々。
その後の状況情報が、稀です。
日本の国際信用にかかわる問題です。政府は継続して脱出手段を進めていただきたいし、メディアは追跡取材し、政府に促進を促していただきたい。
アフガン救出、これからだ 協力者保護は国益にも直結: 日本経済新聞
# 冒頭の画像は、アフガニスタンに派遣されたのと同じ航空自衛隊の「C-2」輸送機
この花の名前は、スイフヨウ
↓よろしかったら、お願いします。